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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-2 新たなる仕事

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168/299

168.巨大精霊

 同じ車両にいた上流階級のカップルも同時に車両から出る。

 背の高い男性が扉に手をかけながら、同伴する女性を振り返った。


「また精霊かぁ」

「しょうがないわよ、アンドリアは精霊が多いし」

「ちょっと見てみるかー」


 ウォリスでも精霊の目撃例が多い地域はあった。

 人懐っこい精霊がいるかどうか、という点に左右されるが。


 カップルの次にエミリアたちは車両を出る。

 離れないよう、エミリアはしっかりフォードと手を繋いでいた。


「どこにいるかなぁー?」


 フォードがにこにこしながら周囲を見渡す。

 多分、列車の前のほうにいるはず……。


「……あっ!」


 1両目のすぐ前に精霊はいた。

 軽自動車と同じサイズの巨大な精霊ががっつり線路を塞いでいる。


「ふきゅ」


 ふとましい巨大ペンギンが線路で腹這いになっているのは、まぁ……前もそんなことがあったような。

 というより、同じ精霊ではないかという気がした。


 さらにそれだけではない。

 巨大ペンギンの前に、また別の巨大精霊がいた。


「んー」


 縮れた茶色の毛にずんぐりと短い手足。

 でっぱった歯、愛嬌のある顔。


 記憶から引っ張り出さなくてもすぐわかる。


「……これはどう見ても」


 ビーバーだった。

 可愛い。


 ちょっと大きすぎるかもだが……。

 ビーバーの鳴き声って意外と低音だった。


「きゅ」

「んうー」

「きゅう」

「んっんー」


 ペンギンとビーバーの精霊は何やら話をしているようだ。

 そう、2体の巨大精霊があろうことか――列車を止めて世間話をしていた。


 それを列車だけでなく鉄道沿いの家からも人が出て、混雑しながら見守っている。

 もう精霊の周りには数百人が集まっていた。


「もうちょっと前に……っ」


 フォードに手を引かれ、エミリアとロダンは人混みを前に進む。


 エミリアがそっと様子を窺うと、手を合わせて拝んでいる人もちょこちょこいる。


 そのような感性はウォリスでは珍しい。

 やはり精霊に対して地域性というのはあるのだな、とエミリアも再認識する。


 やがて最前列に来ると、フォードが嬉しそうに背中のバッグにいるルルへ話しかけた。


「すごーい! 精霊がお話してるー!!」

「きゅーいー」

「精霊がお話してるのは珍しい? そうなんだ??」


 フォードは人の輪から前に出ようとうずうずしている。

 しかし土地勘のないところでフォードから手を離すわけにはいかない。


 ぐっぐっと力を入れてエミリアはフォードの力を制する。

 ロダンもそっとフォードの行く手を遮るような動きをしていた。


「……ふむ、精霊が複数いるとは珍しい」

「そうなのー?」

「精霊は孤高の存在だからな」

「きゅい」


 ぷにっとルルがフォードの背負うバッグから頷く。

 ……遠目では完全にぬいぐるみだけれど。


 巨大精霊の世間話は続いている。


「ふきゅ」

「んっんー」


 精霊が群れるのは確かに珍しい現象だ。


 例えば牛やヤギのように群れる動物が元になっていても、精霊は決して群れない。


(貴族学院でも実家でも、その辺りの見解は同じだったけど……)


 この精霊たちもばったり会って、そこから話しているだけなのだとは思うが。


「でもこれだと列車が動くには時間がかかりそうね……」


 エミリアは呟きながら意識を精霊たちに向ける。

 精霊魔術を使い、ちょっとだけ線路からどいてもらおう。


 見た限り、この場に他の魔術師はいないようだし。

 バレる心配もない。


 と、思った矢先――。


「きゅい!」


 ルルが勢い良く叫んだ。

 巨大精霊たちがルルの声を聞き、振り向く。


「きゅーい」

「ふにゅきゅ」


 ルルがぴこぴこと羽を線路の外に向ける。

 その仕草を受けて、ずりずりと精霊ペンギンが線路の外に移動した。


 精霊ビーバーもルルの仕草に頷き返す。


「んぅ」

 

 精霊ビーバーもとことこと線路の外に移動する。

 手足が胴体に対して本当に短い……。


 そうして列車の邪魔にならない位置に移動し終わると、巨大精霊たちはまた井戸端会議を始めた。


「ふっきゅ」

「んー」


 これは……とエミリアがルルとフォードを見る。

 ルルがぽいんと胸を張っていた。


「……きゅ」

「ちょっとズレて欲しいって、ルルが言ったみたい」


 フォードの説明にエミリアとロダンが顔を見合わせる。


 言うことを聞かせるなんて、そのような意思疎通を精霊はしない。


 エミリアもロダンも、ルルの今した行動を聞いたことがなかった。

ビーバー、とても可愛いですよね。

鳴き声は低く、唸るような感じです。


残念ながら一般家庭でのビーバーの飼育は不可能です。

私も動物園で見て、癒されています……。


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― 新着の感想 ―
今回の2体を含め、〈他者とお話しする精霊〉と言うのが、異例な存在の様な気がします。 ましてや、ルルのように精霊魔法使いではない人間とも気軽にコミュニケーション出来る精霊が多いなら、もう少しは楽でしょう…
ビーバーさんはその可愛さの見目に反して 可愛くないサイズの大きなダム湖を作っちゃうから この精霊が本能のままダム湖作っちゃたらどうしよう
線路で転がってたらビーバーが話しかけてきてそう。 精霊がどうしてもすみっ○ぐらしみたいな生き物に見えてしまいます。
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