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2.超インフレクリッカー系

 連打である。


 連打が命であると、経験則にて存じている。


 ゆえに徹底して同じコマンドを、脳を破壊されたサルのごとく連打し続け、ゲージを溜めては爆発させるを繰り返す。繰り返し続ける。一つのステータスを徹底して稼ぐこれが最高効率であると理解している。ゆえに一心に連打する。度重なる煽情的なアニメーションも、背筋が疼く卑猥なボイスも、蠱惑的なエフェクトも、全てをどこ吹く風に。


 すなわち作業ゲーであった。全神経はボタン連打する親指に、全意識はヘッドホンの向こう側へと注がれている。同じくサエが織り成す怒涛の連打音、くぐもって反響する嬌声に、まだ俺の方が早いかなどとしょうもない戦況把握を兼ねながら、


『カモたんの部屋から女の子の喘ぎ声が聞こえるの、浮気通話みたいでちょっとクるね』

「奇遇だな。俺も寝取られ通話みてえだなと思ってたところだ」


 地獄みたいな会話だ。


 曲がりなりにも両想い(マッチング)前提で遊んでいる男女の交わす言葉ではない。


『そもそも君から誘ったんじゃないか。「面白いエロゲ見つけたからやろうぜ!」って』

「おおーすげえな俺。何も覚えてねえわ馬鹿なんじゃねえの?」

『いや僕も「何で一人用のエロゲ持ってきたんだ馬鹿じゃないのか……?」と思ったんだけどさ。面白そうだから二つ返事で了承したよ』

「お前飲み会で友人が醜態晒し始めても笑顔で煽るタイプだろ」

『後日写真送りつけるまでがワンセットかな。それで三人友達を失ったよ。今は四人目だ』

「良い友人だな。大事にしてやれよ」

『でもソイツ酷いんだ。せっかく一緒にエロゲ遊んであげてたのに、急に正気に戻ったみたいに昨夜送り付けた僕のエロ自撮りに文句言い始めて……』

「俺じゃねえか。急に正気に戻ったんだよ」


 まあ知ってたが。


 なお深夜テンションからようやく復帰しただけである。


 三時過ぎたくらいから昨夜の記憶は無い。


「それで……俺はコレ一体何をやってんだ? 何で寝取らせ売春系経営シミュなのに、俺はヒロインを稼ぎにも出さず犯しもせず一心にキス調教連打してるんだ?」

『「俺はこの子と純愛ルート完遂するんだ」って息巻いてたよ。僕の制止も聞かずに』

「すげえなジャンルの時点で企画倒れしてるよ。馬鹿なんじゃねえの?」

『行く末を見届けたくなった僕の気持ちが分かったかい? ……あ、すごいよカモたん。ウチの子、今日の稼ぎだけで百六十三人、射精回数二千三百回、収入六千五百万円だって。経験人数は一万の大台乗ったよ』

「情報量ヤバいな……。国が傾くぜ」


 なおウチの子は堂々の経験人数ゼロ人、収入ゼロ円である。だというのに絶頂回数が三百を超えている。キスしかしていないのに業が深い。


「こいつら……どう生活してるんだろうな」

『実家が太いんじゃないかい? 監禁男の』

「ありそうで嫌だな。ところでコレ監禁拘束して調教始めた時点で純愛ルート無いだろ」

『「調教せずに会話だけしてたら逃げられてバッドエンドだった」って二時間くらい前の君が言ってたよ。適度に抵抗削って服従上げないとダメなんだって』

「正気失っててもエロゲ攻略は的確なのな俺。でももう三百日くらいキスし続けたせいで抵抗ゼロの服従淫乱カンストしてんだけど。完全に仕上がってんぞコレ」

『エロゲ主人公怖いなー。ちょっとそれで稼ぎ行かせてみてよ』


 念のためセーブ取ってからやってみる。客入りは六人、収入六百円、経験人数は増えもしなかった。客からは「子供のおママゴトじゃねえんだぞ」とコメントが付いていた。違法営業とは言えさすが風俗業界だ、レビューが厳しい。


『ちなみに僕はもう四周目で『裏社会を牛耳る大淫婦エンド』『主人公が逆監禁調教売春される主従逆転ルート』『毎日たくさんの人に抱かれても本当のご主人様はあなただけルート』は到達したよ。前二つはともかく、三つ目はカモたん的に純愛エンド判定じゃないかい?』

「それ一時間くらい前の俺に言ってあげて欲しかったなー」


 きっとまだ一心にキス連打してると思うんだ。


 早く解放してやってくれ。


『純愛厨より凌辱厨のが純愛上手いのは皮肉だねえ。まあ今回のことから教訓を得るとすれば、ずべこべ言わず心も体もどっちも堕とせってことだね』

「現実とゲームを一緒にするなよ」

『……ふぅ~っ♡』

「オォンッッッ♡♡♡ だからやめろっつの耳が出産するだろうが!」

『君の負けっぷりも大概だよね、芸術的ですらある。早く僕を負かしておくれよ』

「このメスガキ……ッ! なんで率先して敗北待機してんだ……」


 ヘッドホンを抑えながらげんなりと、未だに一つもイベントが進んでいないゲームのコントローラーを机に放る。そういう内容ではないのだから当たり前だ。ちゃんとヒロインにアレコレしてやらねば物語は展開しない。


「話変わるけど、スイッチのネット通信ってやっぱ課金必要なんな。接続できんかった」

『ああ、カモたんVしか持ってないんだっけ。確か七日間無料利用とかあったはず……僕SVどっちもあるから貢いであげようか。ハバタクカミ欲しいだろ?』

「ピンポイントで当ててくるなよ。ってまあ、別にそれでもいいんだけどさ」


 そう、現実もゲームも同じである。


 ゆえに。


「良かったら、今からウチ来てやらないか」

『えっ』

「明日まで休みだろ。泊まりで遊ぼうぜ」

『……えっ』





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