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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-3 モーガンの杯

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202/295

202.精霊の起こす事件

 3時過ぎになり、エミリアたちは満腹になって釣り堀を出た。


「はぁー、食べたわねー」

「美味しかったぁ」

「きゅいー」


 ルルはフォードのバッグの中でうつらうつらし始めている。


「フォード、私がルルを連れて行こうか?」

「ううん、大丈夫だよ!」


 ルルを運ぶのは自分と、フォードは強く心に決めている。

 それはそれで尊重せねば……とエミリアは異変に気が付いた。


 さっき来る時は混んでいた鉄橋から人が不思議にいなくなっていた。


「あれ? こんなに人、少なかったかな」

「うーん?」


 通りの人の流れが変わっているのか。

 それに大気から――エミリアは強い魔力を感じ取った。


「……これは」

「精霊っぽいっ!」


 フォードが目を輝かせ、エミリアの手をぎゅっと握る。


「これって精霊さんだ! 精霊さんが近くにいるよ!」


 その言葉の意味をエミリアは瞬時に考える。


 アンドリアには精霊避けの結界があるはず。

 フォードが感知できるほど近くに精霊が近寄るなんて……普通ではない。


 もちろんフォードにはそこら辺はわからず、無邪気に言っているだけだろう。


「避難してくださーい。川から離れて、避難してくださーい」


 通りの向こうから人に呼ばわる声が聞こえてくる。


(やっぱり何かが起きてるっ……!)


 エミリアの感知力をもってしても、どこで何が起きているかまではわからない。


 しかしフォードには精霊に対する強い感受性があった。

 エミリアが動揺を隠しながら、フォードに問う。


「ねぇ、フォード……精霊さんって言ったわよね?」

「うん! 精霊さんが近くにいるよー!」


 フォードはかなりの確信を持っているようだ。


 精霊のサイズと放つ魔力は比例する。大気から感じる魔力からすると、相当なサイズに思われた。


 もし本当に巨大精霊が街中まで来ているなら、大騒動だ。


「どこにいるのかって、わかるかしら?」

「そうだねー」


 フォードが橋の上から周囲を見渡して、鉄橋の柵に顔をくっつける。


「川のあっち側だと思うよ」


 フォードが指差したのは川の上流、北側だ。


「……川にいるの?」

「うん。泳いでるんじゃないかな」


 なるほど、だから川から離れて……と避難勧告があったのか。


(……どうしよう)


 このまま勧告に従って、避難するか。それとも精霊の元に向かうか。


 午前中のルーン消去から、エミリアの魔力は回復しきっていない。

 行っても何もできず、無駄足の可能性はある。


「でも――」


 前世を思い出すまで、エミリアは積極的に何かを選ぶことがなかった。


 親に言われるまま、慣習に流されるまま。


 まして今はロダンもいない。

 でも、違うのだ。


 もし精霊が暴れているのなら、何とかできる人間は限られる。


 エミリアは精霊を何とかできる、数少ない人間のはずだ。


「行かなくちゃ」


 鉄橋から川沿いに向かっていける。


 封鎖は通りが主で、川沿いはまだ何もされていないようだ。


 エミリアはフォードの手を握った。

 

「フォード、ついてきてくれる?」

「精霊に会いにいくの!?」

「……ええ、行きましょう!」


 



 ロダンはその頃、野外に設置された巨大精霊の対策本部に招かれていた。


 高級警察官僚も含め、ロダンは最敬礼で歓迎を受ける。


 軍や警察の高級官僚でロダンを知らない者はいない。


 普段は鬱陶しく感じる自身の知名度も、今ばかりは役に立っているとロダンは思わざるを得なかった。


「まさか、王都守護騎士団のカーリック伯爵がちょうどおられたとは……」

「偶然というやつだ。状況は?」

「ビーバー態の精霊が川を南下しております。サイズは列車の小型車両分……巨大です」


 警察署長の顔はこわばり、恐怖していた。

 無理もない。そのようなサイズの精霊が街中に現れるのは想定外だ。


 地図を前に、慌ただしく状況が示される。


 都市部の精霊にまつわる事件こそ、王都守護騎士団の本職でもあった。


「北部のここからここまでを封鎖し、避難を。精霊避けの結界は?」

「……正常に作動しているはずです。結界関連の報告はまだありません」

「二次的に精霊が増えれば手がつけられなくなる。再度、結界の状況を再確認してくれ」

「ははっ!」


 精霊が来た距離、サイズ。

 これが精霊魔術師の手による事件なら、犯人は相当の使い手だ。


  大人数を動員して犯人を刺激すると、精霊を暴れさせるかもしれない。


 人数を動員するのが正解なのか、目的は何なのか。


(一通りの指示を出したら……現場に向かうしかないな)

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― 新着の感想 ―
ビーバーさん、操られたんじゃなくルルに会おうとしてるだけな気がする。 ちょいちょいと街を意識させられて、ルルに気付いて会いたくなったんだ。 あの癇癪夫人にビーバーくんが操られるはずがない。
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