342.夕食後の
そしてパスタをある程度食べたら、サラダに移って口の中の味をリセットする。
ハムとベーコンのまろやかな肉と塩味がシャキシャキの冬レタスと合っているのだ。
「濃厚な味にはさっぱりめのサイドメニューがいいわね」
「きゅい……!」
もしゃしゃ〜〜。
冬のレタスは葉が厚め。
ルルのくちばしにレタスの葉が挟まれ、お腹へと消えていく。
(高カロリーだけじゃなくて、お野菜もね……っ!)
もしゃしゃ。
フォードは元より野菜が好きなので、レタスもよく味わって食べていた。
口の中をリセットしたらまたパスタへ。
今度は肝は少なめでイカとカワハギの身を多めにして。
うーん、イカの身はどうしてトマトとよく合うのだろうか?
やや筋のある独特の身がトマトを吸うからだろうか……。
こうしてかなりパスタを食べるとルルの動きが鈍くなってきた。
「きゅきゅい」
「眠くなってきた? お腹いっぱいだもんね〜」
フォードがルルのお腹を優しく撫でる。ルルのお腹はかなり膨れていた。
最近はルルとフォードの食べる量をほぼ把握して、ぴったりにできるようになってきた。
(サイドで調整すべきなのよね、うん)
フォードも満足しているようで、あとはエミリアが少し食べるスピード(ルルとフォードが満足し始める時を見計らって)を上げればちょうどよく食べ終わる。
皿の上は綺麗に何も――海鮮の身はひとつも残らなかった。
フォードも満足そうにルルへ寄りかかっている。
「ふぅ、おいしかった……!」
「きゅうん〜!!」
カワハギ料理は大成功だったと思う。今度また買ってみるのもいいだろう。
エミリアが片付けをしている間に、フォードとルルはソファーで抱き合っていた。
「んぅ〜〜……」
「きゅうん〜……」
ルルのお腹に頭を埋めるフォード。ルルもフォードの黒髪を撫でて、気持ち良さそうにしていた。
「そろそろ寝ましょう〜」
「ふぁーい」
「きゅー」
眠そうなふたりの手を引き、寝支度を整えてベッドに入る。
「んふー」
「きゅうんー」
3人で抱き合いながら、エミリアは眠りに落ちようとする。
でもなぜだか、その夜は眠気がなかなかやってこなかった。
(……精霊魔術ね。私のご先祖様は何を知っているの?)
エミリアは今日のことを反芻していた。
前世の記憶を取り戻す前のエミリアは――今とは違った。
家族、血縁、儀式。
セリド公爵家は器である、と叩き込まれてきた。
魔術の器。
血を繋ぐ道具。
あるいは贄だろうか。
(でも……そもそも器と決めたのは、誰なの?)
それはある意味、決まっているはずだった。セリド公爵家の家祖だ。
(……私は家祖を知らないけど)
あらゆる貴族は家を立てた家祖を崇め、顕彰する。いかに家祖が素晴らしい功績を打ち立てたのか、内外への宣伝に余念がない。
それが貴族の家の存在理由、価値に直結するからだ。
もちろんそのような事績は誇張され、家系図さえも偽造される。
ウォリス王国政府も様々な事情から、貴族家の過去の事績や系譜については黙認していた。
(私の家は違うのよね)
しかしセリド公爵家では先祖のこと、家が興った事績などを取り上げることはなかったように思う。
実際、セリド公爵家は公爵とはいっても領地は小さく、王国政府の代官が代理統治している有様なのだけれど。
(誰が……セリド公爵家を作ったの?)
エミリアは目を閉じて記憶を辿る。
(――っ!)
頭の奥に鈍い衝撃が走る。
痛くはないが、何かに精神を揺さぶられたような。
「きゅうん……」
ちょうどその時、ルルが寝返りを打ってエミリアの胸の中にもふっとやってきた。
すると……エミリアの頭からすっと衝撃が遠ざかった気がした。
(ありがとう)
そのままエミリアは過去をたぐり寄せる。なぜ、昔のことを全然気にしていなかったのだろう。
思い出せる限りの過去の思い出。
エミリアはそれを振り返り、手元に置こうと試みていた。
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