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睡眠術師  作者: 六方晶
夢の始まり
3/4

睡眠治療の歴史と鷺の治療

 睡眠治療という仕事は、昔からずっとあった。


 そもそも夢というものは、大昔、それこそ大勢の人々が飢餓で死んでいた時代に、沢山ご飯が食べたいとか、快適な住居がほしいという願望を叶えるために、どこかの村の王様が催眠術師を利用して生み出したものだ、と祖父は言っていた。

 当時は発明されたばかりで、夢の力がとても強かったから、すぐ消えてしまう夢の記憶も、持続力が長かったそうだ。

 夢の力はどんどん伸びていき、睡眠に関する仕事を生業にする人々は睡眠術師と呼ばれた。

 その頃には睡眠を自由に操ることができるようになっていたようだ。


 だけれど、夢の力が強固になりすぎたあまり、夢殺や夢呪といったものが流行りだした。

 夢で死んだら本当に死んでしまったり、一生悪夢を見続けて生涯を終える人も大勢いた。


 そんな時代の中、随一の大国の姫様が夢殺により殺された。

 王はすごく怒って、兵を総動員して睡眠術師を手当り次第殺し始めた。

 夢を生業にしない催眠術師も大勢殺された。


 王が死んだ後も、その子孫は父の遺言を守るように殺戮を止めなかった。

 そんな中、催眠術師もとい睡眠術師だけで構成された国ができているという噂が流れ始めた。

 噂は本当だったようだ。

 睡眠術師の集団は、大国の王との和平交渉を望んだ。

 交渉の内容は、夢の持つ能力をできる限り滅するため、催眠術師の殺戮を止めるという内容だった。

 王ももはや遺言に意味を見いだせなかったのだろう。

 交渉は締結された。


 交渉にあたり、3人の睡眠術師が夢の能力消滅に動いた。

 3人は命を犠牲にして、夢の能力を10分の1以下にすることに成功した。

 使われた術式は難解で、この地球のどこかに埋まっているか、または月に設置されたなんて論文もある。

 だがこの3人は英雄として、死後100年ずっと称えられ続けたという。

 大国が何らかの力で消滅するまでは。

 3人の文献は発見されていないが、人伝に語り継がれているということだ。


 悪用する人もいるが、快適な睡眠を目指すために睡眠術師は残り続けた。

 力は超常的なもので、科学による証明はずっと先になるようだ。




─────────────────────────




 僕は気づくと学校の職員室にある個人デスクに座っていた。

 思わず鏡で自分を確認してみる。


「今回は男性かあ」


 僕は自分の姿を見て落胆した。

 いやなんというか、全体的に芸人っぽいコミカルさがある。

 なりきるとしたら多分ギャグ言う感じだなこりゃ。

 いけない、実在するかもしれない人に失礼だ。

 まずはこの人の周りを確認していこう。


 腕時計は24日の8:17を指している。

 職員室には、教頭、数人の先生、事務員がいた。

 適当に挨拶しながら歩き回る。

 巨大なホワイトボードにカレンダーが書いてある。


「24日はー、何もないな」


 今日の重要な行事が無いことを確認して、自分のデスクに戻る。

 デスクにもどると、4-3と書いた生徒名簿を発見した。

 どうやらこの先生は4年3組担当らしい。

 名簿を確認するとすぐ山田を見つけた。

 状況は大体把握した。


「さあて、悪夢から救いに行きますか」


 僕は学校地図を軽く確認して、歩き始めた。




 教室は騒がしかった。

 下ネタを言い合う男子、本を独り読んでいる少女、恋愛で盛り上がる女の子たち。

 クラスの無法地帯さに懐かしさを覚えながらも、二限までは先生として振舞った。


 山田には既に目をつけていた。

 僕の予想通り、ハブられているようだ。

 しかも筆箱を投げられたりとかなり厳しい。

 本人は泣きそうになりながら右往左往している。

 これはいじめではなかろうか。


 なぁに、大丈夫。

 こういうのは思春期の男子に多い。

 山田くんはかなりの心配性だなと推測する。

 思春期の不安定さがこのような悪夢を見せてしまっているのだろう。


「こら。

 山田くん嫌がってるでしょ。

 いじめはやったらダメだよ」


 かなりふざけた口調で言ってしまった。

 だが、いじめていた子たちは勝手に仲直りを始めた。

 そうそう、夢だからこんなもんだ。

 山田くんちょっと嬉し涙見せてる、かわいい。

 顔が整っているからやはり全部の仕草が似合うな、羨ましい。


「結局思い込みに過ぎないんだよ。

 起きよう、太一」


 そう言うと、世界は暗転した。

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