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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-2 残されたモノ

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72.休日そのいち

 その日、エミリアは仕事を休みにしていた。


 正確には午前の遅めからセリスと打ち合わせがあるのだが……。

 しかし、それも工房ではなくエミリアの家で行われる。


(子どもがいる場合、こうやって融通が利くのが一番助かるわよね……)


 先日、まとめたメモを元にルーンの消去計画を立てるのだ。

 これはどこにも提出する必要はないが、組んでやる以上はやっておいたほうがいい。


 エミリアとセリスがノートとメモを並べ、にらめっこする。


「まずは西側からかな……。船底だから防護、航海、錆止めのルーンが張り巡らされているし」

「そうですね、甲板側はさほどでもありません。あの謎のルーンくらいでしょうか」

「あれは私が消しておくわ」


 しれっとエミリアが明言する。


 まぁ、あの夜にもう消してあるのだが。

 これはアリバイ作りというやつだ。


「助かります。厄介そうでしたので」

「ええ……あとの問題は上下方向だけど……」


 船の残骸は巨大で、上と接地面がどうなっているかはよくわからない。

 

「横面を消しきってから、ひっくり返すしかないですかね……」

「……そうね。ちょっと面倒だけど」


 この世界にはクレーンもある。

 時間をかければ巨大な鉄の塊を動かすのは充分可能だ。


 描かれた残骸のスケッチを見て、エミリアが思考を巡らせる。


「横面が終わってから、三分割くらいしたほうがスムーズかもね」


 ルーンの消去が終われば、ルーンの切断器具で残骸を解体できる。

 縦5メートル、横幅数十メートルの体積を考えればそのほうが良い気がしてきた。


「なるほど……! そのほうがいいかもですね!」


 セリスと相談して分割する線を考える。

 消去するルーンの難易度、順番、残骸の形も考慮して……。


 ここまでやれば現地の作業もスムーズに行きそうだ。


 1時間ほど作業の話をして、昼食の時間になった。


「セリスさん、昼食の時間だけど一緒に食べてく?」

「あっ……いいんですか?」

「もちろんよ。私の手料理になっちゃうけど……」


 セリスが両手を振る。

 エミリアだけを働かせるわけにはいかない。


「私もお手伝いしますので!」

「そ、そう……?」


 セリスの勢いにエミリアは深く考えずに頷く。

 まぁ、簡単な料理の手伝いなら問題はないか……。





 ということでエミリアとセリスはキッチンに並んで昼食の用意を始める。


 偉そうなことを言ったが、実のところエミリアは手の込んだ料理を作れない。

 前世と調味料が違うし、キッチンの構造的にかなりの手作り料理が大変なのだ。


(まぁ、ワンパンでできるシーフードスパゲッティとかにしよっかな)


 オリーブオイル、スパゲッティを用意して……具材はセリスに切ってもらおう。


 と、思っていたのだが。


「ふー、ふぅー……」


 セリスは包丁をぎゅっと握りしめて目を見開いている。

 剥きエビを刻むのに、なぜそんなに力を込めているのか。


 食卓にいるフォードが不安そうにキッチンを覗いている。


「……セリスお姉ちゃん、大丈夫?」

「きゅい……」


 ペンギンのルルも心配してます。

 さすがのエミリアもセリスに声をかけざるをえなかった。


「あ、あの……もしかして料理とか……」

「学院時代、軍事訓練でちょっとした野外調理法は習いました。ええ、なので大丈夫です。エビをスライスするくらいは……!」

「…………」


 エミリアはそっとセリスの手を取る。

 やはり大公家の令嬢に家庭料理は無茶であった。


「む、無理はしなくていいから」

「そんな……私、やれますっ!」

「いやいやいや! だいじょーぶ! ケガをさせるわけにはいかないしっ!」


 セリスの背を押して食卓に座ってもらう。


 申し訳なさそうにそわそわするセリスの前にルルが来て、羽をしゅっと掲げた。


「……きゅい!」

「待つのも大切……そうですかね。不甲斐ないです……」

「きゅきゅい!」

「気にしちゃダメだよー」


 うなだれるセリスの頭をフォードとルルが撫でて慰める。


 そんな間にエミリアはささっとシーフードスパゲッティを完成させた。

 付け合せはサラダ、ハーブとアンチョビと缶詰トマトのスープだ。


 あまり手間はかかってないけど、それなりの味のはず……。


 食卓に料理を並べ、食べ始めると……セリスが涙を浮かべる。


「うぅ、エミリアさんの手料理おいしいですぅ……」


 そんなセリスだが、優雅で手が踊っているのかと思うほど……テーブルマナーは完璧だ。


 エミリアは改めてセリスの状況に同情した。


 前世の記憶がなければ、自分も包丁を握りしめて途方にくれていたかもしれない。


(自炊も教えてあげないとね……)


 生きていくのは大変なのだ。

スーパーの刻んだ野菜パックは日々、とてもありがたいと思っています。


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― 新着の感想 ―
冷凍野菜は価格も安定してるし、手間がかからないしで重宝してますね。 特に葉もの野菜の価格変動は大変。 カット野菜は数種類ミックスされてるのを良く使いますね。 サラダ、焼きそばといった数種類の野菜を使う…
セリスさんに重大任務です。 お鍋に水を入れて、1%の塩を入れ、コンロで加熱します。沸騰したら(表面が波立つくらいまで待つこと)用意したパスタを投入します。もう一度泡が立ち始めたら火を弱め(火加減はエミ…
まな板と包丁を洗いたくなくて豚肉の切り落とししか買わない上に、日持ちも手間も考えなくていい冷凍カット野菜やミックスベジタブルを常備しているズボラ自炊マンです…! 溶いたカップスープにミックスベジタブル…
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