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【コミカライズ】夫に愛されなかった公爵夫人の離婚調停  作者: りょうと かえ
1-2 新しい生活へ

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13.魔術ギルドのフローラ

 エミリアの存在はそこそこ有名だ。

 イセルナーレの魔術師なら知っていてもおかしくはない。


 結婚前の姓で呼ばれたことに嬉しさを感じながら、エミリアが頷く。


「……はい、エミリアで合っています」

「昨日、精霊ペンギンがすぐ線路上から動いたらしいとのことですし」

「それもご存じでしたか……」

「王都周辺で魔術関連のことでしたら、わたくしの耳にはすぐに入ります。で、さらには黒髪とその魔力――ウォリスのアクセサリーをお持ちですから、もしやと思いまして」


 フローラが飾り気のない笑顔で微笑む。

 エミリアの隠された魔力がわかるとは、相当な魔術師だった。


「私の魔力がわかるのですか?」

「全容はわかりませんが……とても素晴らしい魔力量ですね。この場にいる、誰よりも豊富です」


 フローラの推論は正しい。


 このギルドの目の届く中で、エミリアより魔力を持っている者はいなかった。

 フローラは遠くから瞬時にそれを見て取ったのだ。


「では、念の為の確認で旅券を拝見してもよろしいでしょうか?」

 

 エミリアがバッグから旅券を取り出す。

 受け取ったフローラがささっとメモを取り、エミリアへすぐに旅券を返却した。


「ありがとうございます。買い取りにつきましては、よしなに取り計らいましょう。審査は合格です」

「こ、これでいいんですか……?」


 さすが、ひと手間かけただけあって審査は終わりらしい。

 正規の審査がどれほどかかるかわからないが、このやり取りで短くなるなら文句はない。


「ええ、しかし現金化はすぐにはできませんよ」

「……えっ……」


 エミリアが心の中で崩れ落ちそうになる。

 審査に通ってもそれでは意味がない。


「ふふっ……ですが方法はございます。ご興味ありますか?」

「現金化がすぐにできるなら……!」


 フローラが唇に指を当てる。


 合法ならばどんな方法でもいい。

 エミリアはすぐに飛びついた。


「では、少しご足労願えますでしょうか」


 エミリアはアクセサリーをバッグに戻し、フローラの後をついていく。

 ふたりはギルドの営業エリアからバックヤード、さらにその奥へ移動する。


 移動するにつれ、エミリアの肌がざわめいてきた。


(魔力が濃くなっているような……)


 ルーンの刻まれた石造りの扉をくぐると、むっとした魔力の風が広がる。

 ふたりが到着したのは、ギルドの奥に広がる工房だった。


 整理整頓された作業台にいくつもの品が置かれ、職人が作業している。

 作業している人は十数人。誰もが営業エリアにいる従業員とは比べ物にならない魔術師だ。


「ここはルーン魔術の工房でしょうか」

「その通りでございます。ルーン魔術の心得はありますでしょう?」


 フローラが作業台に置かれている大型スプーンを取り上げる。

 柄には銀の装飾が入っており、明らかに高級品だ。


 問いかけにエミリアが頷く。


「ある程度は、ですが」

「充分でございます。で、さきほど申し上げたお支払いの件ですが、抜け道がありまして。振込に制限があるのは一般のお客様のみなのです」

「……ということは」

「当ギルドに所属される魔術師には別の法律が適用され、即座に現金化が可能です」


 エミリアを工房に連れてきたフローラの意図を理解する。


 支店長のフローラが出てきた理由。エミリアの持つ魔術師としての腕。

 身分証も見せたし、間違いないだろう。

 

「つまり、私がイセルナーレ魔術ギルドの職人になれば……!!」

「その通りでございます。ただ、当ギルドは誰でも受け入れるわけではありません。しかるべき力量があるかどうか……早速ですが試させて頂いてもよろしいでしょうか?」


 これこそ渡りに船だ。

 エミリアもイセルナーレで職を探すつもりでいた。


(よし……っ!!)


 それがまさか、ふらっと訪れた魔術ギルドでこんな話になるなんて。


 学院時代、真面目に勉学に打ち込んでいた成果だろう。

 あるいは昨日、線路の精霊ペンギンに動いてもらったおかげだろうか。


 現金化が早く進むならこの話を断る理由などない。


「もちろんです、どんな試験でも受けます」

「では、このスプーンを」


 エミリアはフローラに近づき、スプーンを受け取る。

 ごく微弱な魔力がスプーンからは感じられた。


「ルーンを刻むのは大抵の魔術師には可能です。しかし、本当に難しい過程がルーン魔術にはございます」

「刻まれたルーンを消すことですね」


 ルーン魔術は魔力を品物に刻みつけ、不思議な力を与える魔術体系だ。

 だが、その効果は永続的ではない。時間の経過で劣化する。

 

 劣化したルーンは本来の力を発揮しないばかりか、時に事故を引き起こす。

 そのため劣化したルーンを消して、再び刻み直すことが重要だ。


 ルーンは刻むよりも消すほうが遥かに難しく、センスが要求される。

 

「痕跡を残さずルーンを消し去るのはとても大切です。きちんと消さないと刻み直すことができません。ですから――試験はそのスプーンに刻まれたルーンを消すことです」

なぜイセルナーレにエミリアがいるのか、フローラがなぜ疑問に思わないかは今後ご紹介します……!!

まぁ、オルドン公爵家は悪い意味で有名だということで。


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