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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-2 残されたモノ

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84.男女の機微

 雨上がり、ほのかな風に運ばれて潮の香りが届く。

 荒天は嫌なものだが、今のイセルナーレの港は美しい。


 レストランにいたのは2時間ほどか。

 太陽はやや傾き始めている。


 結局、完全に奢られた形だったが……。

 きっとかなりのお値段がしたとエミリアは思った。


「本当にご馳走様でした。とてもおいしかったです。ウォリスの味もあって」

「お気に召されたようで私も安心しております」


 イヴァンの笑みが少し薄れ、精悍な顔つきに変わった。

 見惚れるほど格好いい。


 多分、こちらが素なのだろう。

 意識して笑みを絶やさないようにしているのだ。


 舗装された道をイヴァンの先導でエミリアも歩く。


「……エミリアさんはイセルナーレに来てから、長いので?」

「いいえ、まだ1か月ほどでしょうか」


 その答えにイヴァンが率直に目を見開いた。

 彼を驚かせる回答だったようだ。


 まぁ、エミリア自身も驚いている。

 ここまでうまく順応できるとは、最初の頃は思いもよらなかった。


「留学経験もないのに、とてもよくイセルナーレに馴染まれてますね」

「日々、色々な人に助けられて生きております」


 イセルナーレ魔術ギルドの方々やロダン、様々な社会制度。

 それらのおかげでエミリアは生きている――あとは前世の記憶も無駄になっていない。


 イヴァンがちらりと意味深な瞳でエミリアを見た。


 それはあまりにも刹那で、前世の記憶が戻る前のエミリアなら見過ごしてしまっただろう視線だ。

 ……あ、これはとエミリアは思ってしまった。


「では、イセルナーレの観劇などにご興味は? 今度、ブラックパール船舶の後援で水上ショーをやります」

「とても素晴らしいですね」


 言いながら、驚くほど心の動かない自分がいた。


 イヴァンの言葉には嫌らしさは微塵も含まれていない。

 紳士、淑女として。エレガントな範囲だ。


 でも――エミリアには応える気は生まれなかった。


 今のエミリアにはフォードとルル、セリスがいる。

 この人たちを差し置くことは絶対にない。


 それにロダンも……彼には返し切れない恩がある。

 イヴァンの誘いに乗りながら、暗号を探索することはできない。

 それは両者に対する裏切りだ。


「でもごめんなさい。息子がまだ目を離せない年齢で……」

「……そうでしたか。いえ、お気になさらず。それは大変ですね」

 

 イヴァンは軽やかに笑みを浮かべる。

 女性の扱いに慣れているな、とエミリアは感じた。


 彼が埠頭のほうに頭を向ける。

 切り揃えられた金髪が風になびいた。


「セリスさんはまだ作業をしているのでしょうか。途中、雨が強くなりましたが」

「さすがに避難したと思います……」


 ということで埠頭に戻ってみるとメモ書きを残してセリスは帰宅していた。

 キリがいいところで帰宅します、どうかお気になさらず。


 ちょっと悪いことをしたかも。

 まぁ、彼女の性格なら心配はいらないのだろうが。


 イヴァンもメモ書きを見て、申し訳なさそうな顔をした。


「悪いことをしてしまいましたね」

「私も少し思いました」

「この埋め合わせはいずれ……エミリアさんはどういたします?」


 作業現場を見ると綺麗に片付けられ、区切りの良いところで終わっている。

 アルコールが入っていても、この程度なら問題はないけれど……。

 

 今夜はとても大事な用がある。

 区切られたのなら、ちょうどいい。


「今日は上がることにいたします。本当においしい食事、ありがとうございました……!」





 エミリアはしっかりと礼をして、帰宅することにした。

 帰りに保育園へ向かい、フォードを引き取る。


 そして。

 帰るなり、エミリアはルルに気合いを注入してもらった。

 

「きゅいー!」


 リビングにうつ伏せになっているエミリア。

 やや赤らんだエミリアの顔にルルのぷよんとしたお腹が当たる。


 ふにふにふに……。


「きゅきゅきゅいー」

「……うーん」


 ルルのほわほわな羽がエミリアの頬を撫でつける。

 全然痛くない。むしろとても良い気持ちだった。


(セルフ洗車機で洗われるのって、こんな気分なのかなぁ……)


 これは何をしているのか。

 エミリアの顔がルルのサンドバッグになっているのだ。


 深い意味は……特にない。

 ルルの運動のためだけである。


 うつ伏せのエミリアの脇にはフォードが絵本を読んでいる。


「お母さん、あとで代わってね?」

「うん、もうちょっとだけだから……」


 ぺしぺしぺし……。

 身体と心のゲージが回復してくるのを感じる。


 イヴァンが悪いわけではまったくないが、ああいうのは心臓によくない。

 男女の機微をわからないのではないのだが、エミリアの中で優先順位は高くないのだ。


(よし、今夜は頑張ろう……!)


 ペンギンパワーを注入してもらい、気を取り直して。

 アルシャンテ諸島には何があるのだろうか。

きゅいきゅい、きゅい!

₍₍(\((*´꒳`*))/)₎₎


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ちょっと水族館に行ってこようかな ペンギンのぬいぐるみが欲しくなった 癒しは重要
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