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【完結】AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ
第4章 言葉に出来ない恋心

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3 「本気になったら…すぐに“女”なるぞ」

ブクマ、リアクションありがとうございます。


10月半ば。

孝之は、浅見グループの周年記念祝いのパーティに出席していた。


自社のトップや重鎮たちがひしめき、いらない親戚たちからのA.I.S(アイス)の識別結果のからかいなど受けながら、前より気にせずスルーしていた。



「あら、孝之さん。あの週刊誌から数ヶ月経ちますけど、ご結婚はまだですの?」

「まだ相手は高校生って話だろう?…流石になぁ」

「浅見財閥の子息といえば、断るような女の子はいないでしょう?」



適当に相槌をうって、顔に薄ら笑顔を貼り付けたまま、言質は取らせず曖昧に躱す。


もうお開きも近いし、明日の仕事も早い。帰ってしまおうかと会場から出ると、兄の雅之(まさゆき)がお手洗いから出てくるところだった。



「なんだ、孝之もう帰るのか?」

「もう義理は果たした。構わないだろ」

「なら、今日の主役にだけ声をかけてってくれ」



浅見グループの後継者である社長の浅見雅之は、孝之の4つ上で、27歳の時にA.I.S(アイス)で出会った兄嫁の尚子(なおこ)と結婚し、すぐに子宝に恵まれ長女が産まれていた。


一向にA.I.S(アイス)で識別者が見つからなかった孝之は、兄がさっさと結婚して家庭を持ちトントン拍子に子ども、長男次男とポンポン作ってくれて助かっていた。


両親からの早く結婚しろという圧から逃げる口実になったため、婚期が遅れた原因の一つと言っても過言では無い。

今となっては、良かったのか悪かったのかは分からない。


今日の主役というが、メインは恒例の会社の祝いのはず。

首を傾げる孝之に、ニコニコと顔を向けたのは女子トイレだった。



「あれ。…孝之叔父さん?お久しぶりです」



コツコツとヒールの音を立てて、中から出てきたのは浅見菜月(なつき)

今年中学2年生になる、雅之の長女で孝之の姪っ子だった。


ドレスアップされた姪は、スラッと姿勢よく、しっかり化粧と茶色に染められた髪をまとめあげ、歩き方も様になっていて、目に見えて垢抜けていた。


孝之の記憶にある姪の記憶は、ノンスリーブに短パン姿で麦わら帽子で、虫取り網と虫カゴを担いで森を走り回る小学生の時の姿が鮮明に残っていて、ギャップにパチクリと瞬きする。



「どうだ!尚子に似て、美人に育ったろ?

今日はパーティデビューなんだ」

「…いや、本当に驚いた。菜月ちゃん、綺麗になったね」

「ありがとうございます、孝之叔父さん。

…パパはウザイからそういうのやめて」



孝之にはきちんと挨拶した上で、得意気に娘に肩を抱こうとした父親の手を、ペシッと振り払う姪っ子。


ペコリと頭を下げて会場に向かう菜月の姿に、雅之はちぇ、と口を尖らせる。



「…中身も随分大人びたんだな」

「そーなんだよな。…思春期って難しいわ」

「今年いくつになるんだっけ」

「14。去年中学の入学祝いくれたじゃんか。

…ま、親戚の子なんて、あっという間に大きくなるな」



14歳。萌恵と4つしか変わらないのかと思案する孝之。


雅之が孝之の肩に腕を置いて、のしかかる。



「なー、孝之。お前ってのんびり構えてるけどさ、女の子って本気になったら…すぐに“女”なるぞ」

「…A.I.S(アイス)の識別者の話なら、こんなところで話す気はないよ」

「別に俺は、相手の女の子とお前さえ良ければ、年齢差とかどうこういうつもりはねぇよ」



父と母も、独り身で一生を終えるよりは段違いだと歓迎しているし、と呟く。



「浅見家としては、お前たちが上手くいくことを願ってるんだ。いざ結婚ってなったときに煩い親戚連中は、俺に任せときな」

「…あぁ」



続けてパパー!とバタバタ走ってきた下の二人の息子達は、姉と見比べると正反対なほどその辺でよく見る小学生だった。


お前らちゃんと手洗ったらタオルで拭けよ!なんて今度は“父親”の顔をする頼れる兄の姿に、ふっと表情を緩めながらその場を後にした。




***




2週間後の夜23時前。

久しぶりに帰宅後、萌恵と時間が合った孝之。

自室のベッドの上で寝る前の萌恵と通話を楽しんでいた。


真由のA.I.S(アイス)の識別結果の相手の話を、ニコニコと明るく話す萌恵に、表情を緩める孝之。



「ビジュアル系でピアスに赤い髪か。

真由さん、近付くの躊躇したんじゃないかな」

『ピアス片耳で七個も空いてるらしいですよ!音がなりそう』

「…凄いな。萌恵はピアスは開けたいとか思ってる?」



A.I.S(アイス)の奇跡的な相性の良さにおどろく孝之。自分達は100%という驚異的な確率なため、少しだけ話を逸らそうとする。



『今はたまに身だしなみ検査があって、めんどくさいけど、いつかは開けようかなって思ってます』

「身だしなみか。今は校則も緩くなってると思ってたけど」

『義務教育は緩いですよね。小学生も中学生も髪染めたりしてるかな?あ、私も毛先ブリーチした時ありましたよ』



酷く毛先が荒れてボロボロになって、描いていたサラサラヘアーにならなかった萌恵は、それから髪を明るくしたいとは思わなくなっていた。


孝之は茶髪に染めていた姪っ子を思い出して、まだ校則が緩いから遊んでいるのかと思い当たって納得する。



「そういえば、俺もこの前話した、虫取りをした姪っ子たちに久しぶりに会ったよ」

『あぁ!例の貸別荘で旅行をした…元気にされてましたか?』

「…うん。もう14歳って言われて、大人びてて驚いたよ」

『……』

「ふふっ…親戚の子ってあっという間に成長するんだね」



この前までクワガター!と男勝りだった姪っ子を思い浮かべる。

見た目は女性らしさを身につけたのに父親である兄に当たりの強い言動をしていた現在とのギャップに、つい笑いが漏れる孝之。


いつの間にか萌恵の返事がなくて、あれ、と怪訝そうにする。



「萌恵…?大丈夫?眠いかな」

『あ、いや!そ、そうですね…。

もう23時だし、そろそろ寝ます…』

「どうしたの?」

『…大丈夫です。孝之さんも一日お疲れ様です。

…おやすみなさい』

「…おやすみ」



通話の最後に、急に声のトーンが下がった萌恵に何か不味いことを言っただろうかと、首を傾げる孝之。


孝之は、姪っ子と萌恵の歳がいくら近くても同列の女性という括りで見ているつもりは全くなかった。


姪っ子は姪っ子でしかない。


…ただ、兄の『本気になったらあっという間に“女”になる』という言葉を、もう既に身に染みていた。


脳裏にチラつく萌恵の水着姿や、自身の手で萌恵の背中に触れた感触を今でも鮮明に思い出せた。



『私、孝之さんに名前を呼び捨てで呼んでもらいたいなって…』



一緒に思い出すのは、ピュアでひたむきな自分に向けられた純心な好意。


…孝之は萌恵が愛おしくてたまらなかった。


女性経験だけはそこそこあるし、女性の扱いは今更戸惑う事なんてないと思っていたのに、純心爛漫な萌恵にどう触れるべきか分からなかった。


手を握って笑いかけただけで、顔を真っ赤に染めていた萌恵を思い出して、20歳も年下の女の子に無自覚に煽られている事実に、深いため息をついた。



「…まいったな。あと一年半もあるのか」



『では、2年間。20歳を迎えるまで、私は萌恵さんに手を出しません。お約束します』



自分でかけた呪いに、孝之は我慢を強いられていた。




お読みいただきありがとうございます。




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