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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-5 心機一転

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57.新しい道

 エミリアがセリスを見送ったあと。

 彼女がリビングに戻ると、ルルが上下にたぷたぷしていた。


 羽を身体の前で振って、膝を曲げて伸ばしている。

 前世の朝の体操で見たこともやったこともある動きだった。


「きゅ、きゅ、きゅー」

「そうそうー、そんな感じ!」

「きゅっきゅ!」


 フォードは座って自分の膝を叩き、リズムを取っている。

 エミリアがすすっとフォードに顔を寄せた。


「……これは?」

「んー? セリスお姉ちゃんが教えてくれたんだ。こうするとカニさんがカッコよく決まるんだって!」

「カニさん……」


 エミリアはルルのつけている紙の冠をじーっと見る。

 よく見ると、冠の形がカニの頭に似ているような……?


(ああ、銛の勇者ヘルスドットの冒険でお供になるやつか……!!)


 ヘルスドットは幾多の冒険の中で、かけがえのない仲間を得る。

 それが勇気と知恵を持ったカニとエビだ。

 桃太郎のイヌ・サル・キジのポジションである。


 カニとエビは悪の魔術師モーガンに操られていたが、ヘルスドットによって救われて仲間になるのだ。


 フォードはヘルスドット役、ルルはカニ役……。

 カニの次に仲間になるのがエビなので、セリスはその役だろう。


「ふっきゅい、きゅい」


 ルルは気合いを入れて運動している。

 えっほい、えっほい。カニ役をやるために運動しているのだ。


(……うまいことを言ったものね)


 セリスはしっかりとルル運動計画を進めてくれていたようだ。

 この流れをエミリアも維持して、ルルの体型を守ろう。

 縦にも横にも伸びないように……!





 日が変わって、翌日。


 さすがに昨日の今日でセリスを頼るのは気が引ける……。

 彼女にはああ言われたが、毎日呼ぶのはやり過ぎだろう。

 

 フォードを保育園に預け、エミリアは魔術ギルドへ向かった。

 ブラックパール号の解体はまだ契約していないだろうが、作業プランは考えなければならない。


 ギルドに到着すると珍しくフローラは外出していた。


(フローラさんはロンダート男爵のところかな……)


 そう思いながら工房に顔を出すと、グロッサムが片手を上げる。


「おう、来たか」

「はい。作業と……例の件で」

「そうだな、まずは作業を頼むか。今日も剣のルーンを消してくれ」


 グロッサムに言われ、ルーンの刻まれた剣の作業を担当する。

 ちょっと前から継続している作業だが、かなり慣れてきた。


 刀剣のサイズはバラバラなのだが、刻んであるルーンは均一性が高い。

 一旦、コツを掴めば連続して作業できる。


(よし、集中しよう……)


 とりあえずロダンのことも、船の残骸も心から追い出さなくては。

 目の前の仕事に専心しないといけない。


 ふぅ……とエミリアは肺から空気を追い出す。


 エミリアの前のテーブルにはよく使い込まれたルーンの剣。

 刃から艶は消えてもまだ鋭く、柄には血と汗が染み込んでいる。


 ゆっくりと頭を徐々に、からっぽにしていって。

 身体の奥と芯から魔力を引き出して融和させ――刃のルーンをなぞる。


 ちりっと魔力の火花が散って、ルーンが消える。

 この一工程に約5分ほど。息を整えて、次の剣をテーブルにセットする。


 これを繰り返す。

 考える必要はあまりない。


 身体がすべきことを知っており、溶けあうルーンの対象はそこにある。

 風のように自我を漂わせ、水のように刻まれたルーンを映す。


(……うん)


 1時間半ほど作業をして、20本分の作業を終えた。

 これで3万ナーレ、6万円ほどの報奨金だ。


「ようし、そろそろ昼時だ。キリのいい奴から作業止めていいぞ」


 グロッサムが呼ばわり、職人が徐々に昼休憩へ入っていく。

 彼らは工房付きの契約を結んでおり、サラリーマンに近い。

 

 エミリアはもっと自由な契約だ。


 その分、出勤義務もなくて拘束料もない。

 なので昼も関係ないが……少し休むかと手を止めた。


 エミリアが作業を中断したのを確認し、グロッサムが寄ってくる。

 

「おう……もうそんなに終わったのか」

「20本は処理しました」

「相変わらず、すげぇスピードだな。並の職人なら何日もかかる」


 グロッサムがエミリアの作業台の近くにある椅子を指差した。


「昼時で悪いけどよ、ちょっといいかい?」

「ええ、大丈夫です」


 本来、確認など必要ないのだがグロッサムはエミリアに敬意を払ってくれていた。

 それがエミリアにもよくわかる。 


 グロッサムが椅子に座り、腕を組む。

 雰囲気からして真面目な話だとエミリアは察した。


「昨日、今朝とちょいとフローラと話をしてな。例の解体の件なんだが」

「……はい」


 エミリアはちょっとドキドキしながらグロッサムの話を聞く。

 

「色々と考えて、意見を言い合って……今の体制だと厳しいという話になった」

「えっ、それじゃあ……!?」

「待った。依頼を蹴るってわけじゃあない」


 前のめりになったエミリアをグロッサムが制する。

 良かった、いきなり依頼を断るというわけではないらしい。


「だが、このままじゃあんまり良くないっていう奴だ。今も工房は忙しすぎるわけだしな」

「そうですね……」


 現状、工房の仕事はあふれている。

 職人がフル稼働状態なのは間違いない。


 そこでグロッサムの白い眉がぐっとつり上がった。


「で、エミリア――早いかもしれねぇが、部下を持ってみねぇか?」

これにて第5章終了です!

お読みいただき、ありがとうございました!!


さらには第1部(単行本1冊分)も終了です!

ここまでお読みいただき、本当に御礼申し上げます!


もちろん第2部はこのまま更新を続けますので、ご安心を……!


もしここまでで「面白かった!」と思ってくれた方は、どうかポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて頂けないでしょうか……!


皆様の応援は今後の更新の励みになります!!!


何卒、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
ペンギンって、実は足長いんですよ…! 大部分が胴体の中に埋もれてて見えないし、他の鳥と同じようには動かないだけで。 骨格標本見ると面白いです。フォード君が喜びそう。
|羽を身体の前で振って、膝を曲げて伸ばしている。 膝……ペンギンの膝って屈伸できるの……? ……いや、ルルは精霊だから! 現実のペンギンとはきっと違う構造してるんだ! 骨とかなくて、マナとかそ…
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