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【完結】AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ
番外編

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『相性率94%の運命の人をビビらせたい』 ※真由スピンオフ

※本編未読でも読める番外編です。



小林 真由(こばやし まゆ)18歳。

アパレル店員を目指す女子高生。


真由は今のこの世の中のA.I.S(アイス)に依存した、恋愛模様が素直に受け入れられなかった。


待ち合わせのショッピングモールのフードコートへ急ぐ真由。週末の昼時は子連れで賑わっていた。履きなれない厚底の編みブーツが歩きにくく、約束の時間まで5分もない。


先に待ってるつもりだったのに遅れを取ってしまった。

ブブッと震わせて、チャットの通知を知らせるスマホ。



(あきら)ーマックの前にいるー



「…え、うそでしょ…!」



フードコートに踏み入れた真由は自分の目を疑った。


店前の椅子にどかっと足を広げて座っていたのが、ビジュアル系バンドのジャケット撮影コスプレのような真っ赤な髪の男だった。



***



少し前まで、女性の社会進出で晩婚化が進み、少子化と高齢化が進んでいた。そのため、社会に出てからどう異性と出会って恋愛するかが問題視されていた。


そこで開発されたA.I.S(アイス)の公的サービスが運用されてから、数百年の月日を経た。

全体の結婚に至ったカップルのほとんどがA.I.S(アイス)によってマッチングされていた。

サービス利用水準は国民の8割を越えていた。


ただ、民間のマッチングアプリや婚活サイトはもちろんのこと、合コンやお見合いなどで相手を見つけていく自然恋愛を楽しむ人々も多々いる。


真由は人工知能なんかに、人生のパートナーを決められるのは嫌だった。


親友の萌恵が、夢見がちで素直で運命の出会いを求めているのを見てきたため、気持ちはわかる。

…ただ親が勧める理由の『みんな使っているんだから』『婚期を逃すぞ』という他人任せの考えに不快感を募らせていた。


ー近藤あきら 20歳 相性率94%ー


半ば無理やり登録させられたA.I.S(アイス)の鑑定結果に、親は浮き足立っていた。

相性率90%を上回るマッチングカップルは全体を見てもとても珍しかったからだ。


会うだけ会ってみろという母親に急かされつつ、真由の中にふつふつと湧いてきたのはA.I.S(アイス)への反発心だった。


…趣味と合わない服装で、初対面ぶち壊してやる!!


そして、武装したのはバイト先のアパレル店の向かいに構えたロリータファッションのお店だった。ちょうどセール品でゴスロリワンピースが在庫処分で安くなっていたため、真由は即決した。


せっせとSNS動画でゴスロリメイクをひたすら見て研究しつつ、マッチング相手と適当にチャットをこなす日々。

…不思議と相手とチャットをする分には不快感はなかった。


そもそも真由は女子高校に通っており、男性経験もない。アパレル店員になりたい真由にとって自由恋愛の場も限られる。


本当に相手を見つけたいのならば、こんなことをしなくても民間のマッチングアプリを使えばいいのに、そこまでのやる気はなかったのだ。

…真由はそこまで愛に飢えていないと思いたかった。


A.I.S(アイス)に反発しながらも、自由恋愛をする自信や意欲はそこまで無い。

中途半端な自分に苛立ちすら覚えていた。


だからこそ、この初デートはA.I.S(アイス)への挑戦状だった。



***



あきらと真由は目が会った瞬間、相手の凝った服装を見て同じ想いを抱いていた。


ーわざとこんな服を着てきたんだー


A.I.S(アイス)によってマッチングされた2人は自分の好みが相手のタイプに近いという俗説から、自分の好きを突き詰めた服装で第一印象を良くしようと考える人間が多い。


それに自分の好きなもので相手に喜んで貰えるなら、オシャレと楽しめる。


そんな前向きな俗説を、この2人は相手を試すための手段として使っていた。



「……」

「…おい、嘘だろ」



しかしお互いになんとも言えない表情で見つめ合う。


真由の服装は真っ黒のフリフリ、ゴスロリワンピース。同色のリボンが盛り盛りついたヘッドドレス。地雷メイクバッチリで、萌恵が作った黒基調のゴテゴテパーツネイルチップをつけていた。


対して、あきらは真っ赤な長髪に耳に数えられないほどのピアスをつけ、口ピアスに顔色悪そうなフェイスメイク。服はスカートのようなズボンのような服で、ジャラジャラとネックレスやブレスレットを身につけていた。


…ゴスロリ娘とビジュアル系男子のマルチタッグだ。


フードコートにいた人たちは遠巻きに2人を視界に入れる。


視線が痛かった。



「…小林さんだよな。場所、変えよう」

「…そうね」



ゆっくり頷く真由をみて、立ち上がったあきらはスカートをうっとおしそうに翻してサッと歩き出す。


あとを追う真由だったが、なれない厚底ブーツに苦戦する。…頭の中はパニック状態だった。


ドン引くA.I.S(アイス)の識別者を鼻で笑って帰るつもりだったのに…。


あきらが真由が着いてこないのに気づき、そっと手を差し出す。



「凄いな厚底。よく見つけたな」

「…これが一番安かったの。そっちこそ口ピアス痛そう」

「これは偽物。ほら取れるよ」



カフスのようなものを引っ掛けていただけだったあきらが、そっと取ってみせる。その指にもたくさんの指輪がつけられていた。


見れば見るほど、あきらのビジュアル系スタイルは凝りに凝っていた。ファッションだけは負けたくなかったため、少しだけ悔しく思う真由。


人の通りの少ない通路の前のベンチに、腰を下ろす2人。

真由がそっと口を開いた。



「確認するけど、その赤い髪とか服装って普段着?じゃない、わよね?」

「…当たり前だろ。そっちこそ凄いフリフリじゃん」



しばし、二人の間に流れる重い気まずい空気。


ちらっと目が合うと、どちらともなく吹き出した。



「…っふふ!」「ははっ!なんだよ、これ」



初対面の異性と会って、呆然と立ち尽くしたり、腹を抱えて笑うなんてことが、こんな短時間で起こることがあるのか。


真由とあきらは、似たもの同士すぎるお互いの行いに、笑うことしか出来なかった。


目に浮かぶ涙を拭う真由。

笑いすぎてお腹をさするあきら。



「あー、腹いてぇ。友達になんて言おう」

「…友達?」

「9割越えの識別者の通知が来た時に、友達といたんだ。俺、美容師の専門通ってて、この服とか借りもんなんだよね」



髪の毛は元々ブリーチの練習で脱色しており、折角だからと真っ赤に染めてもらったと話す、あきら。

真由は真っ赤な髪が地毛だと聞いて驚くと同時に口を開く。



「ずるい…!ほぼプロの卵なんて、本格的にやりすぎ!」

「ハハッずるいってなんだよ!

…ちょ、今なんでも笑えるから、たんま!」



ひーひーとおなか抱えて笑うあきらの顔が、厳ついピアスがじゃらじゃらついているのに反して、子どもっぽく見えた。


…確か20歳と通知にはあったはず。



「…20歳ってことは2つ上?」

「俺、一年は大学行ってたけど、中退して専門入ったんだ。だから今年二年生の20歳。今年21だから、3歳差だな」

「…進路を途中で変えたの?」



真由の問いかけに、あっけらかんとした態度で頷くあきら。



「うん。親の意向もあったし、大学は出とけって言われてたんだ。…漠然と興味はあったけど美容師ってそこまで稼げる職種じゃないから二の足踏んでたのはある」

「大学行ってみて気が変わることがあったの?」

「…遊んでるやつのが多かったんだよな。

大学デビューじゃないけど。飲みサーみたいなのにノリで入ったらまじで自由奔放なやつが多くて」



真由は丁度進路を決める第一歩の時期にいた。

アパレルも接客業で、バリキャリを狙うのは難しいだろうとたまに不安になる気持ちはよくわかった。



「あ、そんな顔するなよ。一年遊んでて中退したんじゃないぞ。

自由奔放なやつも、実は裏で努力してるんだよ。学費自分で稼いでから来たやつとか、一年で単位取りまくって留学したいやつとか」

「…大学生って、遊んでるかバイトしてるイメージがあったけど」

「ははっ!俺も。

…何となく入学して何となく単位とって過ごしてるやつもそりゃいるだろうけど。努力して夢に向かってるやつってかっこいんだよな」



自分も一度きりの人生を精一杯努力して、夢を叶えたくなった。


そう口にした、あきらの真剣な目を見て、目が離せなくなる真由。



「…ちょっと黙るなよ。なんか語っちまって恥ずかしいだろ」

「私、ただアパレル店員になりたいってことしか考えてなかった…」



自分の夢は、ファッションが好きで、好きなブランドや流行を追って、お客さんにもオシャレの楽しさを伝えたい。

小さい頃、初めて自分の服をお小遣いで買いに行った時に親切にしてくれた店員の接客が、まるで自分に魔法をかけてくれたような気持ちになった真由。


いつか今度は自分が、誰かに魔法をかけたい。


そんな幼心から進路を決めていた。


でも実際にバイトをしてみたら、経営という利益重視の販売だった。現実では、売上を気にしてノルマを達成するため努力する日々が来るのだろうと薄々気づいていた。


…もし、ずっと希望してた職種が合わなかったらどうしよう。


A.I.S(アイス)だって、9割超えていても上手くいかなかったら?


真由が感じていたモヤモヤとしていたA.I.S(アイス)への反発心は、失敗を恐れた恐怖心から来るものだったかもしれない。



「高3なったばっかだろ?もう将来なりたいものが決まってるなんてすげぇじゃん」

「…でも、やってみて合わないかもしれないじゃない」

「そんなの皆そうだろ。だめだったら新しいこと探そうぜ」



真由は軽いのか、行動力があるのか分からないことを言うあきらに、つい口元を緩めて笑ってしまう。



「適当なこと、言わないでよ。

ふふ、でも大学変えてる人に言われたら説得力ある」

「…お、おう。そうだろ」



あきらは、真由のその笑顔が可愛らしくて、ズキュンと胸を射抜かれていた。



「ところで。

私はあんたに舐められたくなくて、ドン引きさせたくてこのカッコできたわけなんだけど」

「あんたはやめろ。あきらでいいよ」

「あきらはどうして武装してきたの?」



武装といわれて、戦う気だったのかと少し引くあきら。


あきらがA.I.S(アイス)に登録したのは18歳の誕生日だったが、70%ばかりだったし受験や自分の将来のことでいっぱいいっぱいだった。


二年に進学して友達とひたすらカットやパーマの練習をした時に94%の真由の通知がきたのだ。



「進学で一回失敗つーか、遠回りしたけど結果これで良かったと思えたんだ。だから、恋愛でもこの人って決めるのってどうかなって思っちまって。

…小林さんみたいな攻撃的な意味はなかったけど、ちょっと凝りすぎたせいでやりすぎたな」

「私も真由でいい。

…そっか遠回りか。私が逃げださなくてよかったわね」



違ぇねぇ、とまたツボに入ったのかクックッと喉を鳴らして笑うあきら。


真由は、どこか憎めない目の前の男に、自分と似ている点と全く違う部分を感じていた。


…こんな出会いも、悪くないのかもしれない。



「よし、行くわよ」

「え?わりぃ、聞いてなかった。どこに行くって?」

「プリクラ撮りましょ!人生の汚点を残すのよ!」

「はぁ!?絶対嫌だ…!」



慌てるあきらの腕を引っ掴んで、真由はゲームセンターへと向かった。


…2人の恋愛模様はここから始まる。




お読み頂きありがとうこざいます!


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