表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
2-1 沈没船ブラックパール号

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

62/284

62.解体作業

 数日後、正式にイセルナーレ魔術ギルドとブラックパール船舶株式会社で契約が締結された。

 その知らせを受けてエミリアとセリスは作業着で港へと出向く。


 8月2週目、港は焼けつくような暑さだ。

 いるだけで汗が流れる。水筒を持ってきて正解だった。


 港でふたりを迎えたのはイヴァンである。

 前回と同じく隙のない出で立ちだ。


 エミリアはまず、セリスを紹介した。


「こちら、イセルナーレ魔術ギルドのセリス・デレンバーグです。私と一緒に本作業に従事します」

「よ、よろしくお願いいたします……!」


 セリスとイヴァンは初顔合わせだ。

 ギルドの推薦した人材を無下にするはずがないが、ちょっと緊張する。


「はじめまして。イヴァン・ロンダートと申します。どうか気安く、イヴァンとお呼びください」


 イヴァンはにこやかに金髪を風になびかせて応対する。

 その笑みは先日、エミリアに向けられたものと何ら変わりがない。


「はい……イヴァンさん、では私のこともセリスとお呼び頂ければ」

「ありがとうございます。……セリスさんはかつてイセルナーレに留学されたことがありましたか?」

「あっ、そうです。よくご存じですね」

「あなたが留学されていた時、イセルナーレ国立魔術大学の大会で賞をお取りになられましたよね。新聞に載っていたのを覚えております。これは心強い」


 淀みなく流れるように話を運ぶさまは、まさに商売人だ。

 ロダンもここまでではないし、ウォリスの貴族では考えられない。


「はっ、えへへ……お褒めにあずかり、光栄です」


 セリスが美貌のイヴァンに褒められ、顔を綻ばせる。

 ただ、どことなく戸惑いもあるような。


(……元夫も顔は良かったからね)


 無意識の警戒感かもしれない。


 自己紹介が終わったところで、いよいよ作業だ。

 

「では、作業現場へお連れいたします」

「お願いいたします。今日から早速、作業に入れればと思っていますので」

「頼もしい限りですね」


 船の残骸はそのままの位置で変わっていない。

 海のすぐ近くだ。


 ただ、違いがひとつあった。

 残骸を囲むように巨大な日傘と椅子が置かれている。


 日傘はたっぷり大人が数人入れるサイズだ。

 椅子もゆったりとした作りである。 


「お暑いと思いますので、日傘と椅子を設置させて頂きました。さらに弊社の社員が常に現場におりますので、水や食事、日傘の移動、作業台の新設など必要なことがあれば何でも仰ってくださいませ」

「至れり尽くせり、誠にありがとうございます」


 エミリアとセリスは心遣いに感謝し、礼をする。


 ブラックパール船舶はきっちり整えている。


(こういう人なら、常に警備も置いておくのかな?)


 解体作業の船にまで警備を絶やさないのは、神経質なのかも。

 それはそれで気をつけて作業をしなければ。


「……最初だけ、少々作業を見学させて頂いてもよろしいでしょうか? お邪魔にはならないようにいたしますゆえ」

「もちろんです。ぜひともご覧になっていってください」


 エミリアはセリスと頷き合い、船の残骸のすぐ側へと近寄る。


 船の残骸は先日来た時と同じだ。

 壊れ、歪み、錆ついている。


 エミリアは手袋をつけて、そっと屈む。

 

「ふぅ……」


 エミリアは目を閉じた。

 太陽の熱を日傘の下でも感じ取れる。


 吐息の熱。埠頭に寄せる波の音。

 遠く、遠くで海をかき分ける船。

 

 そっと指先で船の残骸に触れる。

 そのまま呼吸を静かに、すすっと指を滑らせていく。


 身体ごと、船体をなぞるように。

 海カモメの鳴き声が聞こえる。


 野外での作業は、屋内とはまた違う。


 一定の環境下に保たれた消去作業はやりやすい。

 ここはどうしても環境と雑音が意識に入ってくる。


 (でも、大丈夫……)


 イヴァンの気配を背後に感じる。

 ……エミリアの指がぴくりと止まった。


 ルーンの刻印だ。ほんの少しの熱を放っている。

 魔力感覚を持った者には、ルーンはほのかな(あかり)、光る文字のように感じられる。


 そこに指をなぞらせる。これはまだ、消しやすい。

 ひとつのルーンが崩れているだけ。


 身体の奥から魔力を溶け込ませる。

 じっくり、焦らず……。


 数分間、ルーンの文字と自分を同化させる。


(いまだ……っ)


 ぐっと目を見開いたエミリアが指を船体に押しつける。

 ぱっと赤熱した魔力を散らせ、ルーンが消えた。


 イヴァンが敬意を込めて拍手する。


「……素晴らしい。私の期待を遥かに上回ります。これなら言うことなし、安心してお任せできます」

明日2/5はバリウムを飲んでぐるぐる回る神聖な儀式を受けるため、更新回数が減少します。

何卒、ご了承ください!!


【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
バリウム飲んでぐるぐる回る儀式は仕方ないですね! 見上げながら口を開けるルルちゃんのお口に小魚放り込む作業しながら待ってますね! あげもの買ってくると玄関封鎖する犬みたいになったりして。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ