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AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ


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2 「彼女の未来を潰すようなことはしません」



「大変長らくお待たせしてしまいましたが、このような高確率は正直前代未聞の奇跡としかいいようがない、素晴らしい出会いになるかと。

つきましては庁舎にて場所を用意させて頂きましたので、是非とも一度相手の女性とお会いになられてはいかがでしょうか」




システム管理課課長は綺麗事ばかり並べ立てた。


孝之は正直、何かの間違いで悪い夢でも見ていると思いたかった。

A.I.S(アイス)が導き出せる最低確率は60%以上からで、それ以下はわざわざマッチングさせる意味がないと切り捨てられている。


61%でいいから該当者が1人でも見つからないのかと思っていた時期もあったが、まさか100%なんて数字が存在するなんて思わなかった。



「…この100%という数字は一体どういうことなのでしょうか」

「ですから、こちらとしても想定外といいますか!…その、前例にない高確率ということでお二人の相性がまさに運命の…」

「綺麗事は結構。そもそも18歳の女性なんて私と釣り合いが取れなさすぎるでしょう」



運命だの奇跡だの、そんな言葉で片付けられるほど頭が柔らかくない現実を見ている孝之は、到底すぐに笑顔ではいそうですか結婚します、なんて許諾できるものではなかった。

第一、一般的には相手の名前と相性率が出るだけで最初はチャットからのやり取りを勧められるはずなのに、最初から会うように促されているのは何か裏があると勘ぐってしまう。



「いえいえ、まだ浅見様は40手前であらせられますし、晩婚化が進んだ際には初婚の方もざらにおられました。本日文京区役所に来庁されました相手の女性も現在個室にて待機して頂いておりまして、…その、本日のご予定はいかがでしょうか」

「…彼女を待たせているのですか?」

「あーその実は…担当者が酷く興奮して騒ぎを起こしてしまいまして、他の一般の方の目もあり、致し方なく一度詳しい説明をと別室に…」

「早く言っていただきたい!」



時計を見ると夕方の16時過ぎた頃で役所の開いている時間もあと僅かだ。いつから来庁しているか定かではないが、軽く1時間程度は待たされているはずだ。


まだモジモジと言いたいことはっきり言わない課長に苛立ちを隠さない孝之はキッと睨みつけ、続きを促す。



「会って頂けますかな?

A.I.S(アイス)の識別相性率100%の夫婦なんてとてつもない運命!絶対に幸せになれること間違い無し!ならば、何も迷う必要はないでしょう!…お相手の女性は18歳と若いですし、お子様もすぐに産めるでしょう?」

「お言葉ですが。

私は成人して間もない女性を、親元から離し、自立する機会も与えず子を産ませて彼女の未来を潰すようなことは一切しません。」

「は、はぁ…。まあそう言わず!」



5年ほど前まで再三にわたって相手を探せと家が問い合わせていたせいか、若い女でラッキーだとでも言いたげな課長に孝之は怒り心頭だった。


孝之は自分の置かれた状況を察し、財閥の御曹司という立場に忖度されているのをひしひしと感じた。

それは相手の女性の権利や尊厳はひとつも尊重されていない。



「文京区役所でしたね。今すぐ向かいます」

「ご、ご一緒に!」

「結構です。…佐伯」



秘書の佐伯(さえき)に今すぐ車を回すように指示し、彼女が待つ役所へと向かう。


A.I.S(アイス)に見放されたと思っていた人生を諦めたあとに、またしても振り回されるなんてごめんだった。

しかし今回は相手がいる。彼女は法的には成人したが、きっとまだ社会に出ていない子どもなはず。大人のつまらない事情で若者の、一人の女性の人生を壊す訳には行かない。



「100%の運命の相手なんてロマンチックですね、社長」

「面白がるな、佐伯。何分で着ける?」

「20分程下さい。

あの課長ですが、部署異動してから区民のA.I.S(アイス)の使用率が低迷しているようで焦りがあるんでしょう。

国民の8割が使っているだけ充分だと思うんですけど」

「…そこに100%なんて意味の分からない確率の結果が出て、広告に使えるとここぞとばかりに結婚を勧めているのか」



孝之の秘書兼運転手を担当している佐伯がからかうような声で後部座席の機嫌の悪い上司に絡む。ジロリと睨まれても全く気にせず、区役所の状況を淡々と説明する。


物事には流行り廃りがあり、義務化されてないサービスは積極的に広告し、使用者を募集しなければ衰退してしまう。

有名芸能人がカップリングし結婚したり、A.I.S(アイス)新婚さん番組などが始まったりしていた時は、素晴らしい出会いを求めて登録者が増えるなどしていた。



「すみません、浅見孝之ですが」

「あ、はい!浅見様、お話承っております。22階応接室までお願いします。」



役所に着き、案内カウンターで名乗るだけで話が回っていたのかすぐに行き先を案内される。

エレベーターで付き添おうと駆け寄ってきた別の職員を手で止め、孝之は1人で22階へ向かった。




***




個室の会議室のようなところに誘導され、職員から説明を受けたあと放置されていた萌恵と母親は、時間が経つにつれて不安が増し、ソワソワとしていた。




お読みいただきありがとうございます。



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