134. ルルルday
「きゅーい」
「んふふ、今日もルルはもっふもふねー」
ブラックパール号の事件が一段落して。
秋に近づくその日、ルルは背中をエミリアにブラッシングされていた。
「きゅー♪」
「ほーら、さらにふわふわなんだから……」
ルルのブラッシングをしているエミリアは超ご機嫌だった。
もちろんルルもご機嫌である。
「あー……ふかふか……」
ブラッシングが一段落したエミリアがルルの背中に顔を寄せる。
ふもふも……。至福の温かさである。
ルルがエミリア、フォードと暮らすようになって2か月弱。
この生活にルルはとても満足していた。
ただ、ルルの中に疑問があるのも確かだ。
いつまで経っても、とある疑問は氷解しない。
エミリアがルルの背中に顔をつけて呼吸する。
「ふーすー……んぅー……」
「きゅいきゅい」
なぜ人間さんは自分の毛を吸いたがるのだろう……?
ルルは賢い。算数もできる。
でもこれがわからない。なぜ吸うのか。
ルルにはこれだけが全然わからなかった。
思えばエミリア、フォードとお散歩するとたまに同じような光景に出くわす。
猫だったり犬だったり馬だったり。
ふたりに限らず、人間はなぜだか毛を吸いたがる……。
不快なわけでは全然ないのだが、単純な疑問だった。
「きゅい」
ルルは考える。
人間さんには毛がない……。とても少ないように見える。
自分や猫や犬や馬や鳥に比べると。
だから毛を吸いたくなるのだろうか。
「きゅきゅ」
多分、合っているような気がする。
ルルは賢い。人間さんの無自覚な欲求さえ考察し、理解する。
「ルル、考えごと?」
ルルの前でフォードが本を読んでいた。
きらきらした黒髪の少年――ルルの親友だ。
ルルはフォードととても深い繋がりを感じていた。
フォードの手が伸び、ルルの羽を優しく掴む。
ふわっとした羽とむにっとした手が触れ合う。
ふにむにふにむに。
「きゅうー」
「んふー、ルルの羽きもちいいー……」
「きゅっ♪」
エミリアが満足したのか、ルルの背中から顔を離す。
夜よりも黒い髪の主、切れ長の瞳のエミリアは優し気なフォードと真逆の雰囲気だった。実際、ルルは最初ビビッていた。
こんなに綺麗で怖い人がいるのかと。
でも実際に触れ合ってみるととても優しくて、世話焼きさんだった。
それにルルは無意識な居心地の良さをエミリアに感じていた……。
ルルにとってエミリアも親友である。
「……お母さん、鼻の下にルルの毛がついているよ」
「むっ! ありがとう。くっついちゃったわね」
エミリアがさっとルルの毛を取り払う。
そんな感じでのんびりしていると、エミリア宅の呼び鈴が鳴った。
エミリアが席を立ち、玄関に向かう。
「きゅい?」
「今の時間だと、セリスお姉ちゃんかな?」
ほむほむ……。
フォードの予想は正しかったようで、ひょこっとセリスが姿を見せる。
赤毛で眼鏡をかけた可憐な少女、セリス。
手先が器用でお絵かきが得意。
ルルも大好きなお友達だった。
「あっ、やっぱりセリスお姉ちゃんだ!」
「やっほーです!」
「きゅい!」
「ルルちゃんも元気そうですね。今日も全身がふもふもです……!」
セリスはルルの前に来ると、そっとルルを抱き上げる。
そしてそのままルルのお腹をセリスは堪能した。
「うーん、いつも通り……」
「太ってはないわよね?」
「数値的な変化はないんですよね」
「その辺りは問題ないんだけど、筋肉が脂肪に置き換わるのは――」
「暑さもやわらいで来ましたし、秋こそ運動を――」
ルルはふたりの話を聞きながら考える。
「きゅい」
運動はやぶさかではありません。
でも、消えた分の脂肪は蓄えたい。
秋が近いですから。備えたい。冬に向けて、たっぷり……。
そしてルルはめざとく気が付いていた。
セリスのバッグが重そうだということに。肩紐がいつもよりセリスの肩に食い込んでいる。
「きゅい……!」
ルルは思った。
これは脂肪蓄えチャンスの気がします。
ボーナスタイムってやつです。
「…………」
そしてフォードはじっとこの様子を見つめていた。
ルルの運動、秋には増やしたほうがいいかも……と。
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