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魔王に会いに参ります~付与術師・余話~

作者: 直方 諒

本話は、『付与術師』(https://ncode.syosetu.com/n5948gt/)を下敷きにしております。

お互いの補完にご一読いただけますと幸いです。

 迷宮探索黎明期の伝説の付与術師ラディエルの愛弟子にして、師を凌ぐほどの才に恵まれた付与術師。

 深々度攻略の途絶えて久しいガイラス迷宮を完全攻略し、神話に謳われるのみであった魔族との新たな関係をも作り出している。

 

 

 

 そんな噂が流れて来たのは、年に二度迷宮管理ギルドの運営する迷宮攻略者育成の訓練校が卒業生を輩出する季節をほんの僅か過ぎ、これから冬へ向かおうとする頃だった。

 

 どこからが噂による誇張だかは不明だが、彼はこの大陸随一の規模と言われているガイラス迷宮を単身で踏破して魔族の国に到達し、幾度目かの訪問の際に魔族の王から人間の国の王達へ向けた書状を預かって戻ったのだという。

 

 これを重く見た我が国デルフィノスの国王は、即刻彼への指名依頼として魔族の国までの道先案内人を勤めるよう、国を越えた独立機関である迷宮管理ギルドへの申請を行ったのだった。

 

 

 

「えっと、自己紹介がまだだったですよね?

 うっかり……じゃなかった、運良く魔族の国にたどり着いちまっただけなのに、なんかこの使節団を率いることになっちまったらしい、迷宮攻略者のラスティンです。」

 

 一見して中肉中背。いや、装備を差し引いて見ると、いささか背が低く、痩せている部類かもしれない。

 礼儀作法に慣れていないぎこちない敬語と礼はいかにも平民という雰囲気で、造作は悪くはないのだが身形(みなり)を整えるという習慣がないのであろう、凡庸という域を出ない風体だ。

 急所と腕など、最低限の部位を金属で覆い、それ以外の部分は魔術師のローブに用いられるような魔法陣の刺繍された布で作られた一風変わった鎧は噂に聞き及んでいた通りだが、実際に目にすると、前衛で壁を張るポジションとして立ち回ると聞いているものの、その装備は鎧としての防御力は大丈夫なのかと問いたくなる。

 

 体格に恵まれているわけでもない彼が、噂の出所の人物であり、大陸でも稀な特級認定迷宮攻略者だということに、正直に言って驚きを隠せない。

 

 若々しい大きな瞳と同じ色の黒く艶やかな髪、張りのある肌を見るに、明らかに十代。

 ディルフィノスでは十六歳を迎える季節の成人の儀式を境に成人と見なすが、未成年と言ってもおかしくないのではと思える程若く見える。

 迷宮管理ギルドの訓練校の応募資格が最低訓練期間の一年を過ごした後に成人を迎える十五歳であるので、これはさすがに単に彼が童顔であるということだろう。

 

 正式な名乗りに家名もなく、自身の立場を迷宮攻略者と称するということは、彼は孤児院育ちで、訓練校を卒業し攻略者登録したことで初めてディルフィノスでの市民権を得たばかり、ということも推測出来る。

 貴族出身の攻略者は(おおむ)ね実家の身分を先に述べるし、庶民でも家族のいるものは家名や屋号を名乗る。

 そうした形で市民権を得た者の正式な所属は、その国の国民ではなく管理ギルドが身元を後見する流民となるので、彼の詳細な情報が管理ギルドによって事前まで秘匿されていたのも理解出来た。

 

 我が国には幸いにして、浮浪児などとして劣悪な環境で育つ者はほとんどいない。

 大規模な迷宮『ガイラス』があり、管理ギルドがあることで、国と管理ギルドの両方から資金を出して孤児院支援の体制を整えられているからだ。

 管理ギルドとしても、孤児院のうちにある程度の躾と教育を受けさせた子供はその後訓練校に進ませやすいため、孤児院支援にはギルドの方が熱心ですらあるのは、ありがたくもあり、国としての面目が揺らぐところでもあるので、痛し痒しだ。

 だが、実際に孤児になる比率が高いのは迷宮攻略者の子供達であり、ギルドはその責任を負うべきであると言われれば、迷宮管理ギルド代表総括のその心意気を称賛するほかないのである。

 

 ********************

 

「しかし、たったの4人組に『団』って付くのは大袈裟なんじゃありませんかね?

 まあ、迷宮ではぐれずに行動出来るのが4人までだから仕方ないんだけど。」

「おい、ラスティン!

 殿下は高貴な身であられるのだぞ、言葉をわきまえろ!」

「問題ありませんよ。

 この使節団のリーダーは彼、ラスティン殿。

 私は彼の助けを借りて同行させていただく身。

 それに、彼とは歳も近い。彼が迷惑でなければ、親しくなりたいと思っていますので。」


 うわー、イケメンスマイル。

 それに、人当たりの良い言葉遣いと声。

 王族様はやっぱりそこいらのごろつき紛いの迷宮攻略者共とは違うなぁ。

 

 えっと、確か、エイフェラント殿下だっけか。

 淡い金色の流れるような髪が眩しい、蒼く澄んだ色の瞳が印象的な美丈夫だ。

 俺の住む国の第三王子様で、母親の側妃様の身分が低いから継承権順位は低いけど、王様からは一番可愛がられているって話だったな。

 

 そんな箱入り王子様を、魔族の国への使節に加えるなんて、こりゃあ……。

 

 ―――……王位継承争いの箔付けに任命された、ってところだろうなぁ。

 

 正直に言おう。

 俺をそんなもんに巻き込まないで欲しい。

 

 

 

「殿下、ご友人はもっと慎重に選ばれた方がよろしいかと存じます。

 こいつはすぐにヘソを曲げては、迷宮に八つ当たりしたついでに魔族の国で休憩して帰って来るような変わり者ですよ?」


 あ、なんすかギルド長、そのひどい言い種は。

 まあ、間違ってないけど。

 

 ああそういや、正確にはガイラス迷宮支部長って言うんだっけ?

 この依頼が回って来た時に一緒に名前も聞いたはずなんだけど、忘れた。

 まあ、めんどくさいんでギルド長で。攻略者連中はみんなそう呼んでいるし。

 これから先、他の迷宮の管理ギルド支部長に会うことがあったら改めよう。

 

「そんなに簡単に魔族の国に行き来出来るほど頼れる方なのでしょう?

 実のところ、熊かオーガのようないかつい方を想像していたので、こんなに親しみやすい方で嬉しい限りですよ。」

 

 俺も訓練所にいた頃に憧れていたのはそういう体格だったんだけど、実に悲しいかな、俺の体格は正直ぱっとしないものだ。

 ううっ、現実を突き付けないで欲しい。

 いや、俺はまだ成長期! これからきちんと栄養を取っていけば、まだ多少は伸びしろがある、……はずだ。

 

「改めて、私はエイフェラント・イキサエル・クォート・ディルフィノス。長いので道中はエイフェと呼んでもらえたら嬉しい。

 オイゲン支部長もぜひ愛称でお願いします。」

「うぐっ、……では、エイフェ殿下、で。」


 ああ、そうそう、ギルド長はオイゲンっていう名前だったっけ。

 俺と同じ孤児育ちで、独身で通しているから家名も持っていないって聞いたような気がする。

 

「ラスティン殿のことはラスと呼んでも?

 私のことは敬称抜きでエイフェと呼んでください。」

「あー、その、……それ、命令ですか?」

「お願いですよ。お嫌ならやめますが。」

「いや、呼びやすいのでご厚意ありがたく。でも、さすがに様くらいは付けますね。」


 王族の『お願い』は実質命令だと思う。

 まぁ、エイフェラント殿下と一々呼ぶのは面倒なので、お言葉に甘えよう。

 

「私も挨拶してよろしいでしょうか?

 エイフェラント殿下の護衛を務めます、近衛騎士団六番隊隊長、シェーンと申します。」

 

 あ、これあれだ。敢えて名前しか言っていないやつだ。

 近衛の隊長なんて、どこかの貴族の子弟しかなれないはずだからな。多分エイフェ様と同じく長ったらしい名前と爵位持っているパターンだ。

 王子様が愛称呼びを希望したんで、気を利かせて自分は名乗りを控えたんだろう。

 ギルド長よりも頭半分ほど背が高く固く締まった体格をしていて、短く揃えた濃い茶の髪が凛々しい、全身金属鎧と盾の似合う、いかにもな風体の騎士様である。くっそ、羨ましい。

 

「ところでラス、こちらの方は?

 お連れがいらっしゃるとはお聞きしていましたが……。」

 

 王子様の視線が俺の横に向く。

 

 魔術師らしく銀糸で魔法陣の刺繍されたミルクのような白のローブを纏い、ミスリル銀に紫紺の魔石の嵌った細いタクトを携えた、銀髪というよりも白髪に近い髪を束ねて流した、タクトの魔石と同じ紫紺の瞳の若い男。身長は俺よりほんの少し高いくらいで、胡散臭い柔和な笑みを浮かべている。

 

「ご挨拶が遅れました。

 僕はルディ。ラスティンのお目付け役を務めます。」

「まてこらじ……じゃなかった、ルディ! 俺があんたのお目付け役だろうが!」

「えー、私から説明いたします。今回彼らは、お互いがお互いのお目付け役です。

 事の詳細は秘匿させていただきますが、彼は迷宮探索では私など足元にも及ばぬ手練れであることは、私がギルド総代の名に誓って保証します。

 ルディ殿、くれぐれもラスティンと殿下のことをお願いいたしますよ。」

 

 ギルド長が割って入って話を補足してくる。

 

 国側は今回の使節に、管理に回る以前の迷宮攻略者としての実績も名高いギルド長と俺を指名していたらしい。

 うん、いまだにギルド長に逆らおうなんて迷宮攻略者が出ないくらいには、ガイラス迷宮を取り巻く街では有名な元攻略者だもんな。

 しかし、ギルド長は多忙かつ責任ある立場であるため、ギルド長が代理として立てたのがこのルディである。

 

「承知。

 このたわけが頼りなくとも、無事お二人をゼデル国に案内すると約束しましょう。」

 

 ゼデルっていうのが、今回俺達が目指す魔族の国の名前だ。

 

「だったらルディとギルド長でゼデルに案内すればいいじゃないですかー。

 何ならルディと三人だけでも平気だと思うし、俺いらないでしょ。」

「だからキミはたわけだっていうんだよ。これはキミへの指名依頼でしょ?

 それに僕のこともさすがに過大評価しすぎ。」


 タクトで頭を痛くない程度にポンポンと叩いてくるのがムカつく。

 加護石(タリスマン)も持っているクセに今回の装備にそれ選んだの、絶対そのためだろう。

 

「ギルド長だって指名断ってるじゃないですかー。」

「だからこそお前まで断ったらギルドの面目が立たないというものだろう。

 それに俺はもう引退した身であるし、お前は現役の迷宮攻略者なのだからきちんと依頼をこなしなさい。

 いくらもはや食うに困っていないだろうとはいえ、十年の攻略者在籍の義務の期間内でもあるのだぞ。」

 

 それを言われると立つ瀬がない。

 短期間で一財産になった魔物素材の利益で切迫した懐事情からおさらばしたのと、急にすり寄ってくる奴や逆に嫌味を言ってくる奴が増えてうんざりしたこともあり、ここ最近は迷宮での滞在登録時間の成績がいかんせんよろしくなく、あまりにも時間や日数が短すぎると義務期間の延長も懸念されますよと受付嬢の人から脅しを食らったばかりなのである。

 その事情も知っているルディがくすくすと笑いながら、ぽんと肩に手を置いて促した。

 

「ほらほら、ラスティン。キミがリーダーなんだから、ちゃんと先導するんだよ。」


 ********************

 

 ギルド長室での顔合わせの後、早速ガイラス迷宮へと向かうことになった。

 無闇に目立たないよう冒険者達の向かうピークを避け、昼前の出発である。

 

 昼飯食ってからでも良かったんじゃねーのと思わないでもないが、王子殿下と近衛隊長相手に提供出来るようなご立派な食堂なんてギルド付近にも迷宮付近にもないから、いっそ迷宮内で旅食で賄ってくれというのが実情だろうと勝手に思っている。

 

 

 

「シェーン殿は迷宮のご経験は?」

「近衛に上がる前に訓練の一環で深層までは一通り。

 深々層に潜るにはパーティーとしての実力が不足していると判断し、一度様子見として降りたきりです。」

「ならば今回は余裕がおありでしょうな。

 その時の付与術師の実力如何(いかん)ではありますが、私が知る限りの付与術師の付与であったれば、ラスティンに任せれば貴殿はその能力を何倍にも発揮出来るようになりますから。」

 

 入場口には前もって伝令が走っていたのか、余計な詮索もなくあっさりと通過して浅瀬に入り、このあたりではしゃべりながら足で小物の魔物でも蹴飛ばしていれば露払いは十分なので、和やかな談笑が始まる。

 

「えー、付与はルディがやればいいじゃんー。

 俺たまには大剣に専念してみたいー。」

「……ということは、ルディも付与術師なのですか?」

「ああ、これは失礼。そういえば職業を公開しておりませんでしたね。

 カードには、付与術師、治癒術師、攻撃魔法師の三職を刻んでおりますので、如何様(いかよう)にも立ち回れますよ。」

 

 カードに刻む、というのは、迷宮管理ギルドの発行する身分証の職業欄に、魔道具で鑑定した先天的な適正を三つまで選択して表記することだ。

 それにより、円滑に安全なパーティーを編成し、迷宮攻略に繋げることが出来るというが、たった一つしか適性が提示されなかった俺からすれば忌むべきシステムである。

 

「魔法のスペシャリスト、というわけですね。」

「そんな大したものではありません。

 ただの器用貧乏ですよ。」

 

 言いながら、タクトを揺らしてローブをひらめかせ、仕方ないなぁという溜息と共にルディが全員に付与術を掛けていく。

 淀みなく素早い上に簡略詠唱で発動させるのはさすがだなと、ここは素直に尊敬しておく。

 俺はまだ素の状態からの簡略詠唱の成功率が高くないから、最初はルディの三倍くらい詠唱に時間がかかってしまうんだよな。

 まあ、最初に詠唱補助の付与を掛ければ簡略詠唱も実用的になるからそう問題ないんだけどね。

 だけど、ルディは本気出せば詠唱破棄だって出来るだろっていうのは、言っちゃいけないやつだよな。

 

「私は剣士と重装兵士、斥候の三役を(にな)えます。」


 新品ではないけれど保存状態の良いピカピカのカードを提示しながら、近衛隊長さんが自分の立ち回りを説明する。

 訓練の時に取得して、そのまましまってあったんだろうな。


「重装兵士と斥候の組み合わせは珍しいですね。負担が大きくなりそうですが、大丈夫なのですか?」

「壁になる時に目端が効きカバーしやすいので、斥候の資質は重宝しておりますよ。」

「なるほど。

 殿下は今回特別に適正検査を受けられたとか。如何(いか)な結果となりましたか?」

 

 順に王子様にも訊いていくと、王子様は少し渋い顔をして両手のひらを上にかざして見せる。

 

「お恥ずかしながら、戦闘に役に立ちそうなものは無くて、カードに刻むことも止めました。

 剣技にはそれなりに自信があったのですが、まだまだ未熟ということでしょうか……。」

 

 ふーん、しょげた声でうなだれているけど、王子様は多分、統治者とか指導者とか、そういう王族らしい資質が並んだんじゃねーかな。頭良さそうだもんな。

 そういう資質を刻んだカードがあると他の王位継承争い相手に下手に警戒されるから、今のところはそれを隠しておくために止めておいたとか想像でしかない考察をしてみたり。

 しゃんとして姿勢の良い王子様は多分普通に戦闘になっても良い戦力になりそうなのが、柔和な物腰に隠れて見落としそうながら、なんとなく勘でわかる

 

「あの資質測る玉の鑑定は鵜呑みにしなくていいですよー。

 あくまでも資質を測るだけで、後付けで努力して得た技術とかは反映されないポンコツ測定器ですから。

 かく言う俺も被害者の一人です。

 いくら付与術の適正が高いって言っても、三年も努力した前衛戦士の適正全否定されたんすよ。」

 

 大剣をぶんぶんと片手で振って見せながら、実は結構自尊心を傷付けられたんじゃねーかなと思う王子様に慰めの言葉を掛けてみる。

 びっくりした顔で綺麗なアーモンド形の睫毛バシバシの瞳を見開いて、王子様が「なんと……。」と呟いた。

 

「ポンコツとか言わないの。

 キミが特例中の特例だっただけなんだから。

 あれ、厳密にはね、祝福と呼ばれる資質が個人に与える影響の割合を数値化して提示するものなんだよ。

 表示に限界があるから割合の低いものは除外されるだけで、本当はキミにも殿下にも剣士の資質がないわけじゃないの。

 ただ、それを証明する手段もないし、ギルドやパーティーの運営上はそれに従った方が効率が良いから、他人への情報開示手段として採用されているだけ。」

 

 またまたタクトでぽこんと俺の頭を叩き、ルディが蘊蓄(うんちく)を垂れる。

 

「魔王様にも言われたんでしょ?

 キミの祝福はキミの能力全てに影響を与える重要かつ希少なもの。

 キミはそれを実力で体現しているんだから、カードへの刻印なんて大した問題じゃないよ。」

「そんなん結果論じゃんかよー。

 俺マジで路頭に迷う覚悟したんだぜ、あれのせいで。」

 

 それに、鑑定直後は散々嘲笑や罵声を浴びせられたんだ。

 俺にはあれを恨む権利があるはずだ。

 

 ********************

 

「……その……魔王というのは……。」

「一体どういった方で? ラスは随分と歓待されたと聞きましたが。」


 『魔王』という単語に反応して、近衛隊長さんと王子様が食い付いてくる。

 そりゃそうだよな、今回の同行の目的は、その魔王様に会いに行くことだもんな。

 

「気の優しい良い人ですよ。

 魔族の人達もちょっと角とか翼とかあるだけで、俺らとそんなに変わらないですしね。

 五十年ぶりの人族の来訪だって喜んで、こっちに敵意がないことを伝えたら素直に信じて歓迎してくれまして。

 魔王様も、直接話を聞かせて欲しいって、訪れるたびにお茶や食事に誘ってくれるんです。」

「五十年ぶり?」

「ラスティン。」

「あっ、今のなしで!」


 いっけね、これってオフレコだって、釘を刺されてたんだった。

 

「五十年というと、黎明期のパーティが深々層探索を断念した時期では?

 もしや、魔族の国目前での探索中止というのは建前で、本当はゼデル国に到達していたのだろうか……。」

「『入口の魔道具』がもたらされたのも、ラディエル老師の最後の探索行の成果でしたね。

 本当は迷宮の取得物ではなく、魔族の国から直接与えられたものだった可能性も……。」

 

 うひぇーっ、さすがに二人とも勘がいい。

 ちょっと口を滑らしただけなのに、ずばずばと核心を突いてくる。

 

 『入口の魔道具』というのは、数ある迷宮の中でもガイラス迷宮だけが持つ、迷宮と迷宮を取り巻く街とを繋ぐ安全装置みたいなものらしい。

 この間までよく知らなかったんだけど、他の迷宮では安全な『入口』なんてものなくて、迷宮の侵食した土地から魔物が湧いてくるのを、迷宮管理ギルド員や兵士で昼夜の区別なく狩り続けて拡大を阻止しているのだそうだ。

 それで、迷宮から這い出た魔物がもたらす災禍の話なんてのを、迷宮攻略者の訓練所で習うんだな。

 魔物自体も一般市民からすれば脅威だが、迷宮では地面や壁に吸収されていく魔物の死骸が、境の土地では腐食して土地を汚染するのだとか。

 ガイラス迷宮には『入口』があるから迷宮から魔物が這い出てくることなんてないけれど、他の迷宮ではその境の腐食した土地が『入口』に当たるのだという。

 ガイラス迷宮は大陸随一の大きさを誇り、迷宮攻略者からの人気の高い迷宮だそうだが、人気の一端はその安全な『入口』にもあるのだと、他所の迷宮から移ってきたという攻略者から聞いたばかりだ。

 名所の地元民は意外と名所の由来を知らないなんて、よくある話だろう。だって、俺達にとってはそれが普通、なんだから。

 

「まっ、まぁ、そこらへんは魔王様から直接聞いてもらえると嬉しいなー……なんて。

 さっ、ここいらへんから気合入れていきましょうかー!」

 

 そろそろ深層だ。

 別に気合なんて入れなくとも、ルディが付与術を掛けた近衛隊長さんがサクサク片付けてくれているから俺なんか遊んでいてもいいのだけれど、俺もそろそろ体を動かしたいのも本音である。

 

「剣ぶん回して貢献するのは別に良いけどね、ラスティン。

 キミ、本当に付与放棄する気?」

「だって浅瀬で掛けた付与、まだまだ残ってるだろー?

 ルディの付与二日はもつじゃん。」

「二日ですか? そんなに効果の長い付与術師が居たなんて……。」

「我が国はおろか()つ国の噂にも聞いたことが無い。

 ルディ、貴方は一体……。」

 

 愕然とする二人に、ルディがまた胡散臭い微笑みを浮かべる。

 

「効果が長いからといってそれを馬鹿正直に申告する必要はないだけですよ。

 入口で付与販売をするにも、短めに申告しておかないと利回りが悪いでしょう?

 効果が数日もつような付与術師は、実はそれを隠しているもの、なのですよ。」

 

 くすくすと笑うルディの視線が、ちろりとこちらを向いた。

 

「まぁ、ラスティンは本当に二十分ですけどね。」

「俺をオチに使うなー!」


 ********************

 

 迷宮に潜って二日目。

 一日目は深層の深めのあたりでパーティーに付与術を副業登録している者がいるらしきパーティーともすれ違ったけど、今日は本当に魔物以外見ていない。

 

「さすがに敵が強くなってきましたね……。」

「まあ、この辺りは深々層もだいぶ深まった所ですからね。

 ラスティン、そろそろ付与交代。」

「えー? シェーンさん硬いしまだいけるって。

 俺やっと楽しくなってきたとこなんだけど。」

「……ラスティン殿は、付与術師、なんですよね?」


 さっきまで自分が苦戦していた魔物を片手で軽々と切り伏せる俺を見て、近衛隊長さんが何かおかしなものを目にした顔をしている。

 なんだよー、付与術師が前衛アタッカーしたっていいじゃんかよー。

 俺はそもそもそのつもりで訓練校で三年間頑張ったんだから。

 

「ラスティンの持つ祝福は『付与術の効果極大』という強力なもの。

 彼の掛ける付与術自体の効果も増強されますが、受けた付与術の効果も増強するのですよ。

 ですから、私の付与だけでも身体能力値がシェーン殿を越えているでしょうね。

 とは言え、付与術がなければ、剣技だけではおそらくシェーン殿に瞬殺されるような実力ですよ。」

「素の実力不足は俺が一番わかってるっての!

 だからちゃんとトレーニングは欠かしてないわーい!」

「……実力不足……。」


 ルディのすぐ俺を貶してくるおちょくりにわめいて返すと、近衛隊長さんが絶句しながらフリーズした。

 王子様も随分混乱した表情をしている。


「シェーン殿、この子に関しては気にしたら負けです。

 ラスティン、キミは良くてもエイフェ様もシェーン殿もそろそろ危険だよ。

 おとなしく本業を思い出しなさい。」

「……うぇーい。」


 自分もドッカンスパスパ魔法を繰り出してまだ全然平気そうにしているくせに、俺だけ変人みたいな言い方はやめて欲しい。

 

 仕方なく胸のタリスマンに手をかざしながら詠唱していくと、付与術の効果が増してふわっと体が軽くなるのを感じる。

 同じ感覚に驚いたのか、近衛隊長さんも王子様も「おおっ……。」と声を漏らした。

 

「ちょっとちょっとラスティン、僕には?」

「えー? ルディにもー?

 いらないでしょー、ルディなら。」

「僕だってキミから付与術をもらって深々層なんて希少な体験味わいたいよ。

 仲間外れは良くない。」

 

 軽く頬を膨らませてかわいこぶってみたって、全然かわいくない。断固かわいくない。

 だがしかし、ルディには恩義があるので、素直に従うことにした。

 

 

 

「あははははーっ!

 これ気持ちいいね。

 これからもたまには僕も迷宮に誘っておくれよ。」

 

 魔法威力増加と詠唱短縮、魔力回復増加の付与で攻撃魔法の移動砲台化したルディに、移動速度上昇と機敏の付与を施した俺の前衛すら追い付かなくなる。

 

「だからイヤだったんだよー!

 ドロップ拾いしかすることなくなるじゃんかよー!」

「ドロップなんか気にせず、ラスティンも魔法撃ったらいいじゃない。」


 いや、ここいらへんのドロップって、地上に戻れば相当に貴重なものらしいからね?

 いくらもう俺の貯えも天井知らずになりつつあるとはいえ、拾わないって選択肢はあまりに豪気すぎるでしょ。

 それに。


「四人に付与回しながらルディと魔法で獲物争いじゃ、さすがに魔力回復足りなくなるってぇの!

 だいたい、俺は両手剣使いなんだってば! 前衛やらせろーっ!」

 

 ********************

 

 我々の認識が甘かったということは、彼らのその実力を目の当たりにして重々思い知った。

 ルディの付与術の効果とて予想以上に高く驚いていたというのに、付与術の担い手がラスティンに変わった途端に、先ほどまで苦境と思えていた深々層が、まるで安全な狩猟の森になったかのようですらある。

 

「ラス、このペースで行くと、ゼデルまであとどのくらいかかりそうだい?」


 ひとしきり魔法を撃って気が済んだルディの移動砲台状態が落ち着き、移動の方を優先して遠方の魔物には手を出さずに進むようになってしばらく経つ。

 今日はひとまず、次の『分岐点』で野営することになるだろう。

 

 迷宮には正しい道順というものはなく、フロアのような空間を進んだ何処(いずこ)かに扉であったり階段であったりといった分岐点があり、分岐の先は完全にランダムとなる。

 ランダムとは言ってもある程度の階層の攻略地図は作られていることからわかる通り、階層単位でのパターンは有限であるようだ。

 

 分岐点付近には不可思議ながらも魔物が近寄らないため、野営や休憩をするパーティーはそこを区切りとするのが通例となっている。

 なお、入ったばかりの分岐点にもう一度入り直せば『戻る』と判定され、そこからは行き道同様分岐を繰り返して『入口』へと戻ることができる。

 これを利用して攻略者達は自分達の実力に適切なフロアを探り、場合によっては分岐の行き来を何度も繰り返して狩場を定めるのだという。

 幾度分岐を繰り返しても目的のフロアにたどり着けないこともあるため、フロアごとにパーティーまたは人員の上限があるのではないかという仮説も一般に浸透しているらしい。

 

「んーと、今分岐を……えーっと、いくつ通ったっけ?」

「百三十六回だよ。分岐を数えるのは迷宮攻略の基礎だって座学で習ったでしょうに。

 まあ、明日あたりそろそろ折り返しだね。」

「折り返し?」


 中間地点、ということだろうか。聞き慣れない少々不思議な言い回しだ。

 

「分岐地点のおよそ百五十回目あたりが魔物の強さのピークになります。

 その前後は有毒な空間や酸の水溜まり、鋭利な地面や壁に遭遇することもあり少々厄介ですが、ラスティン一人でも通過出来る程度ですのでご安心を。」

「毒ですか?!」

「ちゃんと抗毒の付与術もあるし、ルディに風魔法で清浄な空気流してもらってもいいし、食らっても解毒すりゃいいんで心配ないですよ。

 毒の空間は魔物も出てこないし、通過しやすいボーナス分岐っすね。」

 

 あははと笑うラスティンと微笑んで相槌を打つルディがそら恐ろしく思えるのは私だけでないことが、シェーンの唖然とした顔からわかるのが今は救いだ。

 この二人は、我々とは見ている世界が違うのかもしれない。

 

 少なくとも私は、抗毒の付与術というものは初めて聞いた。

 ラディエル老師が愛弟子であるラスティンにのみ教えたものであろうか。いや、ルディも知っているようであるし、一部の付与術師しか使えない高等付与術の類いなのかもしれない。

 一般に流布していれば、暗殺を警戒するような王族や高位貴族、大手の商人などがこぞって付与術師を召し上げてもおかしくない術式であるはずだ。

 

 解毒の術式もそれなりに高度な治癒術師にしか使えないはず。

 ラスティン単独でも解毒できるということは、ラスティンは付与術師としてだけだけでなく、治癒術師としても一流の域にいるということになる。

 事前情報では、ラスティンは付与術にのみ適性が振られ、訓練所での魔法術の成績は付与術以外芳しくなかったと聞いていたのだが。

 

 まさか、付与術で能力値を底上げすることで、各種魔法への適正も跳ね上がる……ということなのか。

 そうであれば、付与術師であるラスティンが類を見ない異常な早さで特級攻略者に認定されたのも、単独で魔族の国への踏破を成し遂げたというのも、頷ける話ではある。

 

「明日でピークを過ぎれば逆にフロアの難易度が下がっていって、そのうち魔族の迷宮攻略者さん達を見掛けるようになりますよ。」

「?!」

「迷宮って色々と不思議な作りしてるじゃないですか。

 これって、魔族の人達が資源を得るために作った魔導装置なんだそうで。

 だから、あっち側にも迷宮攻略……あっち側では資源探索って言うようですけど、そういう人達がいるんすよ。

 それが拡大して俺達の側に繋がっちゃった場所が、迷宮の入口ってわけ。」

「ラスティン、それ、オイゲン支部長から口止めされてなかったかい?

 まあ、明後日あたりには探索者達に遭遇するだろうし、ゼデル国に到着すれば向うから説明してもらえるだろうから、エイフェ様とシェーン殿に明かす分には問題ないだろうけどね。」

「あ、そうだった。」


 ルディが呆れた顔で嗜めるが、それは非常に重大な情報である。

 これまで報告に上がってこなかったことは、迷宮管理ギルドが国を越えた独立組織である以上咎め立てできないことではあるが、使節団の依頼を通して情報の共有くらいしてくれていても良かったのではないかと思う。

 

「まあ、あと三日もすれば着きます。

 エイフェ様は徒歩での長旅なんてご縁がないだろうし、もうお疲れでしょうけど、ほんの三日ですからがんばりましょうね。」

「あ、いや……私はもっと長くかかるものと覚悟してこの使節団に臨んだのだが……。」

「私もです……五日なんて、地上で大きな街や国を行き来する程度の片道などとは思ってもみませんでした……。」


 確かに噂では、ラスティンは数日で魔族の国に到達したとは聞いていた。

 だが、それは、尾鰭の付いた噂でしかないものだと思っていたのだ。

 

「……聞くのも怖いが一つ訊いてよろしいか?」


 ふと思いついた顔で、シェーンが口を開く。

 

「普段ラスティン殿が一人でゼデル国に向かう時は、一体何日ほどで着くのか、参考までに教えて欲しい。」


 それにきょとんとした顔で、ラスティンが答える。

 

「んー、休憩や食事も進みながら取っちゃうんで、最近は三日もあれば着きますね。

 それ過ぎると不味い携帯食料食わなきゃいけなくなるんで、持ち込んだ食い物が傷まないうちに到着するようにしていますよ。」

 

 ********************

 

 結果だけ述べよう。

 三日後、我々は無事、ゼデル国の王城へ国賓として招待されていた。

 

 道中で何やら凶悪で強大な魔物をラスティンとルディのほぼ二人で屠ったり、そのドロップを「魔王様に良い土産が出来たね。」と笑っていたりしたが、護衛の任に指名されていたシェーンはともかく、名目上はただの国使である私がただの足手纏いでしかなく見ていたことなど、もう気にしても仕方がないだろう。

 

 だが。

 

「ラスティン! 帰国を祝おうぞ!」

「いや、来国でしょ、ジョアンナ様。

 お久しぶりです。お元気にしてらっしゃいましたか?」

「そなたがなかなか帰って来ぬので寂しくしておったぞ。

 して? そちらの一同が先の書状で友好を申し込んだ……。」

「ジョアンナ様?」


 聞いていない。

 

 魔王が女性……女王であるなどと聞いていない。

 

 側近の嗜めるのも構わずラスティンに親しみのハグをする、目の前の麗しき女性が『魔王』であるなどという報告は、国からもギルドからも一切受けていない。

 

「……ラディエル!」

「覚えていて下さったのですね。幾久しくのお(いとま)をご容赦ください。

 半世紀ぶりのお目通りとなります、ジョアンナ陛下。」

「なっ?!

 ラ……ラディエル?!」

 

 ルディを見て魔王の発した、混乱する頭に割り込んできた思ってもみない高名な名前に、頭の中が真っ白になる。

 

「忘れるはずがなかろう!

 ラスティンがそなたの愛弟子と聞き、なお一層想いを募らせておった……。

 既に年老いたと聞いておったのにその姿……私の想いを聞き入れてくれたものと思って良いのだな?」

「ええ、あの日貴女様から頂いた秘薬にて、私めも魔族の末席に加えていただきました。

 分不相応に過ぎるとこの年まで飲めずに過ごしておりましたが、老い先短くなり優秀な後継者も出来て、欲が出てしまいました。

 永い寿命を得ると同時に、陛下にふさわしい姿に立ち戻れたましたこと、感謝の至りにございます。

 彼の日のお言葉が気の迷いであらせられるというのならば潔く身を引きます……ですが、お気持ちが変わらず今でも必要として下さると言うのならば、私めを貴女のお側にお置きください。」

 

 

 

 突如築かれた二人の世界に、溜息が一つこぼされる。

 

「まあ、そうなるよねー。

 あー、俺がギルド長に怒られるー。」

「ラス、それはどういう……。」

「今回、俺もルディもお互いにお目付け役だって話、しましたでしょ?

 俺は、ルディことじじい……ラディエル先生がゼデルに移住するのを止めろっていう意味でお目付け役を任されていたんですよ。」

「まっ……まさか、あのルディが本当に、ラディエル老師なのか?」

「順当に考えて、あんな魔法お化けの付与術師なんて、じじい以外にいると思います? しかも今まで無名なんておかしいでしょ。」


 いや、順当に考えれば、あの若々しい姿の者が(よわい)七十を超えるはずのラディエル老師だなどと思い至るはずがない。

 

「秘薬……ラディエル老師の魔族化……こんなもの、国に持ち帰れるはずもない……。」

「エイフェ様は真っ当な思考をお持ちのようで何よりです。

 これ、ギルドでもギルド長……オイゲン支部長? しか知らない秘密なんで、ほんとご内密に。

 魔族の中でも秘術中の秘術で作られた物凄く貴重な薬らしいんで、持って帰れと言われても無理ですけどね。」

 

 そんなものが五十年も前に我が国にもたらされていたなどとは。

 さらには、我々が道中で憶測したことがほぼ真実だったということに、頭がついていかない。

 もしや、ガイラス迷宮に設置された『入口の魔道具』も、ラディエル老師を心配して魔王が与えた物の一つだったのであろうか。

 

「ジョアンナ様、じじいといちゃつくのはこれからいくらでも出来るでしょう。

 先にうちの使節団の紹介させてもらっていいですか?

 俺一応使節団長なんで、うちの国の王子様紹介しないとお役目が終わらないんですよー。」

「ラスティンはまーたじじいって言う。

 もう僕じじいじゃないよ。」

「中身はじじいだろ、せ・ん・せ・い?」

「おお、すまなかったの、ラスティン。

 はしたない所を見せてしまい、大変失礼した。

 険しい旅路を越えよくぞ参られた、使節団御一行。」


 ギルド長から怒られると嘆いてみたり、そもそもお目付け役なんて実質不可能なものを引き受けたりしていたが、ラスティンはこの結末を予想していたのだろう。

 ルディ……ラディエル師を見る目には何の外連(けれん)もなく、親しい者の幸福を喜ぶ慈愛に溢れている。

 

 そういえば、長い年月の中、ラディエル師が『愛弟子』と呼んだり『後継者』とした者は他にいなかったと記憶している。

 

「魔王陛下にはお初にお目にかかります。

 私は、ディルフィノス王国を代表して参りました、第三王子の……」

 

 END.

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