表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/6

Episode-1

暖かな日差しが差し込む中、カルメラ家公爵令嬢のハンナは馬車に揺られ、王太子が待つ城へと向かっていた。


アルジーム王国の王太子である、ディルク・ルーカスとハンナは幼い頃より親しくしていた。公爵家の名に恥じないよう妃教育を受け、いずれは王太子妃候補として城での生活が始まる、今回茶会へと誘われたのは、その日取りを決めるためだとハンナは思っていた。

馬車が目的地へと到着した後、王太子直属の騎士であるバーメル・トランジールにエスコートされ、庭園へと足を運んだ。


「ディルク殿下、ハンナ様をお連れしました」

「そうか、ご苦労」


庭園が一望できるガゼボに設けられた、白を基調としたテーブルと椅子。足を組み、椅子に腰掛けアフタヌーンティーを味わっていたディルクは、バーメルに対し労いの言葉をかけた。


「ごゆっくりと」


執事に案内されたハンナは、ディルクが座る向かい側の席へと腰掛けた。


「ごきげんよう、ディルク殿下」

「ああ」


ディルクは普段から愛想が良い方ではないが、いつもよりも増してそっけない彼の態度に違和感を感じていた。そんな彼を気にかけながらも、ハンナは今日(こんにち)まで過ごしてきた事を彼に話した。妃教育で学んだこと、親しい令嬢とのお茶会をしたこと、新しいドレスについて…。

時折相槌は打つものの、何を話しても上の空である彼に対し、ハンナは尋ねた。


「殿下、何かお困りのことでもあるのですか」

「…そう…だな」


しばらく沈黙が続いた。

手にしていたティーカップを置き、ディルクは口を開いた。


「君には話しておかないといけないな」


彼の言葉に期待するハンナ。

―きっとこれは殿下からの城へのお誘いだわ


緊張しながらも、淑女としての振る舞いを欠かさないよう表情を引き締め、爽やかに茶葉が香る紅茶を口に含んだ。


「今度、夜会を開くことにした」

「そうなのですね」

「君にも招待状を送る」

「ええ、お待ちしております」


途切れる会話…。彼の言葉を待てど、何の反応もない。

ちらりと彼の方を見ると、一瞬目が合った、がすぐに逸らされた。


「…殿下」

「悪い」

「何か仰りたいことでもあるのですか」


―殿下、もしかして言うのが恥ずかしのかしら。わたくしなら心の準備はできてますのに


「…せっかく足を運んでくれたんだ、…ハンナ」

「はい」


手に持っていたティーカップを置き、ディルクを見つめるハンナ。

―ようやく殿下と婚…


「ある女性を探しているんだ。ハンナは知っているかな」


―ある女性…ですって

プツン。

彼女の中で何かが切れる音がした――。



虎娘『今宵はあなたとともに Episode-1』

を読んで下さり、誠にありがとうございます。

評価・感想をいただけますと、私の励みにもなりますので、何卒よろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ