222.王都に戻って
翌日、エミリアたちは午前中ちょっと観光をして、午後に王都へと帰ってきた。
「ふぁー、楽しかったねぇー」
「きゅい!」
ルルは数日間の豪勢なご飯に心から満足しているようだった。
ちなみにお土産もギルドやセリス向けに結構買ったのだが……ルルの瞳は油断なくお土産に向いていた。
(ま、まぁ……家で食べる用もあるしね)
王都中央駅に到着して、そこからエミリアの家へ。
ほんの数日離れただけなので、何かが変わるというわけでもない。
しかし思い切り空気を吸い込むと、やはりアンドリアとは違う香りだ。
「では、俺はこれで」
「うん。送ってくれてありがとう」
銀行の前でロダンと別れることになる。
寂しさもあるが、仕方ない。
「今後のことが動き次第、すぐに連絡する。あとは……」
ロダンの目がエミリアの持つふたつのケースに注がれる。
ひとつはモーガンの杯、もうひとつは金銀宝石の入ったケースだ。
「わかってる。銀行に預けて、もうひとつも早急になんとかするわ」
「うむ……進展があったら教えてくれ」
ということで銀行前でロダンと別れると、エミリアは即座に財産分与分のケースを銀行に預けた。
とにもかくにも、家には置いておきたくない。
で、帰りながらぷらぷらと買い物をする。
買ったのは夜ご飯用のアレコレだ。
買い物を終えて自宅への帰り道を歩いていると、日常に戻ってきたのを実感する。
そしてアパートに戻ってきて、まっさきにしたのがセリスへお土産を渡すことであった。
「おかえりなさいです!」
「ただいま、これお土産ね」
「アンドリアの……おおっ、ゼリーですか。いいですね!」
セリスへのお土産はアンドリアの水をふんだんに使ったゼリーだ。
とはいえ砂糖、甘味ましましの果汁いれいれのゼリーで水にどこまで意味があるのか……水でどう変わるのかエミリアにはわからなかったが。
「きゅ」
ルルの瞳が鋭く光る。
ゼリーを食べたいらしい。
「ルルちゃん、食べます……?」
「きゅい!」
「じゃあ、一緒に食べませんか?」
うーん、セリスはやはりいい子だ。
とはいえこの展開を予想していなかったわけではないけれど……なので、夜ご飯はセリスと一緒に食べることにした。
「きゅっ、きゅい、きゅー」
ご飯を作っている間、ルルがテーブルの上で舞う。
それを横目で楽しみながらセリスと料理を進める。
「ははぁ、アンドリアのアンチョビ……」
「瓶詰めで買ったんだけど、どうかしらね」
こういうお土産の価値は、思い出も込みなもの。
だけども、このアンチョビははっきりわかるくらい濃厚な味わいだった。
これにガーリックとパスタ、貝柱、白身魚を絡めて……濃いめのアンチョビパスタを作る。
他にサラダ、ちょっとした貝の焼き物もつけてと。
「きゅーきゅーい」
最近、ルルはフォークの扱いを覚えた。フォークを使って、器用にパスタを絡め取る。
「きゅい!」
「アンチョビおいしいねー」
もっちゅもちゅ。
フォードが目を細めながら、パスタを楽しむ。
「ところで、アンドリアはどうでした?」
旅先から帰って、お土産を食べながら思い出話に花を咲かせる。
喋れないことも多いけれど……。
でも図書館や博物館の話はセリスも大好物のようだった。
「はぁー、学術都市というのは本当なんですねぇ」
「あとはお肉ね。ステーキなんかはすごく良かったわよ」
さすがにステーキのお土産はなかった。あったとしても買う勇気はなかっただろうけど。
「あー……私も余裕ができたら旅しようかなぁ」
「それがいいわよ。羽を伸ばせるわ」
「ですよね、ウォリスにいた頃は色々と制約がありましたし」
大公家のお嬢様なら、まず一人旅は不可能だろう。
側用人がいるのはありがたい反面、何事も制約される。
振る舞いがどうとか、やれ付き合いがどうとか。
イセルナーレに来て良かったことのひとつは、自由だ。
また機会があればアンドリアに行ってみたいな。エミリアは心からそう思った。
これにて第3部第4章終了です!
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