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睡眠術師  作者: 六方晶
夢の始まり
4/4

旅先の不祥事

 夢入りした時間は50分程だった。

 前準備も合わせてちょうど1時間ほど。

 山田さんとの約束は果たされた、僕は有言実行をする男なのだ。


 僕の施術方法は、夢の中の人物に入れ替わるというものだ。

 入れ替わるものはランダムなので、これまで女として登場したり、大木にだってなったこともある。


 他の施術方法として聞いたのは、入り込む人の原風景にそのまま入り込んで、原因を解決するという方法、その人のいちばん都合のいい救世主の姿になって解決するといった方法がある。

 ある人はマッサージだけで施術できる、なんてことも噂で聞いた。


 太一くんが起きたのを確認して、山田さんを呼んだ。

 お礼の言葉を沢山受け取って、代金を頂いてその場を離れた。

 代金は5000円、睡眠術師の母数で考えるとかなり格安でしていると思う。

 そもそも睡眠治療師もとい睡眠術師は、世界に500人程しかいない。

 同業者とはいままで2度会ったことがあるが、全て夢の中での話だ。


 帰りの車の中で今日の予定を立てる。

 元々、今日は午後に予定を入れていなかったので、ドライブでもしようか。

 よし決まった。

 即断即決が僕のモットーだ。


 その後近場のラーメン屋で豚骨ラーメンを食べて、今は県境をひとつ跨いだ山の上の展望デッキに来ている。

 ここは人も少なく、施設も広い。

 無駄にカフェなんて付いている。

 手元の時計を確認すると、時刻は15時あたりを指していた。

 歩いて窓ガラスの方に向かう。

 視界に映るのは大きな湖。

 その周りを田んぼや一軒家が囲んでいる。

 ここに訪れたことは何度かあるが、やはり素晴らしい眺めだなあと思う。

 時間に余裕もあるので、椅子に腰をおろして景色をじっと眺めていると、いつの間にか眠ってしまった。




 咄嗟に目に入ったものは、廃墟だった。

 見た目からして、20年ほどは放置されていそうだ。

 一本の道路の外れにある木々に囲まれたその廃墟は、奥に開けていて砂浜が見える。

 砂浜にいるのは、身なりは大人のようだが、どこか幼さを残した子供たち。

 次に感じたのは、漠然とした雰囲気。

 この感覚は何度も知っている。

 僕はどうやら夢に迷い込んでしまったようだ。




 夢に迷い込んでしまうことは今までも度々あった。

 僕が夢入りする条件は、同じ部屋の中で僕と同時に寝ている人が存在することで起きるというものだった。

 それに加えて、部屋の中にいる夢の規模が最も尊大な人に場に寝ている人が全て集まってしまうようだ。

 母によるとこの能力は特殊らしい。

 巻き込まれた人には迷惑でしかないのだが…


 だから僕は、なるべく外で寝ないように意識してきた。

 今だって常備薬として、家で伝統として引き継がれている特別な目を覚ます薬を持っているし…

 しかし、こんな日の照った良い天気の日には、僕も睡魔を抑えることができなかった。

 そもそも職業上、常に睡魔を傍に従えていないと仕事もできないしね。


 だが脱出方法は簡単だ。

 僕が幼い頃から夢入りしてしまうので、何となくコツは掴んでいる。



 夢の持ち主を殺せばいいのだ。



 さらにベターな方法はあるのかもしれないが、長年の経験上これが手っ取り早い。

 大体は死ぬ前に目が覚めてくれるので、こちらにも罪悪感はない。

 所詮夢だしね。




 改めて辺りを見回す。

 木々を避けて奥に伸びる細い道路、四方八方に高くそびえる針葉樹林、少し開けたところにある太陽に照らされた廃墟、その奥に続いている堤防も無いような砂浜、幼さを纏った大人たち。

 僕は他人の夢が好きだ。

 こんなに幻想的で、心落ち着く空間にいれるのなら、海外に行く必要もない。

 だが今回は、すぐ去ることにする。

 見たところ、この夢の規模はそれなりに大きいので、現実世界と同等、もしくはそれ以上の早さで時間が流れているだろう。

 早くしないと夜になってしまう。


 次に自分の姿を確認した。

 ちょうど自分の立っていた場所の反対側に、カーブミラーがあった。

 盟約で、僕は夢入りした場所から姿を確認できるようになっている。

 盟約自体は母と祖父がしたもので、僕に内容を話すと盟約が解けてしまうらしい。

 今回は白いワンピースを着た、背の高い女性だった。

 顔は整っていて、髪はロングストレート、サンダルを履いて、まさに田舎にいるお姉さん…!だと思った。

 思わず声を出す。


「あ、あー、

 よし、声も可愛い」


 嫁に迎えたい程である。

 息子も妻もいないけれど。


 僕は早速、砂浜の方にいる大人たちに向かって歩き出した。

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