319.誤解されている気がします!
「だ、大丈夫ですか!?」
「ええ……大丈夫よ」
急いで紅茶の水筒を手に取り、喉に流し込む。
ごくごく。
ふぅ……清涼感あふれる酸味の効いた紅茶で落ち着いた。
「ボコしたわけではないわ。あれはきちんとした勝負で、いい決闘だったわよ」
「そ、そうですか」
ルールーがほんの少し、首を傾けた。
聞いた話では精霊魔術を使って、華麗なる一撃。
その後も有効打を与えず、エミリアの一方的になぶり殺しだったとか……。
ルールーはしかし、それは人づてに聞いたからだと納得することにした。
まさか、そんな。
学生をボコボコにする教職員が今時いるとは思えない。
ガンツやトリスターノの頃のような、血の気の多い時代ではないのだ。
それに目の前のエミリアは美しい黒髪、凛とした美貌、まっすぐな背筋……ルールーから見ても、理想的な女性だ。
きらきらと輝くような……。
試験でも威厳と目配りのバランスを欠かさず、日頃の講義の評判も良いのだとか。
しかもスレイプニルのような、御しがたい動物にも心を通わせて――。
そこでルールーは、はっとして本題に話を戻す。
「そうそう! で、あのふたりが今年一年の首席候補みたいですね」
「あら、そうなの?」
その話は初めて聞いた。
まぁ、エミリアは臨時講師……興味を持って意味があるのは自分の講義だけだろうし。
「ガネットとキャレシーですか、他の講義でもとても評価されているみたいです」
「ふむふむ……」
どうやらエミリアが担当する以外の
講義も真面目に受けているらしい。
それはそれでやっぱり嬉しい。
ルールーは事情通なようで、大学内の様々なことを教えてくれる。
冷暖房の効きの悪い講堂やお昼寝に適した校舎。
魔術は精神力を使うので、枕を持ち込む教職員も多いのだとか。
「あと聞きました? 最近、学生食堂で何やら精霊が入り込んでいるようで」
ほうほう、それも初耳だ。
しかし大学内に精霊とは。
「興味深いわね。学生食堂って……つまみ食いかしら? 私は行ったことがないけれど、大盛りで料理が出てくるとか」
「私もたまーに食べに行く程度ですが、音も影もなく、つまみ食いをしていく精霊がいる……とか?」
「へぇー……」
イセルナーレの王都には精霊避けの結界があるはず。
でも結界はある程度以上のサイズの精霊にしか効果がない。
小さい精霊は素通り……大学に入り込んだのも、小さい精霊だろう。
「誰かが匿っていたりしてね」
「そんなことが……? 届け出もせずに?」
目を丸くするルールーにエミリアが説明する。
「ウォリスでもあったのよ。貴族学院でこっそり精霊を飼っていたみたいな事例が……」
「えっ!? エミリアさんって、ウォリス出身なんですか……!?」
びっくり驚くルールーにエミリアは目をぱちくりさせる。
そういえば、言ってなかった……かも?
隠してはいないわけだけど。
「こほん、まぁ……そうね」
「じゃあエミリアさんの魔術は、本場ウォリスってことなんですね。はぁ〜……なるほど……」
ルールーは何だか感心して頷いていてた。
「ウォリスだからって、そんなにここと違うことはないわよ?」
「そうでしょうか……?」
「ええ、むしろイセルナーレのほうがいいんじゃないかしら」
全般的なカリキュラムの質はイセルナーレのほうが圧倒的に上だ。
ウォリスは精霊魔術を重視しているだけ、とも感じられる。
「では、エミリアさんが決闘に強いのは?」
「ごふっ!」
しまった。
それではエミリアが決闘大好き人間だと思われてしまう。
(そんなことはないのよ――たまたま! 必要最低限度! 計画をしたためて……! なんだから!)
とはいえ、年の近いルールーとは楽しくランチを過ごすことができた。
……やや斜め上の慕われ方をされている気はするけれども。
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