4 「釣り合う大人の女性になりたい」
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次の日の日曜日。
カフェに行くつもりで約束していた親友の小林 真由を自宅に呼びつけた萌恵。
「内緒の話?…分かった」
「うん、どうしても話聞いて欲しくて…」
孝之や両親と相談して、信頼できる真由にだけは孝之のことを話していいことになっていた。
親にしか言えない恋人候補との恋愛は、若い萌恵に相談相手がいないことは辛いだろうとの配慮だった。
…ただし、香奈恵の居るリビングで話すならという条件付きで。
真由は小学生の頃からの幼馴染のような関係で、ストリート系ファッションを好み、オシャレ好きな真由は、芯が強いハキハキものを言うタイプの女の子だった。
父の転勤でしばらく会えていなかったが、高校でたまたま一緒になり、こうしてまた定期的に遊ぶようになっていた。
「…え!?あのネットニュースの100%カップル、萌絵だったの!?」
「そーなの。この前、区役所のめっちゃ豪華なやばい部屋に連れてかれてさー。いきなり当日本人とご対面だよ?」
「え、相手どんなやつだったの?萌恵、大丈夫なの!?」
「…うん、そのこと話したくて…実は」
真由は同年齢のA.I.Sの結果でそんなことがと関心があり、一通りネットニュースやSNSのコメントを目にした後だった。
どこの誰か知らない女の子に同情していたが、それがよく知る萌恵だと知って話が変わる。
萌恵は久しぶりに、孝之との出会いの日を思い出す。
『大人の都合でこんな所まで引っ張り出してすまない』
『君の意志を尊重する』
『あり派だよ』
孝之の言葉と素敵な笑顔がフラッシュバックする萌恵。
この人と結婚するかも、という直感を持つ人がいるというのをテレビのタレントや恋愛小説とかで見た事があった。
今ではあれがそうなのだと萌恵は感じていた。
「めちゃくちゃ、かっこよかった…!」
「…はぁ、そうなんだ。…やっぱり相性率100%なだけあるってことなのかな?」
「これからも定期的に連絡取って、会うことなったよ」
「萌恵がいいならいいんだけど…」
夢見がちな幼馴染の萌恵が、A.I.Sに未来の夫を導いてもらうんだ!と言っていたのを知っている真由。
キッチンでお菓子や飲み物を準備してくれている萌恵の母親の存在を気にしていた。
チラチラと様子を見ながら萌恵に小声で問いかける。
「ねぇ、お母さんと萌恵パパは、今回の結果のことどう思ってるの?」
「あぁ!大丈夫。孝之さんがしっかり挨拶してくれて…その親公認?みたいな」
「『たかゆきさん』!?なんか生々しい!」
照れ照れと恥ずかしそうに頬に手を当ててニヤつく萌恵に、それって周りから固められてるんじゃないの?と真由は心配になる。
というか、真由は元々A.I.Sの恋愛識別サービスについて否定的な意見を持っていた。
どうして人工知能なんかに、自分の人生のパートナーを決められなきゃいけないんだ、そんな思いが強かった。真由の両親は、周りに習って登録しろ、それで婚期逃しても責任とらないぞ、なんて言ってくるくらい人々の生活に浸透している。
…正直、真由は20歳差なんて突飛な結果に、素直に相手と恋できる萌恵が羨ましかった。
そんなにイケメンなのだろうかと『孝之さん』の想像を膨らませる。
「でもやっぱり年の差が大きすぎて…正直子どもにしか見てもらえてないのかも」
「…会ったりはしてるの?」
「ううん、まだ1回会っただけ。チャットは毎日してくれて、通話も何回かしてくれた。
…来週デートに誘われて、真由に何着ていけばいいか相談したくて」
やっぱり大人っぽい感じがいいかな、なんて惚気たっぷりの幸せそうな萌恵に真由は少し悪戯心が湧いていた。
萌恵がA.I.Sに翻弄されている気がして、否定的な気持ちの真由はつつきたくなってしまう。
「あのさー萌恵、協力はするけど格好だけ大人っぽくしたって仕方なくない?
相手は社会人で忙しい人なんでしょ?」
「え、うん。そりゃあもう」
「まさか休憩の度にチャットしまくったり、萌恵から長時間通話ねだってるとかじゃないわよね?」
「…えーっと、最初はしてたかも…。今は気をつけてる」
萌恵はじろりと見てくる真由にたじろぐ。
そういわれると孝之が両親への挨拶に来るまでの2週間は、猛烈に調子に乗っていた自分にいくつか身に覚えがある萌恵。
「そういうとこが子どもっぽいって思われるんじゃない?言うじゃん!恋愛は駆け引きだって」
「駆け引き!?
ど、どうしよう。デートしたいとか、夏は海に行きたいとか浮かれて色々喋っちゃった」
男女の恋愛で駆け引きが大事!
なんてのは見たことがある。例えばチャットの返事が来てもすぐ見ない、返さない。ちょっと焦らしてから返事をするといいとかである。
「あらま、そりゃ可愛い萌恵ちゃん」
「真由!私どうすればいい!?」
「私だって彼氏まだだもん。分かんないけど、恋愛だって人間関係と同じでしょ?
常に相手の気持ちに寄り添って、気遣い、想い合いでしょう!」
自分一人で考えていては堂々巡りの萌恵は、ネットニュースの記事のことなんか頭の隅に追いやって、大人っぽいデート服やネイルの色、髪型などを必死にググッていた。
年の差を埋めることが無理でも、見た目だけでも孝之に釣り合う大人の女性になりたかった。
もう既に自分のやってしまった言動は取り消せない。
初動で浮かれて失敗していることにショックで狼狽える萌恵。
真由はつい語ってしまって、萌恵の酷くショックを受けた顔に我に返って焦って謝る。
「ご、ごめんって萌恵。言いすぎたよ。
…ほら、100%の相性率なんでしょ?萌恵の好きな服で充分良い印象もってくれてるって!」
「第一印象、学校帰りだったから制服だったんだよ…。
…孝之さんに釣り合う大人の女性になりたい」
A.I.Sで高確率の相手といざ初めて会うとなると、相手によく思われようと、男女とも第一印象をよくしようとオシャレに励む。
相性がいいということは自分の好きなものは相手も好ましく思うということなので、好きを詰めた準備は男女とも、ときめく楽しい時間のはずだった。
制服は好みも何も無いわ、と真由がリビングのソファでうな垂れる萌恵の頭をポンポンと撫で慰める。
真由が孝之がそれで萌恵に好印象を持つようなら危ないのではと考えつつ、そもそも萌恵はオジ専ではないのを知っているため、頭の中で否定する。
萌恵は親友の真由が、遠慮なく意見を言ってくれるのはとても助かっていた。第三者の意見こそ、ストレートに心に響いたりするものだ。
萌恵はふと、真由の誕生日を思い出す。
「あれ?そういえば真由も誕生日過ぎてるよね?
結局A.I.Sの利用は見送るの?」
「…親に半分、無理やり連れていかれた」
「え!?」
ガサツな娘の婚期の遅れを心配している両親に『登録するだけでいい』とまで言われて真由は仕方なくA.I.Sに個人登録していた。
萌恵は真由を心配するような顔をしつつも、顔に結果が気になると書いてあった。真由は素直な萌恵に苦笑しながら、萌恵のも黙ってるから自分のも言わないでね、と教える。
「相性率94%って人がいる。あとは70ちょいくらいがチョロチョロいた」
「…90%以上って、全国的に見てもかなり少ないんじゃなかったっけ」
「100%の人に言われても、かすむのよねぇ」
「ちょっといじらないでよー!」
母、香奈恵はキャッキャッとはしゃぐ娘たちに、若いっていいなぁと思いながら耳をダンボにして聞き耳を立てていた。
萌恵の浮かれっぷりに、昔の自分の恋愛の失敗を重ねていた香奈恵は真由の鋭いツッコミに、もっと強く言ってやってくれとすら思って聞いていた。
「私あんまり夢見がちじゃないし、A.I.Sにこいつ!って言われるのなんかやっぱり違和感あってさ。
…いっそ初対面でゴスロリ全開の趣味斜め上で会おうと思ってる」
「あはははは!ちょっと真由、笑かさないでよー!」
「いや、ネタじゃなくて本気だってば!
第一印象が大事ってある意味そういうことでしょ?」
萌恵は高確率の人に会うのに、自分の好みとは違う服を身につけて待ち合わせるなんて、天邪鬼な行動は聞いたことがなかった。
でもそれはとても真由らしくて、萌恵は笑いすぎて出てきた涙を指で拭き取りながら、するりと受け入れる。
「真由のゴスロリめっちゃ似合うと思う。写真撮ってね」
「やだ。…でもそれっぽいネイルチップ作って欲しい」
「うん、いいよー。パーツあったかな?」
「…大人っぽい服かぁ」
A.I.Sへの考え方が真逆で性格も違う萌恵と真由だが、お互いの違いを尊重しあっていた。
萌恵は小さい時からネイルが好きで、ネイルチップを作っては学校のない日に付けて楽しんでいた。
真由はアパレル系でアルバイトをしているので、萌恵っぽくて大人びた服を想像する。
ちょっと部屋見てくると、席を立つ萌恵。
そこへ母の香奈恵がお菓子と紅茶を持って現れる。
「真由ちゃん、いつも萌恵と仲良くしてくれありがとうね。私も見ててヒヤヒヤしちゃって、真由ちゃんって大人ねぇ」
「いいえ、こちらこそ。萌恵といると飽きないし」
「…きっとこれから萌恵から相談とかされると思うんだけど、何か困ってたら力になってあげてくれる?」
真由は香奈恵が、心底萌恵と『孝之さん』の仲を心配しているのを感じた。
無理もない、20歳の年の差のある恋人…いや結婚相手候補なんて言われたら親からしたら悲劇でしかない。
自分も萌恵もこれから幸せな恋愛ができるんだろうか。
「…私は話を聞くくらいしかできないですけど」
「ありがとう、真由ちゃん。たまにガス抜きさせてやってくれるだけで本当に助かるわ」
「お菓子、いただきます」
「あったー!やっぱ黒ネイルだよね」
ネイル用品を詰めたワゴンをコロコロさせながら戻ってきた萌恵に、香奈恵が声を弾ませる。
「楽しそうでいいわねぇ。
おばちゃん、真由ちゃんの普通のロリータファッションも見てみたいわ」
「…いやぁ、ピンクのフリフリは成人したらきつい」
「というかお母さん、趣味ちょっとロリータ入ってるよね」
小物がフリル多いよね、なんて女子トークに華を咲かせる女三人だった。
お読みいただきありがとうございます。
次回、やっと初デート!
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