表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-3 モーガンの杯

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

207/285

207.制御の奪い合い

 ロダンが呼びかけをしても、魔力の拍動は止まらない。

 目の前のふたりはロダンを無視するつもりだ。


 ロダンが氷の剣を構えながら、突進する。

 見立てではふたりのうち、手前のひとりは魔術師として大したことはない。


 問題は後ろの精霊魔術師だ。

 魔力こそロダンより少ないが、恐らく精霊魔術師としてのレベルは相当なところに達している。


 精霊魔術師の魔力の波動が一気に荒く、膨れ上がる。


 これまではさざ波のごとく、他者に気付かれないよう制御していた魔力が――暴れ出そうとしていた。


「……!」


 精霊魔術の利点は隠密性と遠隔性。

 ゆえに精霊魔術師を仕留めるのは簡単ではない。

 

 だが、こうした技術を捨て去る利点が精霊魔術にはある。


 より多くの魔力と意識を傾けることで精霊の制御は強固になるのだから。


「んっ」


 シーズの強化された命令はただちにビーバーの精霊に届く。


「くっ……!」


 エミリアが街中で弾ける魔力の先を見つめる。

 相手の精霊魔術師は隠密性を捨てて、ロダンを迎え撃つつもりだ。


 荒っぽくとは聞いていたが……精霊と戦えば、ロダンも無事では済まない。


「させないっ」


 エミリアも残りの魔力を放ち、ビーバーの精霊に干渉しようとする。


 市外へ誘導できなくなるが、やむを得ない。優先順位の問題だ。


 相手方の干渉は激しさを増す。

 それは想像以上の技量であった。


 ビーバーの目が相手方の魔力の色――青に染まっていく。


 だが、エミリアもウォリス最高の精霊魔術師。


 即座にビーバーから相手の魔力を追い出そうとして……愕然と計算間違いに気付く。


「ふたりいるの!?」


 ひとりはこれまでメインでビーバーに干渉してきた精霊魔術師。

 間違いなく、かなりの腕前だ。


 もうひとつ、初見の魔力が精霊との綱引きに加わった。


 理論上、精霊に三人以上の魔力で干渉することは可能であるが……そのような状況は多くない。


 よほど連携が取れていないと魔力が混じり合うだけで、精霊を制御下に置けないからだ。


(でもこのもうひとりは……! 違う、サポートに専念してる……っ)


 繊細に調整したエミリアの魔力は、確かに元の精霊魔術師の魔力を圧していた。


 だが、今加わったもうひとつの魔力は――徹底してもうひとつの魔力を守ろうとしていた。


「ぐっ、くっ……!」


 精霊魔術師でここまでの連携を見せるだなんて。


 ウォリスで学んでも、こう上手くはいかない。


「お母さん、大丈夫!?」

「……!」


 エミリアの意識がビーバーの精霊から急速に引き剥がされるのを感じる。


 2対1、しかも魔力を失った状態で――。


 ビーバーの魔力が一色に染め上げられ、制御下に置かれる。


 その変化はビーバーの頭にくっついているルルにも感じられた。


「んっ……」

「きゅ?」

「んんーーー!!」


 ビーバーが絶叫して、跳躍した。


 鈍重でまさか飛ぶとは思っていなかったビーバーに、フォードが驚く。


「飛んだー?!」

「きゅー!!」


 今、ビーバーの制御権は完全に相手へと渡ってしまった。


 精霊に魔力を注げば、何倍もの力になる。


 ビーバーはルルを連れて空を飛んで、シーズの元へ着地した。


 大地を揺らし、ビーバーがロダンを見下ろす。


 全長5メートルにもなる巨体と筋肉、青く光る瞳がロダンを敵として睨んでいた。

 

(ごめん、ロダン……っ)


 ルルの精霊魔術もビーバーへ接続しようとしたことで立ち消えてしまった。


 対するロダンは冷静なまま、己と精霊術師の間に立ち塞がるビーバーの精霊を見つめる。


 ロダンが息を吐いて剣を振るう。

 長期戦は絶対的に不利。短期戦でロダンは勝つつもりでいた。


 通りから温度が消え去り、凍える魔力が秋の大気を塗り潰していく。


「問題ない。イセルナーレの騒乱を鎮めるのが騎士の役目だ」


 ぺたりと座り込むエミリアに残された手は多くない。

 魔力が圧倒的に足りないのだ。


 フォードが座り込むエミリアの袖を掴む。


「だ、大丈夫だよね?」

「……ええ」


 そのエミリアの足元にはケースが転がり、杯の魔力が明滅する。


 呼んでいる。

 ――『彼女』がエミリアを見て、呼んでいた。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ