313.実家とこれから
セリド公爵家の領地はドゥナガ山脈にある。
とはいえ、地図上の面積的には狭い。さらにドゥナガ山脈の傾斜がきつく、切り立った崖も多いからだ。
天候の変化も激しく、夏は霧と雨。冬は積雪で山の大部分に人は住めない。
(今から思うと、プレートとかのぶつかるところなんでしょうね。いくらなんでも急すぎる山が多いから)
なので実質的な領地はドゥナガ山脈の麓に限られる。
ウォリスに存在する公爵の中において、セリド公爵家の領地は最小だろう。
なんと男爵に並べてようやく多いほう……くらい。
さらには領地内の人口も当然、少ない。スカスカである。
まぁ、セリド公爵家が特別すぎるのかも……前世の記憶を取り戻して、初めて違和感に気づいたのだ。
「……ドゥナガ山脈のどの辺りなのでしょう。お屋敷があったのは?」
「屋敷というほどのものはないのう。なにせ男爵じゃからな。ドゥナガ山脈の南、トゥーナ山じゃ」
「それは……また……」
昼食を食べ終わったエミリアが難しい顔をした。
トゥーナ山は山からの強い風で、山脈の中でも人が少ない。
が、エミリアはよく知っていた。
なぜならセリド公爵家に生まれた者が徹底的に鍛えられ、修行させられるのがトゥーナ山であるからだ。
「きゅいー?」
もっもっもっ……。
ルルがもっちもちーとピザのチーズを引っ張る。
「きゅっ!」
そして一気に口へと頬張って、限界までチーズましましピザを詰め込んだ。
リスみたいにルルの頬もパンパンになっている。可愛い。
「トゥーナ山はよく知っております」
「ふむ……やはり、そうじゃろうの……」
「家族は昔の話をあまりしません。私の親も兄も知らないかも……」
貴族は自分の家の歴史を学ぶ。
それこそが貴族たるゆえんだからだ。
でもセリド公爵家は過去に興味がない。
エミリアも気にしていなかったし、親族もそうだ。
「あやつもそんな風じゃった。不思議はあるまい。だが、今もセリド公爵家の領地なら……なんとかはなりそうじゃな」
「恐らくは。私もすぐ行けるというわけではありませんけれど」
「それは構わん。無茶をさせるつもりはないからのぅ。時期を見ねばな」
ガンツははっきりとそう言った。
それからいくつか、講師の話などをして。
大学で正規職を得られるなら、それに越したことはないとエミリアは伝えた。
(先々も考えないとね)
フォードがもう少し成長したら、エミリアもフルタイムの仕事ができる。
息子に良い教育環境を整えようと思ったら、収入は必要なのだ。
そうこうしているうちに食事は終わり、ルルはうつらうつらし始めていた。
「……きゅう」
「おや、お腹いっぱいになったか。よしよしじゃ」
ガンツの目元が緩む。
ランチの時間が終わろうとしていた。
「後片付けはしておこう。これが配達の店の情報じゃ」
ガンツが試験の注意事項が書かれた紙の裏に、さらさらと書き込んだ。
その紙を渡されたエミリアは、紙を大切に折りたたむ。
「ありがとうございます……!」
「こちらこそ。諸々、よろしくたのむぞい。本格的には来年からじゃがな」
「はいっ!」
元気よく挨拶したエミリアは、ルルを回収して講堂をあとにした。
「では、失礼いたします」
「きゅーいー」
ほにほに。
ルルが気だるそうに羽を振る。
膨らんだルルはバッグにみっっちりとなっていた。
自らの毛を緩衝材と揺りかごにして、ルルはお昼寝へと突入しようとしている。
「んふふ……」
寝ているルルを撫でるのはエミリアの楽しみのひとつだった。
そっと、そっと。
「きゅ……♪」
ふかふか、満腹で嬉しそうにバッグの中で眠っていた。
そのまま起こさないように……。
エミリアはさらにふたつの試験の補佐を務め、本日の仕事は終わった。
明日は試験3日目。
いよいよエミリアが試験官を務める、ルーン消去の試験であった。
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