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プロローグ

会社帰り、まだ車通りの多い環状八号線を自転車で走りながら土田松人(つちだまつと)はため息をついた。

「はぁ…ついに35歳になってしまった。このまま一生独り身なのだろうか」


周りの同僚は皆一様に結婚し、家庭を持ち幸せに暮らしている。

しかし自身はといえば、特徴のない顔立ちに三流プログラマーの肩書。

これといった趣味もなく、ママチャリで会社と自宅を往復する日々である。

異性が惹かれる要素など皆無の身の上だ。


「どこかに素敵な出会いはないものか」

上司の佐々木課長は子供が産まれてから夫婦関係が急激に冷え込んでしまったと聞く。

同期の佐藤さんは夫が留守の間に男を連れ込んでいることがバレて裁判沙汰であるとぼやいていた。

自分はそうした人々の話を聞いて、恋愛に二の足を踏んでいる。

素敵な出会いを探したいけれど勇気がでない云々。

環八を自転車で疾走する35歳の心の内は、乙女のように複雑である。


他愛もないことを考えていると、ふと赤信号を無視して交差点を横断していることに気が付いた。

左からはトラック。

「あ、やべっ」

思わずブレーキをかけるが交差点の真ん中で停止という愚行。

これは死んでしまうかもしれない。


死を覚悟して目をつぶると、次の瞬間に聞こえたのはトラックのけたたましいクラクションだった。

「死にてぇのかタコ!殺すぞ!」

「た、助かった…」

九死に一生を得るとはこのことだろう。

せっかく助かったのに殺されてはたまらない。

トラックの運転手にペコペコと頭を下げながら急いで交差点を渡る。

と、その時、突然世界が光りに包まれ目の前が真っ白になった。



「やあ、残念だけど君は死んでしまったね!だけど安心してくれよ!すぐに転生してあげるからさ!」

真っ白な世界で唐突なお知らせ。

助かったよう思っていたのだが、都合のいい夢だったのだろうか。


「立派に死んだとも!トラックに引かれて即死!見事なまでに死んだね!」

そこはかとなく説得力のある声。

神様的な感じの人なのだろうか。

それなら信じちゃう。どうせなら救われたいもの。間違っているのは私めであります神様。


「…あれっ?君、死んでなくない?勘違いしちゃった?まあ、いまさら面倒だし転生させちゃおう」

ちょっとまってください。聞き捨てならないです。

元の世界に返してください。まだ恋を諦めてないんです。おっさんでも恋がしたいんです。


「なんかゴメンね。でももう手続きしちゃったからさ!うーん、でもオマケしてあげようかな。君には土魔法の適性を授けます。僕が直々に適性を与えるなんて滅多にないよ!良かったね!これで剣と魔法の異世界で楽しく暮らしてください!以上!」


意識が遠のいていく…言いたいことだけ言って…

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