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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-3 向き合う時

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22.職場出勤

 ロダンの屋敷からホテルへ戻ると、フォードが眠そうに目をこする。

 お出かけと読書で疲れたのかもしれない。


(あの貴族街は丘の上で結構暑かったしね……)


 ウォリスと気温はそう変わらないが、日差しは強い。

 自覚しないうちに疲れてしまったのかも。

 

 エミリアがフォードの手を引き、ベッドへと案内する。


「お昼寝する、フォード?」

「うん、するー……」


 エミリアは口をもにゅもにゅさせるフォードをベッドへ寝かせる。

 フォードは枕に頭を横たえると、すぐ眠りに入った。


(ふぅ……んふふ、可愛い寝顔)


 寝入ったのを見届けると、エミリアはテーブルの上に書類を載せた。

 フォードのことが終わってもエミリアにはやるべきことがたくさんある。


 まずはロダンから渡された書類だ。

 その次はイセルナーレ魔術ギルドの書類を読もう。


 そろそろギルドにも顔を見せたい。

 フローラからも一度、フォードを連れてくるようにも言われている。


(仕事関係でフォードを知っている人は多くても損はないしね……)


 そのためにも色々と学んでいかなければ。

 頭に入れるべきことは多い。


 フォードの寝ている姿をちらりと確認し、エミリアが気合いを入れ直す。

 

「さて、頑張ろう……!」





 翌日、エミリアはフォードを連れてイセルナーレ魔術ギルドへと向かう。

 すでに一度通った道なので、迷うことはない。


 平日朝だけあって、人や物が多い。

 気をつけながらフォードの手を引いていく。


「ここがお母さんの働くところ?」

「そのつもりよ」

「変わった建物が多いかも~」


 確かにこの地区は市街地や商店街とは雰囲気が違う。

 古風で、黒や茶の目立たない建物もあるからだ。

 フォードの目線だとここは新鮮に映るのだろう。


 そしてフォードを連れていくのは顔合わせだけではない。


 多分、そろそろだとエミリアが思った頃。

 ふとフォードが顔を上げてエミリアを見つめる。

 

「うーん? ちょっと額のところが……ムズムズするかも」

「それは魔力ね。……気になる?」

「んぅ、これって魔力なの?」

「精霊とは違うけれど、これもそうよ」


 やはり、とエミリアは思った。


 一般的に魔力を感覚として捉えるようになるのは5歳前後とされる。

 この区画に漂う魔力は濃密で、精霊ともまた違う……フォードが気になるのも無理はない。

 

 最初、これに違和感を覚える子どもは多い。

 しかし、生きていくうえで魔力の感覚と付き合うことは避けられない。


 イセルナーレで生きていくのならなおさらだ。

 魔力の感覚を養うことは、どの系統であれ魔術師になる過程のひとつである。


(フォードにうまく伝わるといいけれど……)


「あなたの中にも魔力はあるの。そっちに集中すれば、気にならなくなってくるわ。フォードは本を読むの好きでしょう?」

「うん、好き」

「本を読む時みたいに集中するの。そうすればうまくいくわ」

「……! わかった!」

 

 フォードは大きく頷き、ぎゅっと目に力を込める。

 この対策法はエミリアが使っていたものだが、どうであろうか。


 ふたりはギルドの区画を進む。

 フォードは集中しているようだ――イセルナーレ魔術ギルドの前に来たところで、エミリアが彼の顔を覗き込む。


「……どう?」

「うん、気にならなくなってきたかも……!」


 フォードの答えにエミリアは安堵の息を漏らす。

 最初でこれなら、慣れていけば全然問題なくなるだろう。

 

(……精霊を見つけた時にも思ったけど、この方面は大丈夫そうね)


 ギルドを訪れるとすぐにフローラがやってきた。

 どうやら待っていてくれたようだ。


「お世話になります、フローラさん」

「こちらこそ、エミリア。その子がそうね――?」


 赤毛を揺らすフローラが屈み、フォードに自己紹介をする。


「はじめまして、フォード君でいいのかな? わたくしはフローラ、よろしくね」

「フローラさん、はじめまして! 僕はフォード、よろしくお願いしますっ!」


 ぐっと勢い良く頭を下げるフォード。

 それにフローラが微笑む。


「とても礼儀正しい子ね。さぁ、奥へと案内するわ」


 フローラを先頭に、エミリアとフォードは工房へ歩いていく。


(おおっ……!!)


 工房に到着すると先日とはまるで雰囲気が違った。

 熱気にあふれ、ルーンがミスリルに刻まれる音がひっきりなしに響く。


 集中しなくても魔力の濃密さがわかる。

 例えるなら、太陽に照らされた砂浜だろうか。 


 フォードは……大丈夫そうだ。不快そうな顔はしていない。


 これぞまさに仕事場。

 仕事に集中する現場に来て、エミリアの胸も高鳴ってくる。


「んぉ、来たか……!」


 グロッサムは工房に入ってきた3人を認めると、のっそりと歩いてきた。


「お世話になります、グロッサムさん」


 彼にもフォードを紹介し終えると、やおらグロッサムが白い顎髭を撫でる。

 ……そのままグロッサムは視線を何やらさまよわせ――。


 やがてグロッサムが気まずそうに、エミリアに工房の隅を指差した。

 

「エミリア、あんたに頼みたい仕事が山ほどあるんだ」

【お願い】

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