340.カワハギをさばいて
家に帰って、支度をして。
「ふんふーん♪」
ぐりぐりとお絵描きをするフォードを背に、エミリアは夕食の準備に取り掛かる。
ルルはキッチンの『ルルスペース』にセット。
ここは何も危険がなく、羽を広げても何にも接触せず、ジャンプ(低空飛行ではある)しても安全である。
ルル専用スペースだ。
「よし……カワハギよ!」
「きゅい……」
「……ルル?」
ルルが眠そうな目をしている。
帰宅途中の揺れと夕闇でねむねむモードに入ってしまったのだ。
「ちょっ、ルルが頼りなのよ!」
「ふきゅう」
マズい。反応が鈍い。
だが、このような時の対処法もエミリアは心得ている。
エミリアはカワハギの尾を持って、ゆらゆらとルルの前で揺らした。
「ほら、お魚よ〜」
「きゅっ!?」
魚の匂いでルルの目がぱちーんと開いた。
そしてひょいとカワハギに向かってくちばしを伸ばしてくる。
それを絶妙なタイミングでエミリアが阻止する。
ふにっとね。
前進するルルのお腹を、エミリアの手が制した。
……よし。起きた。
「生は駄目よ」
「きゅい」
「2匹しかないのだから、ちゃんと調理しないと。そのほうが美味しく食べられるわ」
「きゅっ……!」
それもそう、とルルが頷く。
「で、どうやって解体するか……」
「きゅきゅい」
ルルが羽でカワハギの目の後ろを指し示す。
「きゅー、きゅい」
「目の後ろから気合を入れて、背骨を断つのね」
きゅっとルルが羽を上下させる。
思い切りが大事らしい。
エミリアが包丁をセットし、ぐっと力を入れて背骨を断ち切る。
「きゅい、きゅっ」
ルルがカワハギを持つ仕草をして、左右に割るよう指示する。
エミリアはそれに従い、目の後ろからふたつに分ける……すると黄色いぷりっとした肝がもう出てきた。
「こ、こうやるのね」
「きゅー! きゅっ、きゅい!」
ルルが喜びながら、肝の下にある黒の玉に気をつけろと呼びかけてくる。
カワハギの内臓の中に小さな黒の玉があった。
「あっ、苦玉ね。ありがとう、これは潰さないように避けないと」
魚の解体経験はそれなりにあるエミリアは苦玉を取り外す。
肝には血管が走っている。
(ここからは一般的な処置で大丈夫よね)
指で肝の血を押し出す。あとは氷水に漬けてっと。
「きゅきゅい」
「皮はお好みで……うーん、剥いで三枚おろしにしましょうか」
びーっと端から上手く皮を剥がして、三枚におろす。
さほど大きくない魚なので、ここからは楽だ。
身からは血合い骨と腹骨を取り除く。
「きゅー」
「薄皮は少し残ってもいい? ふむふむ……」
カワハギは皮も美味いとは聞いたことがある。だからなのだろう。
アラは霜降りにすれば使い回せるらしく、別にとっておく。
もう1匹のカワハギも同様に解体して、肝と身をそばにおく。
「うーん、ふぅ〜……!」
「きゅーっ!」
ルルが羽をぽにぽに鳴らす。
一仕事やり終えた気分だ。
さばいたことのない魚をさばくのは、なぜ達成感があるのだろうか。
「きゅっ!」
「薄造りでもイケる……そうね」
まぁ、少しくらいはいいか。
夕食前なので少しだけ、エミリアはカワハギの身を薄く切る。
その破片をルルへとすすっと差し出す。
「きゅっ!」
やっったーー!
という歓喜の声を上げて、ルルがカワハギの身をくちばしへと放り込んだ。
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