100.野菜の活用法
「ゴミは袋に入れて出すと回収していくわ。指定ゴミ袋みたいのが雑貨屋さんに売っているから、それを買って――」
話しながら野菜を詰め込み、昼食を作っていく。
今日はフォカッチャに具材を乗せ、ピザ風味にしていく。
まぁ、買ってきたフォカッチャを再加熱するついでなのだけれど。
フォカッチャにマッシュルーム、ムール貝の身、チーズなど……。
あとは野菜の葉を刻んで……トマトスープにぶち込む。
くたくたになるまで煮込めば、これも栄養満点だ。
「野菜の葉や芯はスープの具材にするのが簡単かな。刻んで、スパイス代わりに使うのもありだけど……」
「おおー……」
エミリア宅では食べられそうなら、野菜は使うことも多い。
というのもフォードが育ち盛りだからだ。色々な栄養を摂取してほしい。
ちなみに苦みを美味しいと思うせいか、フォードからは好評である。
むしろ脂身のほうが慣れてなくて若干苦手かも。
今日は意図的に野菜多めにしたわけだが……。
「セリスさんはこういうのって……食べた経験はある?」
「ええ、まぁ……父がうるさかったので」
セリスが露骨に顔をしかめる……。
梅干しを口に含んだみたいな顔だった。
「実家は武門がどうとかで、食事は野菜が多めでした」
「ははぁ、大公は軍人を輩出しているものね……」
ぼんやりとデレンバーグ大公家の人間をエミリアは思い出す。
ぱっと考えるだけでも5人以上は今も軍属のはずだ。
(……これが思い出せなくなってきたら、マズいのでしょうね)
でもエミリアは記憶力抜群で、まだ故郷のことは忘れていなかった。
「野菜の葉や芯も炒めて出てきたりとか。かったいんですよ、あれ。しかも自分たちはこっそり後で良いモノを飲み食いして……」
「うわぁ……」
野菜中心の生活もわからなくはない。
でも子どもに押しつけて、大人は逃げるとかどうなのだろう。
「野菜の料理はかなり経験豊富です。エミリアさんの料理だとすっごく食べやすいですし……!」
エミリアの料理には前世の経験もプラスされている。
そのうえ、恐らくだけどイセルナーレのほうが野菜の品質も良い。
多分、ルーン魔術による諸々の農業政策のおかげだろう。
というわけで昼食が完成し、テーブルへと持っていく。
「きゅっきゅー」
「スープ好きなの? いっぱい飲もうね~」
フォードがルルへスープを飲ませる。
もちろん野菜もセットで。
「もきゅもきゅもきゅ……」
「ゆーっくり噛んで飲むんだよー」
「……ごきゅ。きゅい!」
ちなみにペンギンのくちばしにはブラシのような突起がついている。
ルルはこれで咀嚼しているようだ……。
まぁ、ペンギンに歯はないのである。
フォードも野菜スープをすくってたくさん食べる。
「味が染みこんでておいしいね、ルル」
「きゅーい!」
ルルがぽよっと羽を掲げる。
ふふっ……しっかり食べてえらい。
そしてセリスの視線が再び野菜をもぐもぐするルルに向けられていた。
「……もしや」
「もきゅもきゅもきゅ……」
セリスは気がついたようだった。
食欲旺盛なルルを抑制するため、野菜を使っているということを。
こそっとセリスが聞いてくる。
「ルルちゃんのためですか?」
「それもあるわね」
だって、身体のサイズに比べてルルは物凄く食べるのだ。
しかし噛むとやはり食欲は鎮まるらしい。
合法ペンギンのままでいてもらうには、これが一番である。
次の日から、エミリアはセリスともに解体業に臨む。
作業は本当に滞りなく進んでいた。
慣れ、というのはやはり大切だ。
たった2日で第2弾のルーン除去作業が終わる。
そのまま第3弾、第4弾と順調に進み……気がつくと8月下旬に入っていた。
あとエミリアが気にしているのは、ただひとつ。
まだイヴァンの意識が戻っていないことだけだった。
もきゅもきゅもきゅ…… (*´꒳`* っ )つ三
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