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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-3 モーガンの杯

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189/299

189.模造品

 張り詰める魔力の器。

 銀の杯。


 エミリアの意識は一瞬にして、闇の中の夢に落ちていった。


 しかしそこまで恐ろしくはない――やはり何かが違う。


 気が付くとエミリアは夜の闇に囲まれた、盆地に立っていた。


『……ここは』


 夜空には月と星が不自然なほどに輝く。その下には無数の山が連なっている。


 どこか、エミリアは周囲の山々に懐かしさを感じた。


『ウォリスの山……?』


 エミリアの生まれ故郷であるウォリスにはこのような盆地がたくさんある。


 決めつけるのは早計だが、エミリアは既視感をぬぐえなかった。


『あっ……』


 闇の淵に、ぼんやりと女性が背を向けて立っていた。

 夜に溶けるような長い黒髪と同じく隙のない長袖の服。


『モーガン……』


 エミリアは冷静に思考を巡らせる。

 そう、これまでのような息が詰まるような圧力や背筋が凍る恐ろしさはなかった。


 まるで、全てが。

 作り物の……紙に描かれたように実在感がない。


 目の前の女性にも――刺すような憎悪や執念、これまでに感じられた魂のようなモノはないように思われた。


『血を注ぎいれよ』


 彼女が誰かに、エミリアではない誰かに言っている。

 ひび割れた耳障りな声で。


 誰に向かって、言っているのか。


 見るとモーガンの前に……小さな影が立っている。

 影が頷いた気がした。


『……子ども?』


 性別はわからない。だが、今の動きからモーガンの半分程度の背丈ではないだろうか。


『血はそなたを強くする。蝕み、呪い、力を与える!』


 モーガンが叫び、懐からナイフを取り出す。


 見ていられなかった。

 これは作り物だ。モーガンの何かをマネただけの、いびつな何かでしかない。


 ――少なくとも彼女自身の作品ではない。エミリアの魂に響くものが何もないのだ。


 エミリアは腕を前に突き出した。


『もう、終わりにしよう……!』


 意識を傾けて、集中する。

 今、エミリアの手にはあの杯そのものがあるはず。


 この夢は虚構に過ぎない。

 幻の舞台から意識を切り離し、指先に意識を向ける……。


 そばに白く舞う雪の気配がある。

 ロダンがエミリアに今も寄り添っていた。

 

 指先に感覚が戻ってくる。

 金属の杯をエミリアは握っていた。


 実体のある杯だ。

 そう、この杯だけが真実。


 他の情景は幻……。

 モーガンが握ったナイフを子どもに突きつけるのが見えた。


 杯には微細なルーンの文字が描かれ、目もくらむような光を放っている。


 この光を消しさえすれば。

 どうあれ全てが終わる。


 そこでエミリアは息を呑んだ。

 光が満ちる中で、自分の魔力が外に出ていく。


『……え?』


 気が付くとエミリアは馴染みのある屋敷にいた。


 古ぼけた壁。

 本、むせかえるほどの本。


 厳格で、冷酷そうな歴代当主――黒髪の当主の肖像画が並ぶ。


 瞬時に思考が回転し、自分がどこにいるかを把握する。


『ここは私の……!?』


 エミリアが今、いるのはセリド家の屋敷だった。

 それも多分、歴代当主しか立ち入らない奥の間だ。


『なんで……?』


 指先から杯の感覚が消えている。

 上手く行ったと思ったのだが、なぜだかエミリアの意識は別の場所に飛んでいた。


『エミリア』


 声がして振り返ると、生気のないふたつの顔がエミリアを見つめていた。


 黒髪の夫婦――忘れるはずがない。

 エミリアの両親だ。


 すでに何年も前に死んだはずの両親が、エミリアの後ろに立っていた。


 飛びのいたエミリアが見ると……両親はふたりで杯を持っていた。


『時間だ』

『……父上、母上?』


 杯は真紅の液体で満たされている。

 揺らめき、不快な鉄の匂いが鼻をつく。


 そこでエミリアはどこであの杯を見たのか、やっと思い出した。


『飲みなさい』


 エミリアは確かに、見ていた。

 あの杯はエミリアの実家に、確かに置かれていたのだ。

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― 新着の感想 ―
え… まさか、エミリアさん人造の魔王? モーガンの子孫? 他人事が自分事にーーー!! これはホラーなのかサスペンスなのか… 続きを待ちます!
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