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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-5 心機一転

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54.ブラックパール号

 エミリアの言葉を受けて、グロッサムが勢いよく膝を打つ。


「ウチの新入りがやるっていってるんだ。腹(くく)るしかねぇな」

「グロッサムさん……!」

「というわけだ、フローラ。現場はやるぜ」

「……わかったわ。イヴァンさん、イセルナーレ魔術ギルドでこの依頼を引き受けます」


 イヴァンがすっと頭を下げ、エミリアたちに礼をする。


「ありがとうございます。契約書の締結にすぐ着手しましょう」

「ええ、とりあえず今日は失礼するわね」

「とても有意義な時間でした。お見送りいたします」


 イヴァンの丁寧さは図抜けている。

 彼は本当に港の出口に()めてある馬車までエミリアたちを見送った。


 馬車に乗り込むとグロッサムが腕を組んで難しい顔をする。

 何が話題に出るか、さすがにエミリアにもわかっていた。


「……カーリック伯爵はなんであの場にいたんだ?」

「はい……」


 当然、これは聞かれるはずだった。

 隠していても意味はない。どうせこの案件を調べればわかる話だ。


 エミリアは聞いた話を包み隠さず、ふたりに伝えた。


 ただ、エミリアがロダンをどう感じたかは――悲しさとこだわり、そういった想いは主観的な話だ。

 それらを除いてエミリアは事情を説明した。


「ふぅむ……なんとな、そんな因果があったのかい」

「15年前の沈没事故について、私はよく知らないのですが……おふたりは?」

「大事件で何日も新聞に載っていたから、知っているわ」


 馬車に揺られている間、エミリアはフローラとグロッサムから沈没事故のあらましを聞いた。


 事故が起きたのは15年前の夏の終わり。

 その年は猛暑で、台風が続いていた。


「15年くらい前はよ、カローナ連合と一触即発でな……」

 

 カローナ連合はイセルナーレから海を1000キロ以上隔てたところにある、乾燥した大地と豪雨、海運の国だ。


 イセルナーレほどではないが、ウォリスよりは断然大きな国である。

 当時、両国は制海権を競って緊張状態にあったという。


 内陸国に育ったエミリアにとっては物理的にも遠い話で、初めて聞くことばかりだ。

 

「船団の護衛のため、軍船もよく出航していたわね。その日、陸のほうは晴れていたけれど、沖は荒れていたの」

「情勢が物騒だってんでな、輸送船団には軍船が同伴する決まりだった。ああ、そうだ……嵐によって船団が巻き込まれた。事故が起きたのは、カローナ海だったはずだ」


 カローナ海。ここからずっと西の海だ。

 イセルナーレより遥かに離れた、公海での事故。


 もちろんイセルナーレ海軍は救助隊を急行させたが、軍船に乗っていた大半の人間が死亡した。


「幸い、軍船が護衛していた船団は無事だった……軍船だけが沈没したんだ。思い出したぞ、その沈没した船の名前もブラックパール号だ」

「えっ、その名前は……?」


 あの船の残骸の解体、それの依頼主がブラックパール船舶株式会社だったはず。


黒真珠(ブラックパール)という名前は珍しくはないわよ。富の象徴としてね」

「なるほど……」


 沈没の概要について、多くはないが把握できた。

 馬車が市街地へと戻ってくる。

 

「で、問題はだ。アレをどうするかっていうことだが」

「……ルーンの消去ですね。すみません、先走ってしまって」

「気にしないで。むしろ積極性が見れて、わたくしも安心しているわ」

「おうよ。職人ってのはな、腕も大切だが気合いだ。やってやるぜっていう前のめりさがなきゃいけねぇ」


 ただ、とそこでグロッサムが言葉を切る。

 熱意だけでは仕事が完遂できないことも、グロッサムはよく承知していた。


「難題は難題だ。しっかり体制やら方策を考えねぇとな……」

「そうね、契約書も結ばなきゃだし……それも後日、話しましょ」


 具体的な解体作業に入るには数日はかかるという。

 大きな案件だと書類も入り組むようだ。





 ということで今日の業務は終了である。


 自宅の近くで馬車から降ろしてもらったエミリア。

 ふたりと別れて、エミリアはそのまま家へと帰った。


(セリスとフォード、ルルは大丈夫……だよね?)


「ただいまー……」


 すすっと家の鍵を開けて、エミリアは中に入る。


 ……リビングにはセリスがうつ伏せに倒れていた。

 赤い髪に画用紙で作られた剣が刺さっている。


「ぐえー」


 セリスは情けない声を出していた。

 

 そんな倒れたセリスのそばにフォードとルルがいる。

 ふたりの頭の上には、これまた画用紙で作られた冠があった。


「……これが僕の選択だ。仕方がなかったんだ」

「きゅーい……」


 憂いを帯びたフォードの言葉とルルの鳴き声。


「えっと……」


 一体、どういう状況なのだろうか。

 そこでエミリアははっとする。


 フォードのセリフは絵本『銛の勇者ヘルスドットの冒険』からの引用だ。

 だとすると、答えはひとつ。


 これはごっこ遊びをしているのだ。

きゅーい…… (・Θ・ っ )つ三


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― 新着の感想 ―
ブラックパールといえばカリビアンなほうが真っ先に来ちゃうな…w
いつも楽しく読んでます! ふと、ロダンさんのお母様は、まだ見つかって無いよね? 15年さまよってたみたいだし、だとすると、2人の再会?あるかもね〜 流石に精霊さんが守ってて生きてるとかは飛びすぎた想…
これからの展開にワクワク ロダンとのゆっくりした関わりにも期待
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