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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
3-1 秋の日々

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146.ふたりの問題児

 金属板を受け取った学生はアレコレと頭を悩ませる。


「うーん、難しいなぁ」

「えー……どうやるんだろう……」


 学生の多くはグループで受講に来ていた。

 そのグループで話し合い、挑戦しては諦める。


 学生にはまだ難しいのだろう、どんどん金属板が回る。

 エミリアは見守りながら、にこやかな顔を崩さなかった。


(話しながら集中するのは無理なのよね……)


 グループで他の人と話しながらルーンを消すのはかなりの高難度だ。

 そこからして、学生たちは集中が足りない。


 純度の高い集中、ルーンへの理解と深化。

 これがルーンの消去の極意だ。


 と、さっきの金髪の青年グループに金属板が渡る。


「なぁ、そんなのマジになるなよ」

「さっさと回そうぜ」


 取り巻きがギブアップしても金髪の青年は集中を続けていた。


「……うるせー、ちょっと黙れ」


 どうやら課題はボイコットしないようだ。

 負けん気が強いからなのだろうか。


(まぁ、本当の落ちこぼれや不良はこの大学には入れないか)


 どうあれこの大学に来ている以上、当然だが素質はあるのだろう。


 エミリアは講堂にある金属板のルーンを把握している。


 現時点でルーンを消せるのは――ほとんどいない。

 できても1文字か2文字だろうか。


 金髪の青年は半分ほど消して諦めた。

 納得いっていない表情だが、周囲に比べれば明らかに優秀だ。


(優秀がゆえに、かなぁ……)


 袖から覗く豪華な時計、首元のちょっと悪趣味なネックレス。

 良家の出身だからこうなったのではないだろうか。


(子どもの才能が親を上回っていると、ね)


 金属板が後方まで回り切っていく。


「最後尾の人は金属板を前まで持ってきてくださいね」


 エミリアが講堂の後方に目線を向けた。

 そこにはもうひとり、挑発してきた青髪の少女がいる。


「……ふん」


 青髪の少女が金属板をつまらなさそうに持ってくる。

 けだるげに、それでも背筋を伸ばして。


 金髪の青年や周囲の学生に比べると、明らかに飾り気がない。

 黒靴も簡素で、お洒落に興味がないのか。

 あるいはお洒落に回すお金がないのか。


 周囲の学生は少女の挑発行為に当然、気付いている。

 ――跳ね返り者、厄介者という視線。


 だが、同時に畏怖の感情も含まれている。

 もうわかっているのだ、学生たちも。


 青髪の少女が普通ではないということに。

 エミリアの前に立った少女がすっと金属板を差し出す。


 金属板のルーンは綺麗に消えていた。

 少女から金属板を受け取ったエミリアは微笑みかける。


「あら、あなたはとても優秀ね」

「……わたしの前に金属板からルーンは消えてたよ」

「そんなわけないわ。だって、あなたの前には一文字も消えてなかったから」


 金属板の推移は全部、把握している。

 まぁ、消せた生徒は1割ほどしかいないのだが。

 

 エミリアは金属板に指を這わせた。

 ほんのわずか、エミリアやロダン級の人間にしかわからない魔力の痕跡。


 心地良い、青海の欠片のような魔力が香る。


「それに金属板には魔力が残っているわ。青くて澄んだ、透明な海……これがあなたの魔力よね?」


 そこで初めて少女が目を細めて表情を出した。

 魔力の色まで当てられて驚いているようだ。


「あんた、何者なの? 臨時講師って話だけど」

「その通り、臨時講師よ。これからもよろしくね」

「…………」


 少女はエミリアに答えず、ぷいっと背を向けて最後尾の席へと戻っていった。


(……うーん、御しがたいなぁ)


 でも取っ掛かりはあった。

 彼女も課題を放棄する気はない。

 

 他の金属板まで集まり、エミリアはふむふむと頷く。


(えーと、レジュメには消せた学生とそうでない学生を配分して、30人程度に分けて実技をするようにっと……。まぁ、これ以外にはやりようがないか……)


 本当ならマンツーマンで教えたほうが絶対いいのだが、それは教員の数として不可能だ。それに現実的でさえない。

 ルーンの消去にも魔力は要する。講堂の中にはざっと250人ほどいるが、そのひとりひとりに実演していたらエミリアでさえ気絶してしまう。


 ということでエミリアは残りの時間を使って学生をグループ分けしていく。


 どうやら他の講義でも似たような形式らしく、思ったよりもスムーズだ。

 それでもグループの名簿と分けるのに講義の後半分を使ったわけだが。


(入学時にやったほうが良い気がするけれど、難しいか……)


 要点は既存のグループを断ち切り、ルーンの消去の筋が良い学生を割り振ることにある。

 入学時では意味が薄いのだろう。


(あとは、まぁ……こちらにとっても悪いことじゃないのよね)


 で、問題は講義の最後に起こった。

 金髪の青年がグループ分けにごねたのだ。


 正確には鬱陶しい青年のグループの中で、金髪の彼――ガネットだけを隔離した。

 そのほうが今後、やりやすいと思ったのだ。


 それにガネットが嚙みついた。


「なんでだよ、俺が教えるから別にコイツラと同じでいいだろうが」


 ――来たか、とエミリアは思った。

 ここが好機だ。

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― 新着の感想 ―
 取り巻きは大事にしてるようだから、クズではないようだね。
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