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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

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184/300

184.飲んだあとの朝

 エミリアは下着に薄い肌着を被り、ロダンも薄めの肌着で寝ていた。


 まぁ、それだけだった。

 エミリアはこんなことでいきなり叫び出すほど乙女ではなかった。

 

 見たところ、抱きついて寝ていた以上のことは何もないわけで。


「ううん……」


 ロダンが唸り、ぱちっと目を覚ました。彼の深く青い瞳がエミリアを見つめる。


 対してエミリアはいつもは厚めの服に隠された、ロダンのたくましい肉体(まだ肌着の下ではあるが)をちらちらと見ていた。


「…………」


 少しの沈黙の後、エミリアはそっと口を開いた。


「お、おはよう……」


 ロダンが目だけで周囲を探る。

 数秒で彼はなんとなく状況を察したようだった。


「おはよう」

「う、うん……」

「……昨夜は飲みすぎたな」


 ロダンが言って、そっと半身を起こす。エミリアもそれには完全に同意だった。


「調子乗りすぎたわね」

「ああ……騎士団の会合ではこんなことにはならないんだが」

「……そうなの?」

「君と俺ほど飲める人間がいない」


 エミリアは普段、飲むほうではないが限界まで飲んでいいなら……死ぬほど飲める。

 しかも二日酔いにもならない。

 

 ロダンも普段から飲むわけではないが、めちゃくちゃ飲める。


 そのふたりが揃ってこんなことになるとは……。


「昨夜のことは覚えてる?」

「フォード君がうとうとしていたところまではよく覚えている」


 フォードとルルがねむねむモードに入り、エミリアとロダンはさらにペースを上げてしまったのだ。


 あの高級ワインを本当に空けて、さらに……ちょっと追加もした気がする。

 覚えてないのは、きっとすぐ飲める酒を適当に頼んだからに違いない。


 振り返るうちに段々と昨夜の記憶が蘇ってくる。


(えーと、それで最高の気分で終わって……)


 足元はしっかり、フォードとルルも連れてエミリアは部屋に戻ってきた。

 化粧を落として……暑かったのだ。


 で、そのまま上を脱いでベッドに入り込んだ。

 

(なんでロダンも同じ部屋で……?)


 わからぬ。これで昨夜の流れは合っているはずだが、細部が思い出せない。

 きっとノリで同じ部屋のベッドに倒れ込んだだけだ、うん。


「まぁ、いっか……覚えてないものはもうしょうがないし」

「うむ……二日酔いは?」

「してない。ロダンは?」

「痛くはないが水分が欲しい」


 それを聞いたエミリアはまぁまぁあられもない姿でベッドから起き上がった。


(ロダンの片腕にはまだフォードとルルがくっついているもんね)


「ルル、ふにふにー……」

「きゅうん……」


 幸せそうなふたりを撫で、エミリアはそのままふたつのコップに水を入れて持ってくる。


「はい」

「ありがとう」


 ベッドに腰掛けたエミリアがロダンへとコップを渡す。


 もうひとつは自分用。ごくりと水を飲む……きちんと冷たくて、美味しい。


 川の性質だろうか。

 まろやかで味の深みを感じられる。


 冷水がすーっと身体に入り込むと思考力が普段の水準に戻ってくる。

 やはりまだちゃんとスイッチは入っていなかったみたいだった。


「はぁー……」

 

 エミリアはまだ肌着のままだった。


 ここでロダンから君に恥じらいはないのか、などと言われたら逆に怒るところだ。

 

 エミリアは人前に出る時は面倒でも絶対に化粧をする。服装や装飾品だって適当に決めたことはない。


 公爵令嬢として生まれ育ったエミリアは決して隙を見せないのだ。


 ロダンもエミリアのことはよくわかっている。だから何も言わない。

 

 そんな浅い関係じゃない。それに今はイレギュラー中のイレギュラーなのだ。


 ぐっとさらに水を飲み、部屋の時計を確認する。

 9時をちょっと回ったところだ。


「……今日は11時からよね?」

「ああ、シャレス殿が来られるかどうか、今日の10時にわかるはず」


 ギリギリすぎるが、イセルナーレは世界トップクラスの大国である。

 その外務大臣なのだから仕方ない。


 ロダンがコップの水を飲み切ると、フォードとルルがもぞもぞと起きてきた。

 それを確認したロダンがベッドからすっと離れる。

 部屋に戻る気なのだろう。


「じゃあ、10時半に。世話をかけたな」

「いえいえ」


 そこでエミリアはふっと悪戯心が出てしまった。

 普段なら絶対に聞かないことなのだが。


 ベッドのそばに立つロダンにエミリアは微笑んだ。


「ところで私について、感想はなにも無いの?」


 どういう答えでも良かった。

 ただ、昨日の今日で聞いてみただけ。


 ロダンがふっとエミリアの肩に手を置いて、顔を近寄らせる。


「いつも通り、君は綺麗だ。初めて会った時から、変わりなくな」

「……っ!」


 馬鹿みたいに真面目な口振りで。

 一瞬、頬が熱くなる。


 嬉しい言葉だが、そーいう答えを期待していたわけではない。

 エミリアが唇を曲げると、ロダンはエミリアの肩から手を離してふっと笑う。


「俺で遊ぶには、まだ遊び心が足りないな」


 それだけ言い残し、ロダンは自分の部屋へと戻っていった。

これにて第3部第2章終了です!

お読みいただき、ありがとうございました!!


もしここまでで「面白かった!」と思ってくれた方は、どうかポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて頂けないでしょうか……!


皆様の応援は今後の更新の励みになります!!!


何卒、よろしくお願いいたします!

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― 新着の感想 ―
今回はロダンに軍配。ロダンが余裕無くして狼狽えるところを是非見てみたい…
( ̄▽ ̄;)だからもー、はよ、くっつけ♪
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