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【完結】AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ
最終章 全て重なれ深い愛

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1「他の男に、取られちゃうかもしれないですよ」

ブクマ、リアクションありがとうございます。


病は気からとはよく言ったもので、萌恵は夜に発熱した。次の日の朝には熱は下がったが、声はかすれて出しにくく、頭はズーンと重たかった。



「知恵熱みたいなものかもね

…冬休みだし、ゆっくり休みましょ」

「…おばあちゃんち、行きたかったなぁ」

「またゆっくり帰省すればいいわよ」



加湿器がシュンシュンと音を立てている萌恵の自室で休んでいると、母が様子を見に来てくれた。


年末は毎年、神奈川県の母の実家に帰省しているが、萌恵の受験を無事終わったし、少しだけ顔を出そうと話していた白川家。


今年の年末年始は家でのんびりして終わりそうだった。



「…二人で行ってきてもいいよ?」

「大丈夫よ、ちゃんと元気になったらテレビ電話でもしましょ」

「うん…」



部屋から出て行く母をじっと見送って、ふとスマホを見つめる萌恵。

…辛くて全然チャットも開けていなかった。


そっとA.I.S(アイス)のチャットアプリを開くと、いくつか孝之から心配のチャットが来ていた。



(萌恵)ー おはようございます

   チャットできなくてすみません。

    風邪を引いてしまって、寝込んでました…。

    今はもう大丈夫です! ー



…少し嘘だけど、全部が嘘では無い。

まさか、塞ぎ込んで泣いてましたなんて本人に言えるはずもなく、えいと送信ボタンを押す萌恵。



「…今度、ゆっくり話が…」



したい、と続きを打とうとして、ピタッと手を止める萌恵。


話といってもどこからどう切り出せばいいんだろう。


父との約束は気にしなくていい、と萌恵から言うべきなのか。

そうなったら、萌恵は孝之と肉体的な関係に…?


ヴィラでの孝之の逞しい身体と水着姿を思い出し、ボンッと赤面してぶんぶんと頭を振る萌恵。

こんなんじゃまた熱が上がってきてしまう。必死で妄想をかき消す。


…そんな自分の心の準備の出来ていない現状にハッとする。


もしかしたら自分がこんな有様だから、孝之は待ってくれているのかもしれない。そもそも、こんなお子ちゃまにそんな()が起きないのかも。


目指していた“色っぽいお姉さん”像が見た目とか振る舞いの問題ではなかったことに、萌恵は呆然としていた。



「…私に足りないのって経験…?」



萌恵一人では到底努力も何も出来ない現実に、ガックリと項垂れるしかなかった。




***




孝之はクリスマスディナーから二日経って、やっと萌恵からチャットの返信が来たことにひとまず安堵していた。


今日こそ返事がなかったら家に様子を行こうと思っていた。


最後の年越し前の、どうしても外せない仕事がなければもっと早くマンションまで行っていたくらいだった。


…でも会って何を伝えればいいんだろう。


孝之はディナーのあとどこか浮かない顔をしている萌恵に気づいていたが、自分にいっぱいいっぱいで無事に送り届けることしか出来なかった。



「……はぁ」

「…重たい溜息ですね、社長。幸せが逃げますよ」



軽口を叩く秘書の佐伯をジロリと睨みつけて黙らせる。


孝之は先日のディナーの日を酷く後悔していた。



『私…!一人の男性として、孝之さんが好きです…!』



萌恵の真っ直ぐでピュアな自分への想いが、痛いほど胸に刺さる。心から嬉しくて、今でも意識していなければ口元が緩みそうだった。


ただ、あの時は自分の欲望を必死で押し殺して湧き上がる感情に蓋をする孝之に、追い打ちをかけるようなものだった。


男性経験のない彼女に、自分が過去に遊んできた女性達のようにその場の欲を解消するだけの行為なんて、絶対にしたくなかった。


…それでも強引に事を進めれば、孝之が求めさえすれば萌恵は戸惑いながらも受け入れてくれたかもしれない。


なんなら抵抗する間も与えず、あの手この手で自分に夢中にしてしまえばいい。そんな感情すら湧いていた。


ーーこんな想いは、孝之が萌恵に与えたい愛じゃない。


押さえ込んでいうことを聞かせてしまおうという支配的な考えが頭を過ぎった自分に、恐怖すら抱いていた。


過去に関わりを持ってきた女性たちとも、きちんと向き合って恋愛をしてきたつもりだった。

…自分の恋愛感情がこんなに重たいなんて、孝之はこの歳になって初めて思い知っていた。



あの時は本当に、“ありがとう”と返すだけで精一杯だった。

…萌恵に嫌われたくない。


ずっと何度も彼女の意志を尊重すると言っておいて、萌恵と過ごす時間で膨らんだ己の感情を制御するのに、優先したのは自分自身だった。



「…最悪だ」

「もしかして、彼女と上手くいってないんですか?

…大の大人が情けないですね。

うかうかしてたら、他の男に取られちゃうかもしれないですよ」

「お前と恋愛トークするつもりはない…」



自己嫌悪に暗くなる孝之に佐伯が、分かっているのかいないのか、やたら的確に胸にささることを言ってくる。


そんな秘書にうんざりした表情を取り繕えない孝之。


…そしてこの時、秘書の言ったことが現実になっているなんて孝之は思ってもいなかった。




***





浅見家の本家。

リビングでソファに深く座った孝之の母、貴子は難しい顔をして報告書を眺めていた。


40手前のいい歳した次男の恋愛事情に、ヤキモキしていた。


そこへ夫、浅見グループの会長である秀之(ひでゆき)が飲み物を持って現れる。



「また難しい顔をして。…君は孝之に甘いね」

「お父さん…!だって、孝之ったら…!」

「…区役所からの先触れが来たのか。全くあちらのプライバシーは欠片もないな」



浅見財閥という立場から忖度されるのはいつもの事だったが、確かに萌恵のプライバシーは考えられていない。なんなら萌恵に知らせないようにしますか、というお伺いにすら感じられた。



孝之は、昔から浅見財閥の次男として生まれたせいか、昔から兄の二番手として遠慮がちなところがあった。


両親は長男次男という肩書きで跡取りを決めるつもりはなかったが、兄の雅之がやたら器用で要領のいい男だった。

能力も上に立つ人間の心得も兼ね備えた優秀な兄の存在は、孝之にとって大きかったのは事実だった。


会社の社長の椅子も当たり前のように兄に譲った孝之。


恋愛面では、A.I.S(アイス)の識別結果でマッチング相手が誰もいないというのは、予想もしない出来事だったが、フラフラと手当たり次第に女性と遊んでは、真剣に相手を選ばなかった。


…というよりも選び選ばれる努力をしていないように、母親には見えた。


萌恵とは上手く付き合えているとそう聞いていたのに、萌恵と()()()の識別者が現れるなんて、また身を引いてしまうのではないか。


そんな風に心配していた。



「余計なことをしなくていい。彼女にも選ぶ権利はあるんだ」

「…それは、よく理解してます」

「大丈夫。孝之は、本当に逃したくない大事な人を、簡単に手放すような馬鹿な男じゃないさ」



秀之は貴子を安心させるように助言をしながら、もしこれで孝之が身を引くようなら、彼女にとってそこまでの男だろうと思っていた。


男には時にはなりふり構わず、相手の気持ちだの考えず、必死に手を伸ばさなければ手に入れられないものがある。


…そもそも遠慮したり、取り繕ったりしている時間は、二人にはないはずだった。




***




夕方。

マンションのリビングですっかり元気を取り戻した萌恵が、せっせと水分補給をしているとスマホが知らない電話番号からの通話を知らせている。



「萌恵ちゃん、それ市役所からかも。

その市街局番とあと二つがそうなの」

「え、なんだろう。…もしもし」



折り返すのも癪だし、慌てて通話ボタンを押す萌恵。



『もしもし、こちら文京区役所の恋愛識別システム管理課の佐藤です。白川萌恵さんのお電話で間違いないでしょうか』

「は、はい。そうです」

『ありがとうございます。

この度、白川様に新しくA.I.S(アイス)が識別者を導きだしマッチングされたことを、僭越ながらお電話でご連絡させて頂きました』



萌恵はえっ!と驚いてスマホを落としそうになった。




お読みいただきありがとうございます。


一波乱、あるかも。


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よろしくお願いします。

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