3 「もう1回やってください!」
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一杯のカクテルを楽しんだあと、萌恵が持ってきた大きな浮き輪やビーチボールを手に取り、早速プールを楽しむ。
「冷た〜い!でも気持ちー!」
「ははっ、はしゃぐとひっくり返るよ」
浮き輪に入って浮かびながら、はしゃいでクルクル回ったり足をばたつかせて水飛沫をあげる萌恵。
孝之はそんな萌恵を眩しく見ながら、自分もプールに入る。
水深は孝之の腰上までしかなく、泳ぐほどではないが照りつく太陽のジリジリする暑さに冷たい水温がちょうど良かった。
「ねぇ孝之さん。ここ、とっても高いんでしょ?
今日こそ自分の分だけでも出させてくださいね!」
「うーん。そうだね、1万円くらいかな」
「…絶対ウソ!」
勿論嘘だが、孝之は素知らぬ顔で誤魔化そうとする。
「会員制の貸別荘なんだ。会費を払ってオーナーになると、全国のこういう所が優先的に借りられるんだよ」
「わぁ、なんかすごく聞くだけで高そうです」
「はは。立場上、企業から個人的に強く出資を求められてね。…むしろ自分ひとりじゃこんな所来たって仕方ないから、使ってなかったよ」
萌恵さんが来たいって言わない方が無駄になったよ、と説明する。
めっちゃセレブ感のある会話だ、と呆気にとられる萌恵。
勿論、実際にこうして利用する際にちゃんと料金が取られる。
なんなら浅見財閥の名前を使って2日分貸し切り、食べ物や飲み物など部屋に用意させた特別仕様だったが、孝之はそんな素振りを一切見せない。
本来なら管理棟に自分で飲み物を取りに行ったり、BBQやキャンプ用の野菜などの食材も手に取って選べるシステムなのだが、前回萌恵が人目を気にしていたので、完全インクルーシブ仕様にしてみせた。
…ただ、水着という肌を露出した状態の萌恵と完全に2人きりのプライベート空間という状態に、孝之はうっかり、余計なことをしないように気を引き締めていた。
スラリと白い太ももや足を、惜しげもなく浮き輪に投げ出して、水面を手で掻きながらプカプカ近寄ってくる萌恵を見てサングラスの下で目を細める孝之。
「じゃあ孝之さんはあんまり旅行いかないんですか?」
「そうだね、ほとんど兄家族に宿泊権を譲ってるんだ。
…あぁ、でも5年くらい前、姪っ子と甥っ子が小学生の頃に山の別荘に行ったりしたよ」
「姪っ子さんと甥っ子さんが!」
4つ上兄夫婦の子どもたちは、長女、長男、次男の三人兄弟で、上二人は2学年差だが、末っ子がたしか今年小学生になったと言っていたはず。
孝之は上の子の年齢が思い出せなかった。
一緒に旅行に行ったときは、上の子達のブームが虫取りで早朝から叩き起されたのを思い出す孝之。
「下の子がまだ2歳になってないくらいだったから、夜泣きが凄くて兄夫婦は大変そうだったな。
…代わりに俺が、一緒に山にクワガタを取りに行ったんだ」
「孝之さんがクワガタ?ふふ、叔父さんしてますね」
「プールも一緒に入ったよ。…こうやって遊んであげたんだ」
ガシッと浮き輪を掴むと、反動を付けて上に乗った萌恵ごと振り回す。スイーッと力強く水面を滑って楽しかったのか、ケラケラとはしゃぐ萌恵。
「わー!孝之さん、もう1回やってください!」
「ははっ同じこと言ってるよ」
「キャー!!楽しー!」
キャッキャと暫くはしゃいでプールを堪能する2人だった。
***
バーベキューコンロの上には、グツグツと火の通った大きなホタテやイカ、大きな伊勢海老。食べやすくカットされたトウモロコシに輪切りになった玉ねぎがいい匂いを出す。
メインの大きなステーキ肉に網の焼き目を付けて焼き上げる孝之。
夏野菜たっぷりのラタトゥイユは容器ごと置いておけば温められるようで、海鮮の横に置いておく萌恵。
「BBQ、すごく豪華ですね!
…お昼からこんなに食べられるかな」
「余ったら夜にまた食べてもいいよ。足りなかったら追加で色々頼めるし」
「焼きそば、焼きおにぎり…、メニューが豊富なんですね」
プールから上がって、お腹が空いた2人は軽く水気を拭き取って、昼間から優雅にBBQを楽しんでいた。
ドリンクコーナーに、マンゴーやパインジュースなどのフルーツジュースを見つけた萌恵が喉を潤すと、とても濃厚で甘酸っぱくて夏らしかった。
「美味しー!すごい、幸せ」
「ほら、お肉も焼けたよ。食べようか」
「はい!いただきます!」
萌恵は一瞬、最近習ったばかりの料理マナー講座の内容を思い出す。
しかし、孝之がレストランの時とは違って、ワイルドにお肉を口に運んだのをみて、今日だけはリフレッシュ休暇にさせてもらおうと、自分らしくお肉や海鮮を口に運んだ。
「ホタテ甘ーい!ぷりぷり」
「萌恵さんはホタテが好きなのかな?」
「そうみたいです、でもお肉も好きです!」
「ふふ、沢山食べてね」
せっせと萌恵に料理を運ぶ孝之。
美味しそうに食べる様子を見るのがとても好きで、つい手を焼いてしまう。
もちろんそんな萌恵につられて孝之も食が進み、二人で殆ど焼いた分は食べ尽くし、海鮮が少し残ってはいたが萌恵がギブアップする。
…お腹ぽっこり出ていないかなと、胃の辺りをさする。
「もうお腹いっぱい、美味しすぎて水着なのに食べすぎちゃいました」
「じゃあ残りは夜ご飯に取っておこうか」
「はい!そういえば、まだ冷蔵庫にフルーツもありましたね」
まだ時間はあるからゆっくり食べよう、とプールの方をみると丁度正午を回ってすぐくらいだろうか。高くなった太陽の光がより強くなっていて、反射する光が直視出来ないほどだった。
「萌恵さん、またプールで遊ぶなら日焼け止め塗り直した方がいいと思う」
「あ、そうですね。朝全身に塗って来たけど取れちゃってるかも」
日焼け止めを手渡してくれた孝之にお礼を言って、日よけ付きのプールサイドチェアに座って手足に塗り込んでいく萌恵。
顔も念入りに塗り直して、首やうなじにも塗っていく。
朝は母親に塗ってもらった、届かない背中をどうしようか悩んでまぁいいかと思っていると、孝之が寄ってきて日焼け止めを手のひらに出す。
「孝之さんも塗り直し…?」
「背中塗ってあげるよ、後ろ向いて」
「ひぇ…い、いですよ」
「せっかく綺麗な肌をしてるのに焼けたら勿体ないよ」
寝転んで座れるタイプの椅子に座っていたので、促されるままうつ伏せになると、萌恵の髪の毛を掻き分けて大きな手で背中全体にクリームを塗りこまれる。
…恥ずかしい気持ちになったのは自分だけかと、孝之の親切に甘えてリラックスする萌恵。
温かい体温が心地よくてまるでマッサージのようで、ふぅとため息をついて体の力を抜く。
「…孝之さんも後で塗ってあげますね」
「…うん」
孝之は、本心から萌恵の肌が焼けてしまうのを防ぎたい気持ちで肌に触れたが、若い彼女の吸い付くようなみずみずしい肌にかなり動揺していた。
…薄い水着一枚しか隔たりのない、初々しい体。
ごくりと静かに唾を飲み込んで、隅々まで日焼け止めを塗り込んでいく。
20歳年下といえど、18歳の萌恵の体は豊満とまでは言わないが、少女と呼ぶには発育が良かった。
視界に飛び込んでくる白くて長い足の付け根に、思わず目がいきそうになって、必死に煩悩を描き消そうとした孝之の脳裏に現れたのはーーー母、貴子の顔だった。
『くれぐれも健全で!誠実な!お付き合いをしなさい』
孝之は高まっていた気持ちがスンッと急激に萎えていくのを感じた。
…危なかった。
ゆっくり手を離すと、萌恵は体を起こして近くにあったビーチボールを指さす。
「孝之さん、プールでバレーして対決しましょう!」
「…現役バレー部員がずるいんじゃないか?」
「もう引退してますよ!負けた方が勝った方のいうこと一つ聞く、とかどうですか?」
勝負には賞品がないと燃えない!とノリノリの萌恵に孝之はそっと笑みをこぼす。
「…いいね、それ。乗った」
「孝之さんは手足が長くてずるいので、範囲はこの辺で」
「ははっ!相当勝ちたい理由があるのかな?」
かなり孝之に不利なルールを後付けして、勝つ気満々で闘志に燃える萌恵に、孝之はラッシュガードを脱いでプールに入った。
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