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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-4 距離を縮めて

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218/285

218.杯とセリド公爵家

 地下大河での体験、そして精霊魔術師との対決で使ったこと――など。


「なるほどな、君の魔力が膨れ上がったのはそれが原因か」


 ロダンは腕を組んで、エミリアを見つめていた。

 

(怒ってる〜……)


 モーガンの杯などという得体のしれないモノを使ったのだから、当然か。


 しかしそれで助かったのも事実なので、ロダンは言葉を選んでいるようだ。


「……だが、無理をさせたのは俺だ」

「えっ?」

「巨大精霊と真正面から戦うなど、そうそうあるものじゃない。多少の被害は出ようと時間切れを待つべきだった。君に使わせるような状況を招いたのは俺だ」

「い、いやぁ〜……いいの! 私が私の判断でやったことだし!」


 エミリアはすでに捕まったひとりがソルミだと聞いている。


 正直、馬鹿すぎるだろとは思うが。


 だとすると昨日の事件そのものがエミリア絡みというわけで……。

 ロダンを立ち向かわせたのはエミリアにも原因がある。


「身体は大丈夫なんだな?」

「う、うん。一晩寝たらすっきりした」


 これは本当だった。

 昨夜、美味しいものを飲み食いして気持ちよくすやぁーと寝て。

 ロダンとそこそこ遊んだら完全に元気になったのだ。


「ならいいが……」


 そこでロダンが杯の入ったケースに目を向ける。


「問題は君の実家にあるという、オリジナルの杯だな」

「……ええ」

「今もオリジナルは君の実家にあるという理解でいいんだな」


 エミリアが頷く。 

 両親が死んだ後、セリド公爵家は兄が継いだ。


 あの杯は特定の儀式にしか使われなかったし、恐らく管理しているのは当主夫婦だけだ。


「シャレス殿に話せば、多分破壊するための算段を立てるだろうが……」

「でしょうね」


 シャレスはモーガンの遺産を破壊することに生涯を費やしている。


 この話を聞いて踏み止まるとは思えない。


「君はそれで構わないのか?」

「……私は」


 セリド公爵家は今から思うと、とんでもない家だった。


 虐待そのものの魔術修行と洗脳的な伝統。今ならそのおかしさがわかるけれど。


 亡くなった両親にも親近感や情愛はほとんどない。


『セリド公爵家は器に過ぎない。受け継ぐべきものを受け継ぐためだけに存在する』


 そんな親と仲良くできるだろうか?


 しかし一方で今のエミリアも理解している――両親もまた、セリド公爵家に呪われていた。


 セリド公爵家の直系当主の結婚相手はごく近い親戚のみだった。

 エミリアの記憶する初代から兄まで当主は30人を超えるが、例外はない。

 かなり近い血縁だけでまとまっている。


 このようなやり方は実際、ウォリスでも非常に珍しい。

 同じ公爵の他にも大公や王族侯爵との結婚も断っているのだから。


(それは恐らく……純粋性と秘密を守るため)


 両親も兄も呪縛に囚われてるのは間違いない。

 エミリアだけがふとしたきっかけで前世の記憶を思い出し、影響を低下させることができただけだ。


「私はもうセリド公爵家から出た身。しかも今回の件でウォリスには戻れないでしょうね」

「容易ではないだろうな」

「でもシャレス殿の力添えがあれば、可能じゃないかしら。彼が後ろ盾になるのなら、終わらせたい」


 モーガンの杯のオリジナルがなぜ、エミリアの実家にあるのか。

 あの儀式の本当の意味は何なのか。


 知るべきだとは思わない。

 エミリアにはもう新しい生活がある。見て見ぬ振りもできる。


 だが、終わらせられるのはエミリアだけだ。

 

(私が前世のことを思い出して、その意味を考えていたけれど。もしかしたら――)


 世界を脅かす魔術を塵に。

 そのためだと感じるようになってきた。


「わかった。シャレス殿には俺から伝えよう」

「ありがとう」

「だが、そうなると問題がひとつある」

「……そうね」


 兄とその妻。

 それにセリド公爵家に近しい者。


 その誰もが卓越した魔術師だ。


 エミリアの境地に達した魔術師はひとりもいないが、ひとりで立ち向かうには強大すぎる。


「俺は君の結婚式でセリド公爵家の面々に会った。その感触で言えば――」


 ロダンが端的に事実を述べた。


「君が5人いてもセリド公爵家には勝てない。強硬手段は相当の覚悟が必要になる」

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― 新着の感想 ―
きっとルルが、私はあと○かい変身を残している!とか、私の精霊力うんマンですとか言うかも。そして期待したら回が貝で食欲パワーとか(笑)
血統の純粋性を維持するために遺伝子の多様性を放棄、結果として疾患リスク上昇による短命となってるのはあれな家系とふと思ったり。
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