360.朝食を
「朝食の用意をしないと……」
「手伝うよ」
「ありがとう、助かる」
ふぁ……とエミリアはあくびをする。
間近であくびだなんて、淑女にあるまじき仕草だが……ロダンの前では飾りたくなかった。
いや、多分だけどロダンは飾らないエミリアのほうが嬉しく思ってるような気がする。
ロダンは微笑んで髪を撫でてくれていた。青色の瞳の奥が喜んでいる。
「んしょっと……」
のそのそとエミリアとロダンはベッドから起き出す。
まだフォードとルルは寝ている中、そーっとふたりだけで。
カーテン越しの光は強く光るが、そのままふたりは寝室を後にした。
「顔、洗う?」
「ああ」
洗面所で並んで顔を洗い、さらに眠気を落とす。この時にはかなりはっきりと思考が回るようになってきた。
「……シャワーを借りてもいいか?」
「どうぞどうぞ」
一緒に入るとかは――マズい。
芽生えた思考に蓋をして、ロダンを浴室に案内する。
「タオルはここに置いておくから」
「ありがとう」
浴室の扉が閉められ、シャワーの音が鳴る。
脱衣所と浴室はセットになっているので、もう洗面所のエミリアからロダンは見えなくなった。
ただ、神経を集中すると――扉は薄くて、音が聞こえる。
ロダンの服を脱ぐ音。
(な、何を考えて……っ)
これまで接してきた中では、服を脱ぐ場面なんて早々なかった。
貴族学院時代、雨に打たれて濡れた服を替えるとか……。
もちろん貴族学院時代には肌を見せないのが当たり前。
でも、だけど今は……。
ざーざーという規則正しい音がして、ルーンの湯沸かしが稼働し始めた。
「うーん……」
気になる。とてつもなく気になってしまう。
でも駄目だ。ここから踏み込むと危ない気がする。まだ朝なのに。
「……朝食の用意を始めよ」
エミリアはもう一度顔を洗うと、キッチンへと向かった。
昨夜がっつり食べたので、そこまでお腹は空いていない。
昨夜の片付けをぱぱっと終えて、置いてある野菜からサラダをカットして、オリーブオイル。
ちょちょっとベーコンとハムを焼く準備をしておく。
浴室から人が出てくる気配がすると、ロダンがタオルを肩にかけて現れる。
「戻った」
「どう? さっぱりした?」
「ああ……俺も朝食の用意を手伝おう」
言って、ロダンが歩み寄ってくる。
わずかに濡れた髪と色つやのよい白の肌には、なんとも言えない色気があった。
どきりと胸が跳ねると、ロダンがすぐ近くにいる。
ほのかにエミリアが使い慣れた石鹸の香りがした。
「君もシャワーを浴びてくるといい」
「……そうね、そうする」
なんだろう。心が跳ね回って仕方ない。
「あとはパンと焼き上げればいいくらい……かな? 盛り付けもだけど」
「すぐ食べられるようにしておく」
「じゃあ、私はフォードとルルを起こしてシャワーを浴びるわ」
寝室に行くと、さすがにフォードとルルも起きていた。
眠気たっぷりなまま上半身を起こしている程度ではあるが……。
「おはよう、お母さん〜」
「きゅいー」
「おはようー。さぁ、起きてシャキッとしたらご飯よ」
「……ロダンお兄ちゃんは?」
「リビングで食事の用意をしているわ」
「まだいるんだ!」
フォードが喜び、ルルを抱えながらベッドから降りた。
「行こう、ルル。シャワー浴びようよう」
「きゅーいー」
ふたりを浴室に送り込み、出てくるのを待つ……間にリビングをちょっと見る。
そこではロダンが甲斐甲斐しく非常に真面目な顔をして、朝食の用意をしているのだった。
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