328.いくつかの後日談
エミリアとロダンの試し合いが終わり。
少し離れたところにいたガネットは肩をすくめた。
「とんでもない戦いだったな」
「あんた、あの人と決闘したのよ」
「……さすがに無謀すぎたな」
キャレシーのツッコミに気を悪くするでもなく、ガネットが腕を組んだ。
アンドリアにいた頃には考えられない反応だ。
ツッコんだキャレシーも内心、驚かずにはいられない。
(馬鹿から馬鹿を取ったら――欠点がなくなるじゃない)
それはつまり――諸々と色々の相手として望ましくなるのかも?
(いや、それとこれとは違うから……!)
駄目だ。
最近、ガネットのそばにいると思考が変な方向に飛びかける。
一方、ガネットはふーむと唸っていた。
「しかし、あれでもまだ全然本気じゃないだろうしな……」
「……そうね。あんたとの決闘で使ったあの技を使わなかったわ」
生体ルーン。
エミリアの場合は漆黒の鏡のような不可思議の魔術だ。
あれが間違いなく、エミリアの奥義だろう。
「魔力の『色』と生体ルーンは密接な関係にある。今回の試し合いからすると、カーリック伯爵も生体ルーンを使えそうだな」
「それがお互いの全力ということかしら」
「そうだろうな。俺やお前なら――10秒でアウトだろうが」
「あのふたりと戦う気なんて、私には起こらないわよ」
「それが俺とお前の違いだな」
ガネットが目を細め、キャレシーを見つめる。
その瞳は面白がっていた。
「さっきのアレ――海と波のイメージは無我夢中でやったのか」
「うん。すっごく疲れる技だったけれど」
手を開いて、閉じる。
自分でもまだ信じられない。
まさか本当に海の欠片が……自分の身体と魔力で再現できるなんて。
「アレでいいんでしょ? 時間はかかるけれど」
「ああ、見様見真似にしては大したものだ」
単純だからこそわかる。
ガネットは心の底からそう思っているようだった。
少しだけキャレシーも調子に乗ってみたくなる。
「あたしのこと、見直した?」
「いや、お前のことを別に見下していたことはないが。実力はわかっているつもりだ」
マジな調子で答えられ、キャレシーの顔が熱くなる。
(この無自覚馬鹿はっ!)
はしゃいだ自分が――子どもみたいじゃないか。
というか、褒める時も素直な奴だ。
(子どもとかにも、こうなんだろうな……)
ガネットはいつも偉そうだが、役割や義務を放棄する男ではない。
成績は常に最優秀(素行以外)
一家の年下の子を引っ張るのは間違いない。多分、自分の子どもに対しても……。
(いやいや! 関係ないから! そんなことは、今!)
まただ。
ガネットの側面について、何かを『見よう』としてしまう。
直接関係がなくても。
彼の築いてきた関係性を想像して……。
良くない。
本当に、なぜだか、とても良くない。
そこでふむとガネットが思い出したかのように、
「ところで前に言った食事だが、いつ行く?」
「〜〜っ!」
キャレシーは頬を膨らませ、抗議する。
こいつはー!
人の気も知らないでっ!
ガネットの言動が悪いわけではない。だが彼に余裕があるのが……ムカつくのだ。
そんなこんなで試し合いも終わり、夕方になった頃。
エミリアはロダンと軽くお茶タイムに入っていた。
『少しの間、会えなかったからな』
ということらしい。
確かに試験やらで忙しかった。
(彼も気にしてくれていたのね)
ただ、今日をもってエミリアが実施する試験は終わった。
他の手伝いやら採点やらはあるにしても、大きなところは完遂である。
なのでエミリアは心置きなく、ご褒美ティータイムに赴くことにしたのだった。
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