294.誕生日会②
まずケーキを切らなければ。
ということで、フォードから。
真新しいフォークをすすっとケーキに入れて……取り分ける。
でもフォードの取り分けた分のケーキはなんだか小さかった。
「きゅい?」
「……なんか崩しちゃいそうで」
純白のケーキはクリームの花で飾れている。
確かに切り分けるのは……綺麗にできなくて怖いかもしれない。
「きゅっ!」
ルルがロダンに羽を向ける。
「ん? 俺か……?」
「きゅーい」
「氷剣を使うのだから、カットもきっと上手い……! ですって」
騎士の剣とケーキカットを同列にしているルル。
フォードもルルの理屈に頷く。
「あー、なるほど。そうかも」
「きゅー……っ!」
フォードとルルがロダンに期待の眼差しを向ける。
そこでロダンがこそっとエミリアに耳打ちした。
「俺でいいのか」
「いいんじゃないかしら。それっぽくカットしてもらって……」
「それっぽくってなんだ……?」
「騎士っぽく」
ロダンがやや困りながらもテーブル上のナイフを手に取る。
ちょっとだけ構えが実戦の決闘ぽい。
「じゃあ、切らせてもらう」
「わーい!」
「きゅーい!」
ロダンが息を少なく、すっと右腕を動かした。
大仰ではなく、最小の腕の振りで。
力の入れ具合は完璧で、ケーキが綺麗にカットされていく。
(カットというより、これは解体のような……)
ロダンはサバイバル術にも堪能と聞いた。その技術の応用のような。
優雅なのも実用的なのも間違いないのだが……。
ロダンとは逆隣のセリスがこそっと呟く。
「野生動物の解体です……?」
「ま、まぁね……」
ウォリス育ちのセリスはエミリアと同じ印象を持ったようだ。
とはいえ、ケーキは美しく切り分けられていって……あっという間に手頃なカットサイズになった。
それぞれ色鮮やかなケーキをお皿へとよそって……。
「じゃあ、頂きましょうか」
「はーい!」
空と地の精霊に感謝を、と軽い祈りを捧げてケーキを見やる。
フォードとルルは同じひとつのお皿から食べるようだった。
「きゅきゅい」
「んふふ、ふわふわのケーキだね〜。お花も可愛い〜」
プレゼントのフォークでフォードがケーキからクリームの花をすくう。
エミリアも続いて……細かな細工の薄青の花をすくってみる。
ほのかなチョコの甘い香り。
職人芸的な花の作り。
(食べるのがもったいないくらい……っ!)
でも食べちゃう。
はむっとケーキと一緒に花を口に入れる。
「うわぁ〜、美味しいー……」
「きゅう〜……」
ほぼ同時にフォードとルルもケーキを食べて、頬を緩ませる。
クリームたっぷりだが、重すぎない。むしろ軽い。
クリームに適量の空気を含ませているからだ。
スポンジにも自然な砂糖の甘さが染み込んでいる。
もしかすると単調になるかもしれないケーキの味を、チョコの渋みと花の食感がまとめていた。
花の硬さは、クリームより少し硬め程度。口の温度で軽く噛むと溶ける。
じんわりとしたチョコの花……この形にも意味がある。
「きゅう〜……」
「んんー……」
幸せに浸っているフォードとルル。
そんな子どもを見ていると嬉しい……けれど、フォードの頬の下にクリームがついていた。
普段からすると珍しい。
「フォード、クリームが……」
「あうっ!?」
フォードの頬にルルがハンカチを添える。
そこでロダンの声がした。
「君もな」
「うん?」
ロダンからそっと唇の下をハンカチで拭われる。
一瞬、どきりとしてしまった。
どうやらケーキに気を取られて、クリームをくっつけたのはエミリアも同じだったらしい。
「うっ……ありがと」
「気にするな。この美味しいケーキの前じゃ仕方ない」
ロダンも上機嫌だった。
「あの国の本気のケーキがこんなに華麗で繊細な作りとはな……」
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