彼氏が私との結婚許可を求めて何度も挨拶に来たのに、くだらない理由で拒み続けて縁談を壊しておきながら、姉に子供が出来たとたん「おまえも早く結婚して、子供を作れ」とのたまうクソ親父!ぜひとも破滅の天罰を!
◆1
今現在、私、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢は二十九歳。
なんとしても、三十歳までには結婚したかった。
幸い、サイド・ダンド男爵令息とのお付き合いが、学園時代から続いていた。
彼、サイドが、私、メリーヌにプロポーズしてくれたのは、もう三年前になる。
それでも、いまだに婚約まで漕ぎ着けないでいた。
別に、彼が不誠実だったわけではない。
この三年間、サイド男爵令息は頑張ってくれた。
辺境の地にある私が住む家ーードメス城にまで何度も足を運び、私の両親に会いに来てくれた。
そして私との結婚を、申し込み続けてくれた。
さすがに厳寒の冬は避けるものの、それ以外の季節に、彼はすべて訪れた。
それなのに、お父様、バド・ドメス辺境伯が、彼と私との婚約を承諾してくださらないのだ。
我がパイス王国の貴族家では、当主の意向は絶対だ。
お父様、ドメス辺境伯の首を縦に振らせなければ、私は彼と結婚できない。
年に三回、計九回も、彼は私の家に訪れては、断られ続けた。
今日も、お父様への挨拶が空振りに終わり、彼は意気消沈して客室へと引っ込んだ。
私は応接室に居残って、お父様の意見を延々と聞かされる。
お父様は、彼、サイド男爵令息について、「顔が気に入らない」、「所作がどことなく軽い」「黒髪に黒い瞳というヤツは、信用ならん」などと難癖をつける。
ほんとうに、彼本人にはどうしようもない、些細なことに文句を付けているだけ。
極め付けは、出自の低さを問題視することだった。
お父様は金髪を掻き分け、偉そうに椅子の上でふんぞり返り、両脚を組む。
「そのサイドとかいう男、男爵家の出自であるばかりか、次男ゆえに、その男爵家の家督すら継げそうにないではないか。
おまえの姉マイアも、そんな男とおまえが結婚するのは反対だ、と言っていたぞ。
最低、子爵家の出でないと、我が辺境伯家と釣り合いが取れん」
我が王国において、辺境伯の爵位は、伯爵以上公爵以下といった位置付けになる。
身分下と結婚するにしても、伯爵家並みの格式が必要だと言うのだ。
私には二歳上の姉マイアがいるが、彼女はすでに伯爵家の当主と結婚している。
この屋敷から出てしまって、もう四年になる。
私は熱弁を振るった。
「だからこそ、私がサイド男爵令息と婚姻を結ぶことが、都合良いんじゃありませんか。
お姉様はライナス伯爵家に嫁がれました。
いまや、ライナス伯爵夫人となっています。
でも、妹の私は、いまでもドメス辺境伯家の娘です。
だから、私の婚姻相手が次代のドメス辺境伯家の当主となることができるのです。
我がドメス辺境伯家を残すためにも、彼、サイドに家督を継いでもらいましょうよ。
彼は次男ゆえに実家を継ぐことができないからこそ、我がドメス辺境伯家に婿入りしても良いって言ってくださっているんですよ。
それに、彼は剣術が巧みで、指揮能力も高いと、学園でも評判でした。
蛮族の侵攻に際しては、麾下の軍勢を率いるべき、我がドメス辺境伯家にとって、またとない人材です」
王都にある貴族専用の学園に通っていた頃、私、メリーヌには多くの友人がいた。
学生寮に住んでいたから交友関係は広く、しきりにお茶会を開いたり招かれたりした。
実際、私は、お父様譲りの金髪に碧色の瞳をしていて、お姉様ほどではないにしろ、それなりに美人系の顔をしていたので、数々の男性から言い寄られるほどモテてはいた。
だが、いざ婚姻の話となると、皆から忌避された。
私個人というよりも、実家のドメス辺境伯家の持つ特殊性が嫌われたのだ。
ドメス辺境伯領はパイス王国の北方辺境に位置付き、「蛮族」と称される未開の戦闘部族の生息地と隣接していた。
この八十年近くは平穏だが、かつては紛争が絶えなかった地である。
我がドメス家は文字通りの「辺境伯」で、有事の際に、真っ先に兵を率いて出撃する役割を期待される家柄だった。
都会生活に慣れた貴族令息たちが、私と縁付くのを避けたがるのは当然といえる。
そのうえ今では、姉が嫁いで家から出て行ったので、これから私と結婚する者は、辺境伯家の家督を継ぐことになることがほぼ確定していた。
そんな「負の遺産」を背負い込んでいるのが、私、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢なのだ。
ところが、そんな中でも、私と結婚してくれると言ってくれたのが彼、サイド・ダンド男爵令息だった。
彼とは、当時、生徒会の副会長だった先輩の紹介で知り合い、同じ生徒会の書記として学園行事を取り仕切った仲である。
初めての文化祭を終えて、花火を見ているときに告白された。
ただ一言、「好きだ」と。
でも、私は実家の特殊事情があるから、「付き合うのは難しいかも……」と曖昧な返事しかできなかった。
すると、サイド男爵令息はいきなり私を抱き締めて、甘やかな言葉を口にしてくれた。
「いろいろ難しいことがあるだろうけど、やっぱり君が好きだからーー寝ても覚めても、君の笑顔が忘れられないから……」
彼の身体から温かさが伝わった。
私は涙が出るほど嬉しかった。
お父様やお母様の愛情は、姉のマイアばかりに注がれがちだったので、ストレートに愛情をぶつけられると、思わず身体が震えてしまった。
それから二年間、私たちは清い交際を続けた。
そして、ついにプロポーズを受けるに至ったのだ。
そんな、愛する彼を、私は失うわけにはいかないーー。
それなのに、お父様ーードメス辺境伯は、頑固に首を横に振る。
私、メリーヌが、サイド男爵令息と婚約するのを許さない。
そして、九回目ともなると、ついに彼、サイド男爵令息の方が根負けしてしまった。
客室でうずくまる彼に、溜息混じりに言われてしまった。
「もう駄目だよ。これだけお願いしても拒絶される。
お父様のご機嫌も悪くなる一方なんだろ?」
私が頬を赤く腫らしているから、お父様から平手打ちされたことがバレている。
お父様はお姉様に手をあげたことはなかったが、私はしょっちゅう頬を打たれた。
「おまえは可愛げがなく、生意気だ」ということらしい。
お姉様も「もっと要領良く振る舞わなきゃ」と助言してくれたけど、やっぱり理不尽な扱いを受けると、納得できない思いがわだかまって頭の中がぐちゃぐちゃになってしまう。
私は彼の手を取って訴えた。
「お願い。お母様は承認してくださってるわ。
お父様だけが……」
サイドは黒い瞳を憂いに沈めながら、首を横に振る。
「君には言っていなかったけど、じつは君のお母様からも、僕はハッキリ断られたんだ。
『お父様をこれ以上、悲しませないで。
長女のマイアが伯爵家に嫁いで王都に出向いてから、一向に里帰りしない。
このまま妹のメリーヌまで出て行ったら、お父様も寂しくて仕方がないのよ』と。
でも、何度も僕は、君のお父様に言っていたよね?
『僕がこちらの家へ婿入りするのですから、メリーヌ嬢がこの家を離れることはありません』と。
だから、そのように君のお母様にも話したんだ。
そしたら、君のお父様と同じセリフを言われたよ。
『貴方、男爵家の次男のくせに、辺境伯に成りおおせようと言うの?
それは虫が良過ぎるわ』と。
まさに、ああ言えば、こう言うの典型だ。
つまり、君のご両親は揃って、君を手放すつもりがないんだよ」
「そんな……」
絶句する私を、サイド男爵令息は強く抱き締める。
「僕の力が足らずに、ごめん。
でも、今回も駄目だったら、キッパリ諦めると決めてたんだ。
今まで、付き合えて幸せだった。
ありがとう。
僕は身を退かせてもらうよ」
身体を離そうとするサイドを、私は手を握って、必死に引き戻す。
そして、頼んだ。
「今からお父様のところに行って、もう一度だけ、頼んでみて。
次こそは、お父様にもお母様にも反対させない。
貴方との結婚を反対されたら、私は実家を捨てるつもりよ。
貴方となら、何処へでもついていくわ」
でも、断られた。
「君のお父様を敵に回すような真似を、僕の家の者ができるはずないだろ?」
お父様、バド・ドメス辺境伯は国王陛下とも懇意で、王国きっての有力者だ。
国王陛下が国境視察と狩猟のために、四年に一度、私の実家である、ここドメス城に一週間、逗留する習わしになっているほどだ。
サイド男爵令息は、私の両肩を掴み、正面から見詰める。
彼の両目には涙があふれていた。
「それに、僕が男爵家の次男坊なのは知ってるだろ?
両親のみならず、兄夫婦とも同居中で、ただでさえ、肩身が狭い思いをしているんだ。
いずれ、僕は家を出て行かなければならない。
そんな僕が、君を家に迎え入れることなんかできないし、二人で駆け落ちしようにも行く宛も、生活する手段も持ち合わせていない。
いくら剣術が出来ても、戦争があるでもなし。
君の家のように、僕個人は騎士団を率いているわけでもない。
私兵も持ち合わせていない僕には、指揮能力なんてあっても、無用の長物なんだよ」
「……」
私、メリーヌは返す言葉もなく、肩を落とす。
「ごめん。君とはさよならだ」
彼は涙を拭うと、身を翻し、立ち去って行った。
こうして、彼、サイド男爵令息が、お父様の説得に失敗して、ドメス城を出てから、半月後ーー。
彼が、私の友人パーラ子爵令嬢とお見合いをして、婚約間近になっているという噂を聞いた。
その噂を耳にして、再度、私は涙に暮れた。
◆2
私、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢は、学園時代からお付き合いしていた彼氏、サイド・ダンド男爵令息との婚約を、お父様の反対によって、実現することができなかった。
お父様、バド・ドメス辺境伯は、長女マイアを嫁に出したために寂しく思い、私、メリーヌを家から出したくなかったから。
そして、私の元カレのように、辺境伯よりも爵位が低い者に、ドメス辺境伯家の家督を奪われたくない、と思っているから。
それなら、実の娘である私、メリーヌに家督を譲って、婿を迎えれば良いと思うけど、両親は揃って、女性には家督を譲りたくないらしい。
ーーというか、ここまで考えると、理由はどうあれ、私を誰とも結婚させたがっていないのではないか、とすら思われた。
このままでは、ほんとうに私、メリーヌは、実家で飼い殺しにされてしまう。
ただでさえ、お父様は横暴な振る舞いが多く、大勢の執事や侍女が傅いているにも関わらず、娘の私にまで奉仕を要求する。
「喉が渇いたから、水を持って来い」とか、「背中が痒いから、掻け」、「なんだ、そのつまらなそうな顔は。辺境伯家の令嬢らしく、微笑みを絶やすな」などと、とにかく注文が多い。
お母様は、花を愛でたり、身につけたブローチや指輪、ネックレスなどの装飾品を眺めてはいじくるばかり。
両親は長女マイアが居なくなって寂しいと言っているけど、お姉様は、こんな何もない辺境の地で、蛮族の侵攻に怯えながら、お父様の言いなりになる生活が嫌だから、結婚を機にドメス城から飛び出していったのだ。
一人残される私は、このままだと奴隷生活へと一直線だ。
なんとか、この家から抜け出さねばーーそう思っていたら、大きな変化が訪れた。
いきなり、お父様が今までの態度から一変した。
「おまえも早く結婚しろ。そして子供を産め」
と言い出したのだ。
きっかけは、お姉様の出産だった。
長女マイアに子供が生まれた。
玉のような男の子だそうだ。
「初孫の顔を見にきて」
とお姉様が、実家であるドメス辺境伯家に報せてきた。
今現在、長女マイアは、王都の貴族街にあるライナス伯爵家のお屋敷に住んでいる。
両親が初孫を見るためには、王都に出向かねばならない。
「ちっとも里帰りせずに、親の方を出向かせるとは、生意気な」
と、お父様はご立腹だった。
だがさすがに、出産直後の娘と生後すぐの赤ん坊に、長旅をさせるわけにもいかない。
王都から、辺境の地にあるドメス城までは、馬車で半月以上かかる距離があるのだ。
不貞腐れつつも、お父様は、私、メリーヌに留守番を命じ、お母様とともに、大勢の従者を引き連れ、六台もの馬車を走らせ、王都へと出立した。
王宮への出仕を除けば、両親が王都に出向いたのは、じつに三十年ぶりのことだった。
遠路はるばるやって来たお父様とお母様は、王都のライナス伯爵家で歓待を受けた。
「お父様、お母様、お久しぶり。会いたかったわ」
「ドメス辺境伯、遠路はるばる、ようこそおいでくださいました!」
長女マイアと、その夫ライナス伯爵は、両手を広げてドメス辺境伯夫妻を迎え入れる。
マイアは亜麻色の髪をなびかせ、碧色に瞳を輝かせる美人だ。
気難しいお父様バド・ドメス辺境伯も、娘マイアをハグしつつ、目を細めた。
やはり、マイアは可愛い。
しかも、初孫のフェローが想像以上に愛らしかった。
ゆりかごで寝ているのを小突くと、むずかる。
が、その仕草も可愛い。
ドメス辺境伯が無骨な指を伸ばすと、生まれたての孫が、小さな手で握り返してくる。
微笑みを浮かべる初孫は、天使のようだった。
お乳を欲しがってギャン泣きするさまも、愛おしい。
「やはり、初孫というのは可愛いものだな!」
バド・ドメス辺境伯は、満足げに腕を組む。
ドメス辺境伯夫妻は、お祖父様とお祖母様として、散々、孫を相手にした後、改めてライナス伯爵家の晩餐会に招かれた。
伯爵家としてのメンツもあるのだろう、食卓には肉や魚の載った大皿や、色とりどりの野菜サラダや果物が、所狭しと並べられていた。
辺境から引き連れてきた、二十名を超える従者たちも、連泊する予定の離れで、料理に舌鼓を打っていた。
盛大におもてなしを受けたバド・ドメス辺境伯は上機嫌になった。
義理の息子ライナス伯爵と杯を交わし、ほろ酔い気分となる。
「王都で酒を飲むのは、学生の頃以来だ。
うん、気分が良い。
しばらく逗留させてもらうぞ。
なに、心配は要らん。
たっぷり土産は持ってきたから、損はさせんぞ」
実際、引き連れてきた馬車二台分に、高価な魔物の毛皮や、煌びやかな武具、そのほか金銀などの貴金属や鉱石といった、価値ある財宝が積み込まれていた。
これら財宝が館に運び込まれたとき、ライナス伯爵は思わず歓声をあげたほどだった。
以来、一週間ほど、ドメス辺境伯夫妻は、王都を満喫した。
ドメス城がある辺境伯領は田舎で、街もなければ、店も市場もない。
だから、いくら金銀財宝があっても、使い道がなかった。
でも、王都は違う。
数多の店が立ち並び、夜になっても街灯が輝いている。
お父様、バド・ドメス辺境伯は羽目を外し、夜の店に入り浸った。
お母様は王都中央街の服飾店へと頻繁に足を運ぶ。宝飾店にも通い、お金を湯水のように使って、ネックレスやブローチを買いまくった。
ライナス伯爵邸で食事をいただく際、ドメス辺境伯は、孫をあやしながら切り出す。
「この館も、王都の街も気に入った。
孫も愛しいゆえ、これからは頻繁にお邪魔したく思うが、構わぬか?」
お祖父様からの提案に、長女夫妻も喜んだ。
「それが良いわ、お父様。
辺境のお城に籠っていたら、気分が悪くなる。
お母様も、たまにはパアッと発散しなきゃ」
「どうぞ、どうぞ。妻も、幼い息子も喜びます」
今回のように、たっぷりの土産を持参して辺境伯夫妻が来訪してくれたら、その度にお金を落としてくれそうだ。
ライナス伯爵家としては、お金が増えるのなら、お祖父様もお祖母様も大歓迎だ。
こうして、各人各様に欲得に釣られて、喜んでいた。
◇◇◇
私、メリーヌの両親、ドメス辺境伯夫妻は、姉夫婦宅で初孫をいじくり、王都の街に出向いては大いに羽を伸ばした。
その結果、お父様、バド・ドメス辺境伯は、辺境のお城に帰ってくるやいなや、留守番をしていた私、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢に対して、言い放った。
「これからは一年の大半を、マイアがいる王都のライナス伯爵邸で過ごすつもりだ。
その間、嫁き遅れのおまえは、家の留守番でもしておれ」
廊下を歩く間、お父様が方々に脱ぎ散らかしたボウタイや上着、靴下などを、侍女と一緒に拾い上げつつ、私、メリーヌは声をあげた。
「留守番ばかり、していられません。
これから先、私はどうなるのでしょう?
このドメス辺境伯家の行く末はーー」
このまま飼い殺しにされるのは御免だ。
当然とも言える娘の質問を、お父様は鼻であしらった。
「ドメス辺境伯家は十分に豊かだ。
俺も壮健だ。若い者にはまだまだ負けん。
要らぬ心配なぞせずに、おまえも早く結婚しろ。そして子供を産め」
あまりの言い草に、私は呆然として立ちすくんだ。
「そんな……今まで、私が結婚するのに散々、反対しておいて……」
お父様はフンと鼻息を荒くして、応接室のソファにどっかりと腰を下ろす。
「うるさい。状況が変わったのだ。
変化に対応できんようでは、辺境伯は務まらぬ。
蛮族の侵攻を食い止めるお役目だからな」
偉そうに言っているが、お父様が戦争の話をしても、それは口だけだ。
この八十年近く、蛮族の侵攻はない。
お父様自身、一度も戦場に立ったこともないくせに。
ドメス辺境伯家は、北方蛮族の侵攻に備えるために、国境騎士団を麾下に置いている。
したがって、総勢、二百名を超える騎士が、家族と共にドメス城近辺で生活している。
お父様とお母様が不在の折、私、メリーヌは、革製の防具を着込み、長年、当家に仕える家令タランに導かれながら、騎士団長ホエールをはじめとした、騎士団の主だった面々に改めてねぎらいの言葉をかけて回った。
ほかにも、経理を担当する執事や、領内の作物を管理、徴収する責任者である家令補佐などにも面通しした。
今まで、「男の仕事に口を出すな」というお父様の一言で、私は、ドメス辺境伯家で行われていることから遠ざけられ、籠の中の鳥のように扱われていた。
だから、留守を任されて知ることになった人々や物事に、新鮮な興味を感じていた。
それと同時に、お父様はこれから先、この領民のために何をなそうとしているのか、領地を発展させるつもりはないのか、様々な疑問が胸にもたげてきていた。
(蛮族に備えるとばかり口にしながら、軍備も領地経営も、家令や騎士団長に任せてばかりで、自分は何もやってないじゃないの。
それなのに、お父様はふんぞりかえって……)
口には出さなかったが、不満顔にはなっていたのだろう。
「なんだ、父親に向かって、その文句ありげな態度は」
と、目敏く、お父様が睨みつけてくる。
これを機に、留守を任された結果、気になったことを、私は質問した。
「ひとつ、お尋ねしたいことが」
「なんだ?」
「家令タランによれば、騎士団への命令権は、このお城に常住する者が担う、と聞いております。
お父様が、今後、頻繁にお城を空けるようでは、もしものときには困ってしまいます。
どうすればいいんでしょう?」
いつも「蛮族への警戒こそが、我が家の責務」と言っておきながら、留守を預かる私に、肝心の防備体制と、騎士団を動かす方法を教えていない。
手抜かりもいいところだ。
なのに、お父様は葡萄酒を口にしがなら、ぞんざいに手を振るばかり。
「面倒臭い手続きは、家令と相談して、おまえがやっておけ」
思わず、私は声を荒らげた。
本音を叩きつけたのだ。
「お父様は、あまりにも身勝手過ぎます!
何度も足を運んでくれたサイド男爵令息を無視した挙句、お姉様が初孫を産んだら、今度は、『おまえも結婚しろ、子供を産め』などと。
おまけに、『これはからは頻繁に家を空けるから、留守番でもしていろ』だなんて。
言っていることが無茶苦茶です!」
お父様は杯をダン! とテーブルに置く。
「うるさい。俺が当主だ。父親の言うことが聞けんのか。
だから、おまえは嫁き遅れるのだ」
私はうつむいて、唇を咬む。
(誰のせいで、独り身だと思っているの!?)
というセリフが喉まで出かかったが、声に出さずに飲み込んだ。
どうせ、何を言っても、このお父様相手では、無駄なのだ。
自分の胸に手を当て、気を落ち着かせる。
「ーーわかりました。
家令と相談して、お父様が頻繁に不在となることを前提に、手続きをいたします」
私の返答に満足したとみえて、お父様は、新たに葡萄酒を注ぐよう侍女に命じつつ、家令に顔を向けた。
「頼むぞ。要領の悪い娘だが、使いこなせ」
老齢の家令タランは、いつも通り無表情なままに頭を下げた。
「はい。お任せください。旦那様」
◆3
二十日ほどをかけて、ドメス辺境伯夫妻は、再び王都へとやって来た。
今度は二ヶ月以上の長期滞在を目論み、何台もの馬車に毛皮や鉱石をたんまり積み込んでいた。
娘のマイアと、その夫、ライナス伯爵の歓迎を受け、辺境伯夫妻は孫のフェローを構ってから、さっそく王都の街を堪能した。
お父様ーーバド・ドメス辺境伯は杯を酒で満たし、夜職の娘たち相手に得意になる。
自分は辺境にありながらも、国家の重積を担う貴族なのだ、と声高に主張した。
夜の商売に従事する娘たちは、田舎貴族のあしらいには慣れている。
「辺境伯様だって。すごぉい!
私たちが安心して王都でお酒が飲めるのも、バド様のおかげなんですね!」
「蛮族って、怖いんでしょ?
頑張ってください」
「ささ、もう一杯、いかが?
ここは王都。
辺境のことは忘れて、羽を伸ばしましょうよぉ」
夜職娘におだてられて、ドメス辺境伯は何杯も杯をあげて、
「酒持って来い! 金はたっぷりあるぞ!」
と言って、宝石の原石を店の床にばら撒く。
わあああ! と黄色い歓声があがる。
娘だけでなく、給仕をする男性までもが、大勢で床に這いつくばって宝石を拾う。
バド・ドメス辺境伯は、夜の街で怪気炎をあげまくっていた。
一方、お母様ーードメス辺境伯夫人は、目抜通りの服飾店で、ドレスを取っ替え引っ替えしていた。
普段は、ドメス城にやって来るお出入り業者にコーディネートしてもらっていたが、そのセンスではいささか物足りなく、衣類の種類も貧弱だった。
が、ここ王都には、何十軒もの服飾店が軒を連ね、それぞれ個性的なデザインをした衣服を前面に押し立てて商売を競っている。
辺境伯夫人にとって、店舗内で衣服を試着し、何度も着替えるのは初めてのことだ。
「似合うかしら?」
太った身体を強引に、小さめのドレスに押し込む。
袖口やスカートの裾にヒラヒラが付いた、随分昔のデザインをしたドレスだ。
在庫整理品にも等しい古ぼけたドレスや小物だったが、田舎から上京して来た「おのぼり貴族夫人」という、想定外のお客を迎え入れることができて、店員たちも大はしゃぎだ。
もちろん売り子たちは、夫人が機嫌良く買い物ができるよう、思い切りヨイショする。
「素敵ですわ、奥様!」
「さすがは辺境伯の奥様。お目が高い!」
「この服などは、今時の若い娘には着こなせない代物ですよ!」
「このお帽子だと、亜麻色の髪が際立ちますし、青い瞳にも色合いが良いですわ!」
夫人は陽気に鼻歌をうたいながら、従者三人に両手いっぱいの買い物荷物を持たせて、次の店へとハシゴする。
宝飾店に足を踏み入れた際には、両手すべての指に次々と色石を嵌めていく。
赤いルビー、緑のエメラルド、青紫のアメジスト……様々な色に輝く宝石にうっとりする夫人に、周りを取り囲む店員たちから矢継ぎ早に声をかけられる。
「なんて美しい!」
「ご覧ください。このカッティングは、まさに奥様の指に合わせたかのような……」
「凄いですよ。奥様にはどんな宝石もお似合いです!」
お母様、ドメス辺境伯夫人は、お金欲しさに店員たちがこぞってヨイショしているのだということぐらい、さすがに承知していた。
だがそれでも、人々から口々に称賛の言葉を浴びせられるのは悪い気がしない。
顔を真っ赤に火照らせながら、バンバン手持ちの金貨をはたいて、品物を買い漁った。
一方、彼らの娘であるマイアは、自宅で家計簿をつけながら、夫ライナス伯爵と一緒にほくそ笑んでいた。
バド・ドメス辺境伯が家に預けてくれた毛皮や鉱石などの財産を目の前に置いて、その価値を金貨に換算しながら、このまま「秘蔵するモノ」と「換金するモノ」とに振り分ける。
ライナス伯爵夫妻は、互いに声を弾ませた。
「これは相当な額になるわ。本当に助かる」
「ドメス辺境伯が金持ちだっていう噂は、本当だったんだな」
北方の辺境は蛮族の生息地に隣接しているが、同時に豊富な森林資源に恵まれている。
材木は良質で、建材に持って来いだし、薬草をはじめとした稀少な植物も群生する。
魔物や獣を狩ることで得られる肉や毛皮は王都では高値で取引されるし、骨ですら、弓矢の鏃として重宝される。
さらに、最北端に聳える山脈からは、多くの宝石や鉄鉱石が産出される。
ドメス辺境伯領は、豊かな資源に恵まれた土地なのだ。
それでも、王都に館を構えず、辺境の城砦に籠る、特殊な貴族ゆえに、豊かな資材と資金を抱え込みまがらも、それらを使う機会が乏しかった。
マイアは故郷の荒地と森林を思い浮かべる。
「なにせ辺境地ドメスは田舎だからね。
小さな街はあっても、売っているのは生活雑貨や食料品しかない。
それに、お出入り業者はいつもの顔馴染みばかりで、商品がマンネリ気味なの。
お父様もお母様も、王都に出向くことでもないと、お金を使えないのよ。
そうだわ。近いうちにこの子の服や教材をお父様やお母様におねだりしましょう。
孫のためと思ったら、もっと使ってくれるわ」
「それはよかった」
マイアとライナスの若夫婦は、自分たちの息子を抱き上げながら、陽気な声をあげた。
その一方でドメス辺境伯夫妻は、街ブラを終えて帰宅するやいなや、声をかけあった。
「おい、おまえ。良い案を思いついた。
このまま、王都に留まって、マイアと孫のフェローとで、一緒に住むか!」
「ええ。それが良いわ。
二ヶ月の滞在を、最低、三ヶ月に伸ばしましょう。
家令のタランに、送金してもらうよう書状を書き、馬を飛ばしましょうね」
食卓を前にした、お祖父様とお祖母様が口にした、いささか身勝手ともいえる会話だ。
それを孫と一緒に耳にしながらも、若夫婦は笑顔で目を細めるだけだった。
ところが、不測の事態に見舞われた。
辺境のお城からの送金が、一向に届かなかったのである。
これでは、予定通り、二ヶ月で王都生活を切り上げるしかない。
ドメス辺境伯夫妻は、馬車に乗り込む際にも毒付いていた。
「タランが言うことを聞かぬことは、あり得ぬ。
おおかた、メリーヌのやつが送金に難色を示したのではないか?」
「そうね。あの子は真面目だけど、ちょっと堅物だから……。
やっぱり、王都に同行できなくて、拗ねているのかしらね」
そんなことを口にしながら、二人は従者とともに、辺境への帰路に就いた。
◇◇◇
ドメス辺境伯夫妻は、半月かけて、馬車に揺られて帰宅した。
ところが、自分たちのお屋敷であるドメス城の城門が、固く閉じられたままだった。
従者が「開門!」と呼びかけても、門が開かれない。
八台編成の馬車隊が、内堀の前で足止めを食らっていた。
城門から内堀に渡す「跳ね橋」が下りてこないのだ。
「何をしておるのだ、メリーヌは!?」
お父様、バド・ドメス辺境伯は苛立ちながら、馬車を降りる。
やがて、家令タランが、城門脇の小口から顔を出してきた。
そして、跳ね橋を下ろしてやって来て、ドメス辺境伯に向かって頭を下げる。
「ご用件を伺いに参りました」
「タラン。貴様に送金を要請したのに、届いておらぬ。
だから、わざわざ戻ってきたのだ」
「メリーヌお嬢様から、送金は止められておりました。
袋一つと書状を預かっております」
辺境伯が小首をかしげながら袋の口を開けると、中には金貨がズッシリと入っていた。
かなりの額で、要請していた送金額よりも多いくらいだ。
次いで、書状を広げてみれば、素っ気ない文面が記されているのみだった。
『手切れ金として、要請された送金の額は支払います。
ですが、これからは知りません』
辺境伯は、手にした書状を握り締める。
「な、なにを無礼な!
俺の財産だ。
どう使おうと、俺の勝手だろうに!」
やがて、ドメス辺境伯夫妻に同行していた侍従たちが騒ぎ始める。
このまま入城を断られたら、家族に会えないからだ。
従者が皆で家令タランに詰め寄ると、彼は仕方なさそうに、従者たちを、小口から城内へと導いていく。
そのまま皆で、城砦のお屋敷に出向いた。
すると、すっかり人員が様変わりしていた。
辺境伯邸に仕える使用人が、新メンバーに編成し直されていたのだ。
家令タランを押し除け、ベテラン従者が、見慣れぬ顔の執事に声をかける。
「誰だ、おまえたちは?」と。
すると、何人もの執事と侍女が振り向いて、ニッコリと微笑みかけた。
「我らは、ダンド男爵家で仕えていた者です」
「このたび、主人のサイド・ダンド男爵令息に従って、当館に出向いてまいりました」
彼らの返答を受け、辺境伯に長年仕えてきた従者たちに、動揺が広がる。
彼らは口々に語り合う。
「サイド・ダンド男爵令息?」
「誰だ?」
「ああ、メリーヌお嬢様と結婚したいって何度も足を運んできた青年か?」
「たしか、ご主人様から追い出されたーー」
輪になって騒ぐ彼ら従者に対し、新顔の執事と侍女が横一列に勢揃いして、彼らを外へと追い立てる。
「このお屋敷は我々のもの。
部外者は出て行ってください!」
と、言いながら。
でも、たしかにここは、長い間、馴染んできたドメス辺境伯邸だ。
この城砦は、ドメス城だ。
なのに見知らぬ使用人たちに占拠されて、古株の使用人が追い出されようとしている。
それを、顔馴染みの老家令タランが瞑目しながら黙認している。
それよりなにより、このお城、このお屋敷の主人であるバド・ドメス辺境伯ご夫妻を門前払いにしている。
相手は王国きっての名門貴族だというのに。
「どういうことだ、これは!?」
従者たちは、小口から城外へと追い立てられながらも、当惑する一方だった。
◆4
遡ること約二ヶ月ーー。
私、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢は、留守を家令と騎士団長に任せると、両親が王都に向けて出発した一週間後に、後を追うように上京した。
両親と連絡を取るつもりは毛頭ない。
もちろん、姉の子供を見るためでもない。
元彼ーーサイド・ダンド男爵令息の許へと、訪問するためであった。
サイドは当惑した表情を浮かべながらも、両親、兄夫婦と同居しているダンド男爵邸に、私を招き入れてくれた。
ダンド男爵邸は王都の貴族街にある。
今現在、私のお父様たちが逗留している姉夫婦のライナス伯爵邸もすぐ近くにあるが、私はそちらへ訪問するつもりは毛頭ない。
それよりも、私に用があるのは、今まで親しく接してくれていたサイド様だ。
彼は、学園時代から見慣れた、はにかんだような笑顔で、応接室へと誘ってくれた。
廊下を歩く間、少々、咎め立てるような視線を、当家の使用人たちからぶつけられた。
それも当然だ。
私は、彼らがお仕えしてきた、愛すべき「サイド坊ちゃん」からの求婚を受け入れながら、それから三年間も婚約を拒み続けたドメス辺境伯家の娘なのだから。
応接室に入ると、元カレは私に椅子を引いてくれた。
「久しぶりだね、メリーヌ。
お別れは済ませたはずなんだけどーー貴女の方から、我が家に来るとは珍しい。
ご用件を伺いましょう」
サイド男爵令息は、元カノである私に、香り高い紅茶を勧める。
私はカップを手にすることなく、まずは深く頭を下げた。
「この三年間、私の父、バド・ドメス辺境伯の態度は、貴方に対して、とても無礼でした。
謝罪させてください。
そして、もうあのお父様には、私の進む道を邪魔させるつもりはありません。
ですから、私と結婚していただけませんか」
「逆プロポーズですか。
でも、もう遅いですよ」
彼は、角砂糖をスプーンで掻き混ぜながら、溜息をつく。
「知っての通り、今の僕は、パーラ嬢と婚約しようと思っている。
彼女のお父上であるピリア子爵からは、婿入りを反対されてはいないからね。
君のお父様とは違って」
彼、サイド男爵令息は、パーラ・ピリア子爵令嬢と婚約寸前になっていた。
再び、私は頭を下げる。
「それでも、ぜひ、私の求婚をお受けしていただきたい。
私、メリーヌは、ほんとうに貴方を愛しているのです」
私、メリーヌ辺境伯令嬢は、顔を上げ、真摯な眼差しをサイド様にぶつける。
彼とは学園時代からの付き合いで、気心が通じ合っている。
同級生たちにも周知された恋仲だった。
本来なら、とうに所帯を構えているはずだった。
お父様ーーバド・ドメス辺境伯の幼稚な反発さえなければ。
サイド男爵令息は肩をすくめる。
「僕もそうです。
ですが、たとえ貴女のお父様が反対しなくなったとしても、今現在、交際中の相手がいるのです。
彼女に迷惑をおかけするのは……」
「これをご覧ください」
私はすかさず一通の手紙を、彼に手渡す。
差出人の署名を見て、サイドは目を丸くする。
「これは……」
手渡した書状には、パーラ・ピリア子爵令嬢と署名されていた。
彼は広げて文面を見る。
ただ一言、
「メリーヌ嬢と、お幸せに!」
とあった。
呆気に取られたように口を開けている彼に、私はようやくカップを手に解説を始めた。
「パーラ子爵令嬢が、身を退いてくださるそうです。
じつは、彼女は学園時代からの、私の親友なのです。
加えて私と同じく、彼女も姉が嫁に行ってしまい、婿を取るしか結婚できない身の上。
学園卒業後も、同じ境遇の者同士、頻繁にやり取りしていたのです。
なので、父の反対に遭って、私が苦しんでいることを、彼女は承知していました。
一年ほど前、私が愚痴をこぼしましたら、言ってくださったのです。
『もし、貴女とサイド様との仲が壊れたら、私がサイド様を引き取ってあげるわ』と。
こうした約束もあったから、パーラ子爵令嬢は、貴方との婚約話を進めてくださったのだと思います。
でも、つい先日、彼女の許を訪問して、私が、
『お父様の反対で、サイド様は折れてしまいましたけど、私は諦めてません』
と伝えましたら、パーラ嬢は笑いながら一筆、この書状をしたためて私に手渡し、
『あなたたちの仲が壊れていないのなら、私はサイド様と婚約しないわ。
私、人の恋路を邪魔するような、無粋な女じゃありませんもの』
と誓ってくださいました。
ああ、ちなみに、心配は要りませんよ。
彼女、パーラ嬢のお婿さん候補は、大勢おられるんだそうで。
むしろ、貴方との縁談を進めたのは、私との約束を果たそうとしたためであって、
『別に、サイド様を殊更、好んだわけではないわ』
と、パーラ嬢は、ハッキリおっしゃっておられました。
しかも、彼女のお父様が紹介する婿候補を蹴ってサイド様との縁談を進めていたので、なにかと軋轢があるそうで。
結局、私が身を退くようお願いしたおかげで、新たに婿を選び直す、とお決めになったみたいです。
その結果、彼女のお父様、ピリア子爵は大喜びなんだそうです。
パーラ嬢本人も、結構、新たな婿選びを楽しみにしているみたいですよ」
元カレは、元カノからの説明を受けて、苦笑いを浮かべた。
「やれやれ。
パーラ嬢が君と知り合いだとは知っていたが、僕がフラれた場合の受け皿になるという盟約を交わすほどの仲良しだとは知らなかった。
これでまた、振り出しに戻ったのかな。
でも、僕はもう、貴女のお父様に挨拶するのは御免被りたいんだけど」
「ええ。ごもっともです。
もうあの人への挨拶なんか必要ありません。
だから、振り出し戻ったわけではありません。
私がこれから自らの足で王宮に日参して、決着を付けて参ります。
ただ、その間、貴方のお屋敷を間借りさせてください。
首尾よく手続きが終わりましたら、貴方は大手を振るって、我が屋敷ーー我がドメス城に出向いて来られれば良いのです。
なんでしたら、馴染みの従者を大勢、引き連れて来て構いませんから」
その日から、メリーヌは彼氏の館に泊まりつつ、精力的に王宮に働きかけた。
ドメス辺境伯夫妻と、長女マイア夫妻が、浮かれ騒いでいる間、同じ王都にあって、メリーヌは彼氏と結婚できるよう、着々と手続きを進めていったのである。
その甲斐あって、手続きに二週間を要したものの、次のことが正式決定された。
まず、ドメス城に住む代表者の登録が、メリーヌ・ドメス辺境伯令嬢のものとなった。
次いで翌年には、私、メリーヌがドメス辺境伯の爵位を相続することに決定したのだ。
じつは、辺境伯の地位は、ドメス領地に常駐していることが条件で継承されていた。
だから、行ったり来たりして、長らく城主不在にすることは、辺境伯として禁じられていたのだ。
よって、常住が認められなかったお父様、バド・ドメスは辺境伯の爵位を喪失し、娘の私、メリーヌ・ドメスに爵位が移されたのであったーー。
◇◇◇
その結果、若い二人メリーヌとサイドで手を取り合って、ドメス城に入城を果たした。
これが半月前のこと。
そして、城主夫妻として、実質的に現地を統治していた家令タランと騎士団長らとともに、反発する使用人たちを追い払い、サイドの実家であるダンド男爵家から多くの使用人を新たに雇い入れて新体制を整えたのは、わずか五日ほど前のことだった。
だから、ドメス城で仕える使用人たちが、毅然として、お父様とお母様、旧ドメス辺境伯の一行を、門前払いすることができたのだ。
お父様たちと同行していた古株の使用人たちをいったん城外へと追い払ったあとに、私、メリーヌはようやく城門を開けて姿を現し、従者たちに呼びかけた。
「あなた方の家族は、依然として、我が城の敷地内で生活しております。
ですから、今後の身の振り方はご家族とよく話し合って決めてください。
これから私、メリーヌとサンド様に仕える意向がある者は、改めて私が雇い直します」
わあああ!
従者たちはいっせいに跳ね橋を渡り、こぞって居残りを決めていく。
長年仕えてきた従者たちが、自分から離れていく姿を、バド・ドメスら夫婦は呆然と眺めることしかできなかった。
その結果、城外に追い出され、元辺境伯夫妻に同行する従者はわずかに三人になった。
彼らはいずれも老齢で、今まで散々、夫妻から贔屓にしてもらっていたので、馬車を御す人員ぐらい残しておかないと、バド・ドメスら元領主家族が移動すらできないのを案じたからであった。
◆5
おとなしい娘ーー次女による、突然の叛乱に、父親は肝を冷やす思いだった。
父親、バド・ドメス辺境伯は、慌てて、王都に取って返す。
そして、王宮に出向いて、娘メリーヌが行った手続きの無効を訴えた。
だが、バド・ドメス辺境伯がドメス城に常駐していないことは、王宮ではすでに明らかとなっていた。
メリーヌの証言のみならず、サイドの実家ダンド男爵家、及び長女マイアの夫ライナス伯爵の家の関係者や、辺境伯が通った夜の店、辺境伯夫人が訪れた宝飾店などの多方面から、辺境伯夫妻が王都で遊び呆けていたことは、確認済みとなっていた。
よって、バド・ドメスは「辺境伯の資格無し」として、爵位を失った。
そして今現在は、正確に言えば、王家が辺境伯の爵位を召し上げた状態となっていた。
バド・ドメスは王宮勤めの官僚に食い下がる。
「では、後任の辺境伯はまだ未定なのだな!?
だったらーー」
官僚は眼鏡を嵌め直す。
「いえ。次に、新たに辺境伯の爵位が下賜されるのは、現在ドメス城の主人となっているメリーヌ、もしくは彼女と結婚したあとのサイドと決まっております」
「そ、そんな。せめて辺境伯の爵位を、長女のマイアか、長女の旦那であるライナス伯爵に与えてくださることは?」
「無理ですね。彼はライナス伯爵家の家督を、すでに継いでおられますから。
そのご夫人にも、独立した辺境伯の爵位を渡すわけにはまいりません」
じつは官僚として、バド・ドメス辺境伯に窓口で対応しているのは、学園時代、生徒会の副会長をしていた男で、同じ生徒会で書記をしていたメリーヌと懇意だった。
おかげで、法を曲げてまでの贔屓はしなかったものの、メリーヌに有利な結果に導いてくれていた。
実際、彼は理想肌の男であり、三年以上も婚約を引き延ばした挙句、自分の娘の恋路を踏みにじるような父親を、貴族紳士として認めたくなかったのである。
改めて眼鏡を光らせ、目の前にいる、自分の娘を貶めようとする父親を注視した。
「ーーそもそも、どうしてあなた方、ドメスご夫妻が、サイド・ダンドを辺境伯家に婿入りさせなかったのか、私にはわからないのですが……」
官僚がつい漏らした感想に、バド・ドメスは大声で応じた。
「アイツは男爵家の令息で爵位が下位なうえに、家督も継いでいない格下だったからだ!」
「でも、家督者の地位と、爵位を失えばーーあなたこそが、どの貴族家当主よりも劣った立場になりますよ」
目の前でイキリ立つ老人対して、若い官僚は露骨に侮蔑の色を滲ませた視線を向ける。
「ちなみに、今現在、あなた方は『住所不定の元貴族夫妻』ということになります。
王宮が所持する住民登録帳に、あなた方の名前はありませんから」
いつの間にか、住所不定者扱いになっている!?
その事実は、かなりのダメージを夫妻に与えた。
横から夫人が喉を震わせる。
「そ、そんなーーこれからいったい、私たちは、どうやって暮らしていけば……」
官僚は要件は処理したとばかりに、カウンターでトントンと書類を揃えつつ言った。
「さあ。あなた方の暮らし向きは、次期辺境伯家の当主次第ですよ」
メリーヌの両親は、身を震わせ、青褪めた。
実際、バドはしつこい性分で、自分が不当に家から追い出された、と訴え続けた。
翌日も、夫婦揃って王宮に出向いた。
だが、先日とは別の窓口を使った。
そもそも、バドは、あの事務官僚の若造が気に入らなかった。
もっと、上の立場の者でないと、事態はひっくり返せない。
だから、上位貴族ならではの特権を使った。
今度は、パイス王国のベレス国王陛下に直接、訴え出ようとしたのだ。
バド・ドメス辺境伯は、国王陛下とは、顔見知りの仲だ。
何度も一緒に狩りをしている。
おかげで、朝食を共にするという体裁ながら、面会を取り次ぐことに成功した。
だが、案に反して、国王陛下も、先日の官僚同様、冷たい対応だった。
鶏肉のソテーを味わいながら言い捨てる。
「自分の実の娘が家督を継ぐのに、何の不満があるのだ?
しかも、辺境伯家の家令からは、家督の継承に問題はないとの上申書が届いておる。
騎士団をはじめ、麾下の勢力は皆、新たな城主夫妻に忠誠を誓っておるそうだ。
そもそも、仕方ないではないか、其方が辺境伯の爵位を失うのは。
周知の如く、我が国では、蛮族への備えを怠らぬことが辺境伯家の務めなのだ。
それなのに、これほど長期間、しかも継続的に城に不在であったとあらば、爵位を返上してもらわねば、国王としても示しがつかん」
バド・ドメスは歯軋りする。
「では、これから先、我ら夫婦が住む場所は?
もう老後が近いというのに、わずかな金貨のみを渡されて、追い出されたのだ」
「住む所と財産の保証?
それは官職と爵位に付随するもの。
どちらも失えば、王家としては手を下せぬ。
余に頭を下げるぐらいなら、自分の娘相手に詫びるべきだろうて」
「そんな。私たちは親ですよ!?」
「そう。メリーヌ嬢はあなた方の娘だった。
なのに、どうして大切にしなかったのか。
くだらない気分で、娘と、その恋人とを引き裂こうとしおって。
挙句、自分たちは遊び呆けて。
恨まれて当然だろう。
其方の振る舞いは、貴族家の親としてふさわしいものではなかった。
まあ、とにかく、新当主が、其方らの処遇を決定するだろうて」
白い布で口許を拭きながら、国王陛下は席を立つ。
そのまま、政務に就くため、王宮の政庁へと歩いて行った。
それから半日後、ライナス伯爵邸ーー。
次女娘の暗躍によって爵位を喪失した親夫婦が、鞄や皿を投げ合うなどして、派手な喧嘩を始めていた。
「なんだ、おまえは!?
こんな無駄なモノに金を使って!」
お父様が激怒しながら、ドレスや宝飾品を放り投げる。
すると、負けじとお母様が、書類の束を鷲掴みにして金切り声をあげた。
「あなたこそ何よ。夜の女なんかに入れ上げて。
またこんなに借用書が届いてきてるじゃないの!
どれだけツケで飲んだら気が済むのよ!」
バサッと借用書を床にばら撒く。
それでも、気分が収まらない。
お母様は視線を横に向け、孫をあやす長女マイアに向かって怒鳴った。
「あんた、妹に何とか言ってやって。
お姉様でしょ!?」
マイアも思わず息子を強く抱き締めた。
おかげで、赤ん坊のフェローはギャン泣きする。
「そんなの、知らないわよ!
私が手紙をいくら書いたって、メリーヌは何の返事も寄越してこないんだから」
荒ぶる妻の様子を見て、旦那のライナス伯爵は、眉間に皺を寄せる。
「ほんとに困ったものですよ。お義父さん、お義母さん。
このまま我が家に居座られても、私たちにお金を出すことはできませんよ」
これから息子フェローを口実にして、辺境伯の資産を吐き出させようと目論んでいた。
だが、その潤沢な資産は、今や妻の妹、メリーヌのモノになってしまった。
しかもこれまでの経緯から、両親とつるんでいた自分たち姉夫妻にも、メリーヌは敵意を持っているに違いない。
ライナス伯爵は、溜め息混じりで、つぶやく。
「まったく。金がないんだったら、コイツら、何の役にも立たない……」
バン! と、バド・ドメス元辺境伯が、テーブルを叩く。
「聞こえたぞ、ライナス伯!
若造のくせに。
誰のおかげで、結婚できたと思ってる!?」
ライナス伯爵も、顎を突き出して言い返す。
「うるさい。これじゃ不良債権を抱えたも同然じゃないか。
我が伯爵家が傾いてしまったら、迷惑この上ない」
貴族家の大人が二人して、拳を振るわせつつ、ギャーギャーと言い争う。
怒号が飛び交う中、夫人と娘マイア、そして孫のフェローは三人で涙に暮れた。
◇◇◇
冬を越えて、翌年の春ーー。
規定通り、メリーヌ・ドメスが、王家から正式に辺境伯の爵位を授けられた。
そして、同時に、メリーヌはサイド・ダンド男爵令息と結婚し、夫婦となった。
結婚式は城内の教会において、ごく小規模で行われた。
サイド側からは男爵家のご両親や親類が顔を出し、メリーヌ側からは学園時代の学友のほかは、家令タランの係累や、騎士団の面々などが参列した。
お父様、お母様、そしてライナス伯爵夫妻には招待状すら出さなかった。
いまさら言い訳がましく媚びてこられても、付き合いようがない、と判断したからだ。
ちなみに辺境伯の爵位については、メリーヌは夫のサイドに継いでもらおうと思っていた。
だが、サイドが拒否した。
代々、城砦に籠って辺境を守る一族がドメス家であり、そのドメス家の家督を継ぐ者が辺境伯の爵位も授かるのが自然だ、と思ったからだった。
幸い、パイス王国では女性による家督相続は珍しくなかったし、騎士団とともに外敵の侵攻に備える指揮は、
「別にドメス家の家督者でなくとも、辺境伯を授爵した者でなくとも、権限さえ与えられればできることだ」
とサイドは笑って答えたという。
実際、サイドが指揮する軍事力を背景に、メリーヌが辺境領主としてこまめに蛮族と交渉した。
その結果、数年後には、紛争もなく、蛮族と友好な外交関係を築き、北方辺境こそがもっとも安定した領域と見做されるようになっていった。
ちなみに、元ドメス辺境伯夫妻である、メリーヌの両親は、結局、長女マイアが住むライナス伯爵邸の裏庭にある納屋で生活することとなった。
侍女すらつけられない身分へと落ちぶれたまま、二人とも死んでいったという。
最後まで読んでくださって、ありがとうございます。
気に入っていただけましたなら、ブクマや、いいね!、☆☆☆☆☆の評価をお願いいたします。
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