表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

182/298

182.焼き仲間

 数か月前、オルドン公爵家でノイローゼ気味だったエミリアではこんなに飲んで食べては不可能だったろう。


 エミリアはフォードの見たことのないようなペースで食べていた。

 母の豪快な食べっぷりを見て、フォードが声を弾ませる。


「お母さん、すっごい食べるね……! もっと焼いても大丈夫かな……?」


 ルルがトングを振るい、ぷりぷりのホタテをひっくり返す。

 その瞳は卓を囲む全ての人を満足させるという決意に満ちていた。


「きゅ……!!」

「焼くほうも負けてられない? そういうものなんだ……」


 当然ながら四歳のフォードは料理を知らない。

 フォードはトングを握ったことさえなかった。今だって、ルルはトングを握らせてくれそうにない。


 だが、ぼんやりと世の中には焼肉奉行なる人がいるのだとフォードは学ぶ。


 そうしてフォードは新しく来たマンゴージュースを飲みながら、焼き上がった野菜を食べていく。


 マンゴージュースの鮮烈な甘みがキャベツのシャキシャキ感、オニオンの辛味と不思議に調和する。


 炭の香ばしさがプラスされ、同じ野菜でも家で焼くのとは全然違う味わいだ。

 

「焼くのが楽しいの?」

「……きゅー」


 ルルが首を振る。

 

「きゅっ!」


 もっともっと深遠かつ偉大なもののために、焼くのです。


 ルルが焼けたホタテを取り皿にすすっと移す。

 話しながらもルルの目と羽は抜群に動き、焼き加減を誤ることがない。


「ふぅーん……」


 一方、ホタテをフォークでよそうフォードは全然わからない。

 

「えーと、ホタテにつけるソースは……」

「わさび醤油よ」


 すでに3杯目のビールを流し込んだエミリアが力強く頷いた。


「……信じて」

「う、うん……?」


 なぜそんなにわさび醤油を勧めるのかわからない。が、ちょんちょんとわさび醤油をまぶしたホタテをフォードはルルのくちばしへと運ぶ。


「きゅー!」

「美味しい?」

「きゅっ!」


 ルルが頬を動かしながら、次の焼けたホタテをよそう。


 そしてエビ……殻のついているモノは見極めが難しい。

 だが、ルルの精神はホタテによってさらなる領域に突入している。


「……きゅ」

 

 きゅぴーんと目の光ったルルが絶妙のタイミングでエビを裏返す。

 ついでに焼きが甘そうなところはトングで軽く押さえて、と……。


「おおー……こんがり〜」

「きゅ」


 ルルはテーブルのそばにいる、ピシっとスーツを着たウェイターを羽で招く。

 フロアにいる中で唯一、白髪のダンディなウェイターだった。


「うん? あの人に何か用?」

「きゅきゅい」


 ウェイターが招かれ、お辞儀しながらルルに向き合う。


「お伺いいたします」


 ウェイターの動作のひとつひとつには気品と風格があった。間違いなくそれなりの立場の従業員だ。


(……うん?)


 エミリアはルルに呼ばれたウェイターの名札に「フロア支配人」と書かれているのを見た。


 このような高級ホテルではフロアごとの責任者がいるのは当たり前だが、なぜルルに呼ばれるような位置にいたのだろうか。


 もっと中央とか、キッチンにいるものでは……?


「きゅい」

「えーと……焼き方を学びたいなら、もっと近くでどうぞ。だって」


 その言葉を聞いたウェイター、もといフロア支配人が深く深く頭を下げる。


「これは……なんと、見抜かれておりましたか」

「きゅ」

「焼き方を学ぶのに立場は関係ない。どうぞ、見ていって……だって」


 そこまで訳してからフォードはエミリアを見た。


 エミリアはふたりのやり取りをアルコールの回り始めた頭で考える。


「えーと、つまり……ルルの焼き方があまりに見事だから、この方がそれとなく観察していたということかしら……?」

「お恥ずかしながら……。お邪魔にならない位置であったと思いましたが、浅はかでしたようで」


 エミリアがロダンに小さく尋ねる。


「……気づいた?」

「いいや」


 エミリアもロダンも全然気づいていなかった。ルルだけが「焼き仲間」として察知したのだ。


 そしてルルは焼き仲間に対し、もっと堂々と見ていってよ。と言っているようだった。

【お願い】

お読みいただき、ありがとうございます!!


「面白かった!」「続きが気になる!」と思ってくれた方は、

『ブックマーク』やポイントの☆☆☆☆☆を★★★★★に変えて応援していただければ、とても嬉しく思います!


皆様のブックマークと評価はモチベーションと今後の更新の励みになります!!!

何卒、よろしくお願いいたします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
>もっともっと深遠かつ偉大なもののために、焼くのです。 もっともっと深遠かつ偉大なものって何だろう? ルルさんは既に焼肉奉行から焼肉将軍にクラスチェンジしたようですね。
朝起きて抱きしめたら焼き肉の臭いな、羽毛になってそうやなあ(笑)
何してんすかフロア支配人!( ´∀`)ww 精霊、人にグリルの技を伝授するの巻。ルル編。 フレスコ画で残さないと!(エミリア、フォード、ロダンはモブに成りました)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ