320.予期せぬ遭遇
ランチのあと、ルールーに手伝ってもらって後片付けだ。
回答者ごとに答案用紙と棒をセットにして袋詰めする。
その後、袋の外側に回答者の名前をさらさらと書き込む。
イセルナーレ魔術大学では、試験の回答取り扱いにも規則がある。
取り違えしないよう、細心の注意を払って袋詰め……数百人分あるので、結構な分量だ。
(仕事終わったと思ったけど……!)
甘かった。
回収にこれほど時間がかかるとは……。
ルールーと手分けしても2時間かかった。
取りこぼしのないことを確認して、講堂を見やる。
テーブルの上には袋の山が出来上がっていた。
「お疲れ様、大丈夫よ……漏れはないわ」
「そうですね、お疲れ様でした!」
ルールーは不平ひとつ言わず、にこにこしていた。
申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「ごめんなさいね、思ったよりも時間がかかって……」
「いえいえ! 実技がこみこみの試験は、色々と大変ですから。色々な先生を手伝って、その辺りはよく知っているので」
聞くと、ルールーは大学卒業後も準教職員として働いていたらしい。
なるほど、だから大学内の色々なことに詳しかったのか。
さすがに袋の山は大学職員が持っていくそうで、安心。
教務課に報告すれば、しかるべきところに運ばれるという。
が、採点をするのはエミリアだ。
持ち帰りは許されないため、採点も大学に来てやるしかない。
まぁ、とりあえず今日の仕事は本当に終わりだ――エミリアはルールーと別れ、教務課に向かう。
そこで袋の山の件を話して、精算。お金を受け取る。
(ふむふむ……)
現金を受け取ると喜びがあふれるのはなぜだろうか。
公爵令嬢であっても、前世が小市民だからか……まぁ、お金の流れに無頓着になるよりはいいだろう。
帰りに何を買っていこうかなー、と思いながらエミリアが大学から帰宅しようとすると。
いつもの大学門の横。
ちょっとした広場に異様な人だかりができている。
(試験期間中でも、こんなに混んでたかしら)
しかもなんだか、女性が山のように多いような……?
イセルナーレ魔術大学の男女数はほぼ同じはず。
興味を引かれて、エミリアがすすーっと人だかりを覗き込む。
そこでエミリアははっとしてしまった。
光を受けた氷のような銀髪。
深い海を思わせる瞳。
凍える世界の天使。整いすぎて、この世の人間ではないような。
穏やかでありながら、人を寄せつけない雰囲気――同時に、見た人間に決して忘れられない印象を与える男。
ロダンが人混みの中央にいた。
いや、正確にはロダンの周りに人はいなかったのだが。
彼の周囲、10メートルだけはぽっかりと人がいなかった。
しかし、どうして騎士服を着た彼が大学に??
(なっ、なんで!?)
と、思ったがエミリアはすぐに推測を働かせる。
「お、押さないで!」
「このラインより内側へは、入らないように!」
エミリアも面識ある騎士の面々が、人の輪を押し止めている。
つまり、これは公務だ。
ロダンにも退屈や嫌がっている風はない。人との付き合いについて、アレな彼ではあるが……仕事には決して手を抜かない。
人だかりを作るだけなら、ロダンは気乗りしないだろう。エミリアにはわかる。
だが、今のロダンは真剣だ。
真剣に学生を見極めていると、エミリアは察した。
(……邪魔にならないほうがいいわよね?)
幸いにも周囲の人だかりの中で、ロダンの視線は行き来している。
エミリアはロダンからは察知されていない。
(にしても、これは――)
と、疑問に思っていると金髪の騎士テリーが大声を張り上げる。
「では! 我こそはと思う学生は前へ!! 王都守護騎士団のロダン団長と接せられる、またとない機会でーす!」
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