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【完結】AIが選んだ相性率100%の運命の相手は20歳差でした  作者: 藤崎まみ
第3章 束の間の甘い夢

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4 「はぁ、まって。…ちょっと休憩」

ブクマ、リアクションありがとうございます。



闘志に燃えたプールバレー対決は、白熱するにつれて二人のリズムが揃っていき、ラリーが長く続けば続くだけ点を取るのが楽しくなる。


悔しがったり、喜んだり、コロコロ変わるお互いの表情をキャッキャッと笑い声を上げて楽しむ孝之と萌恵。


いつの間にか、何回ラリーを続けられるかゲームに変わってしまったが、しばらく遊んでいると二人とも息が切れるほど体を動かしていた。


萌恵は強烈な喉の乾きを覚えて、声をあげる。



「はぁ、まって。…ちょっと休憩」

「そうだね、はぁ。水分取ろうか」



冷蔵庫に入っていたスポーツドリンクのペットボトルを2本取り出して、日陰で水分補給をする。

真夏の強い日差しの中で、水の中とはいえ激しく運動すると喉が渇くなぁ、としばらく休憩する萌恵。


豊富なフルーツジュースなどのドリンクをいっその事全制覇したくなっていた萌恵だが、動いたあとは熱中症対策にもスポーツドリンクの方がいいかもしれない。


孝之が冷蔵庫から、少しだけカットフルーツをお皿に取ってきてサイドテーブルに置いた。



「ありがとうございます。

…フルーツジュースって濃厚だと逆に喉渇くなんて、知りませんでした」

「濃縮系は甘ったるくて喉が渇くね。フルーツはどうかな」

「…マスカット、とっても甘いです!」



プールサイドチェアに寝そべっている萌恵の口にフルーツを口に入れる孝之。


濡れた髪をかきあげながら、至近距離で逞しい筋肉のついた上半身を惜しげも無く披露している孝之。

ボトルに口をつけて煽る姿に、つい見蕩れて萌恵は顔がぽっと赤くなってしまう。


…孝之さんに、ラッシュガード着てくださいって言おうかな。いや、でもこんな時しか見る機会ないし、もうちょっとだけ。


チラチラと孝之の体を観察する萌恵だが、女子校に通っているため、間近で見る男性の体に全く免疫がない。

思い返せば二、三年は父親の体くらいしか見ていないことに気づく。


ふと、萌恵の顔が赤くなっているのに気づいた孝之は、ギョッとして熱中症かと顔を覗き込む。



「萌恵さん、大丈夫?氷持ってこようか?」

「…だっ!大丈夫じゃないですー!孝之さん!やっぱり上着着てください…!」

「え?…ハハッ!なんだ。気分が悪いかと思ったよ」



もっと近づいてきて手を伸ばしてきた孝之に、慌てて両手を突き出して体を起こし距離をとる萌恵。

真っ赤になった顔にペットボトルを当てて少しでも冷やそうとする。


あんなに激しく遊んだ後で心配していたが、そういえば男性経験ないと言っていたな、と背もたれにかけていたラッシュガードを羽織る孝之。



「こんなおじさんの体をみて、照れちゃうなんて…可愛いね」

「そんなにムキムキな腹筋とか見たことないですよ!何かやってますか?

…あと孝之さんは普通のオジサンじゃありません!」

「普通…?そうだな、暇な時はジムに行ってるよ。デスクワークだと筋肉が凝るんだよね」



どうりで肉体美が…!と目をキラキラさせる萌恵の気分が悪くなさそうなのを確認した孝之は、隣のプールサイドチェアに寝そべる。


初々しい反応に気を良くしながら、フルーツを口にする。



「本当だ、甘いね。…萌恵さんは中学校も女子校だったのかな?」

「いえ、共学でした。でも、父の仕事の転勤で地方にいってて、たまたまクラスの男女比率がおかしくて、男の子少なかったんですよね」

「…なるほどね」



それでそんなに男性に免疫がないのか、と納得する孝之。ちょっと呆れられたかと思った萌恵は、心外だとばかりに突っかかる。



「でも、たくさん友達できたし。一緒に人気のかっこいい先輩とか見つけて楽しんでたんですよ!…初恋だって!」

「初恋?」

「この子が私のA.I.S(アイス)の結果に出たらなーって。…それはまぁ、小学生でしたけど」

「はははっ!」



完全に恋愛経験が皆無とバラしているようなものなのだが、萌恵はまた孝之に自分の言動で笑われてしまって、むっと拗ねた顔をする。


孝之は萌恵の父が言っていた“夢見がちな娘”のピュアな部分を見つけて、これじゃ父親が心配に思う気持ちもわかるな、と愛おしく思っていた。



「…ところで萌恵さん」

「なんですか?」

「プールバレー対決はどうなったのかな」

「あ。つい楽しくなって決着つけてなかったですね」



まだやりますか?と体力を見せつける萌恵に、孝之はそっと首を振る。



「午後二時頃からもっと気温が上がるだろうし、本当に熱中症になっちゃうよ」

「…え!もうそんなに経っちゃったんですか?」

「ちょっと中でゆっくりしてもいいね」



貸切ヴィラには大きなテレビも備え付いていて、寛げそうなソファ、ダイニングにもたくさん椅子が置いてあった。



「温泉とサウナもあるし。…少し歩くけど海岸もあるよ」

「わ、温泉入りたいです!サウナはうーん。岩盤浴なら友達といったことがあるけど、あんまり得意じゃないかも…」

「じゃあ俺はもう少し休憩したらサウナを楽しむから、萌恵さんはゆっくり温泉に入っておいで」



二人で相談した結果、個別に施設を堪能して、夕方日が落ちたら海岸に行ってみようという話になった。




***




萌恵はたっぷり湯船に溜まった温泉に身を沈め、まったりと寛ぐ。

海とプールだから、スキンケアと化粧品は一通り持ってきてはいたが、さすがの高級施設。アメニティがとても充実していて要らないくらいだった。


濡れっぱなしのボサボサの髪もいい匂いのシャンプーとリンスでスッキリしたし、クレンジングで顔もさっぱりしていた。


何度か孝之とこうして二人きりで過ごしているが、正直一緒にいればいるほど孝之に惹かれていく自分がいる。

高級な施設に連れてきてくれるとか、豪華な食事が食べられるから、とかそんなことではなく。


ただ二人で過ごす時間がとても楽しくて、幸せに感じていた。

今日はあとどれだけ一緒にいられるかな、と終わりが近づいてくる時間を名残惜しく想う。


萌恵は目一杯楽しむぞ!ともう一度気合を入れて、化粧とヘアセットに真剣に向き合った。


エアコンの効いた部屋で、白いワンピースに身を包んだ萌恵が大きな画面で観たかった映画をチェックしていると、孝之がお風呂に行ってくるね、と声をかけて入っていった。


折角だから見ちゃえ、パインジュースを片手にサブスクの映画に夢中になる。有名なおとぎ話の実写化された映画だった。

ソファに座って、映画のシーンに見入っている萌恵に後ろから孝之が声をかける。



「…これって“美女と野獣”かな?」

「わぁ!びっくりした!…孝之さん、おかえりなさい。早いですね」

「ごめん、普通に歩いてきたから気づいてるかと思った」



頭をガシガシとタオルで拭きながらやってきたシンプルなシャツと7分丈のズボンというラフな格好の孝之が、そっと萌恵の隣に座る。



「萌恵さん、こういうおとぎ話すきそうだ」

「…すきですよ。孝之さんは推理物とか政治の話とかが好きそうですね、映画」

「受験が終わったら、趣味が合いそうなのを観に行こうか」



はい!と元気な返事をする萌恵。孝之が自分との未来の話をしてくれるのが本当に嬉しかった。


孝之は、萌恵が希望することはなんでも叶えてあげたかった。自分が彼女の時間を奪ってしまっているという事実に、少しでも要望があるなら聞きたかった。



「俺に何かして欲しいことは他にあるかな?」

「え?そんな…!充分叶えてもらってますよ」

「…なら、さっきの勝敗は引き分けにしようか。

お互い一つお願いを聞くのはどうかな?」



あんなに勝ちたがっていただろう?と萌恵に優しく問いかけると、じっとこちらを見ていた瞳をふよふよと泳がせてモジモジと下を向いてしまう。



「…あー、その。さっきは思い付きで…」

「何でもしてあげるのに」

「…じゃあ。私、孝之さんに名前を呼び捨てで呼んでもらいたいなって…」

「!」



意外なオネダリに、孝之は照れて顔を染める萌恵を見つめて固まってしまう。


あの浅見財閥の孝之が、何でもしてあげると甘く囁けば、どこか遊園地とか買い物とかそういうお出かけを強請られるとばかり思っていた孝之。

もちろん手を抜かずになんでも好きなものを買い与えるつもりだった。


…彼女が求めているのは“孝之”自身である。

そう言われたかのような気がして、鈍器で殴られたような衝撃すら感じていた。


萌恵はまたこんな子どもっぽいことを言って孝之に笑われてしまうと、ぎゅっと目を瞑って返事を待っていた。

なんなら笑い飛ばしてくれ、と思っているとそっと左手を握られる。


チャリ…と金属の音と手首に冷たくて硬い感触が伝わって、そっと目を開ける。



「俺の願いは、このプレゼントを受け取って欲しい」

「…孝之さん…」

「似合ってるよ、()()



萌恵の左手首に、イエローゴールドの2連チェーンで、細い純金のプレートと小さくも眩く輝くダイヤが埋め込まれたブレスレットがはめられていた。





お読みいただきありがとうございます。


サウナで孝之は心頭滅却してました(笑)


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