魔物の森〜出会い、それから〜
眩い光が辺りを包み込む。
凄く眩しくて、なかなか目が開けられない。
誰かの気配がする。私達4人以外の。
それと、羽音?一体、何が起きているの?
やっと慣れた目をうっすらと開き、光の中心に降り立つ人影へ目をやる。
その人影からは立派な翼が生えていた。
純白の翼。
美しく風に靡く黄金のロングヘア。
圧倒的なオーラ。
瞬時に身体が理解する。この方は神だ、と。
「貴女様は…」
喉からやっとの思いで声を絞り出し、そう一言だけその存在に問い掛ける。
女神は、ニコリと微笑んで私の頬へと手を伸ばした。
「私はニケ。勝利の女神、と呼ばれている者です。
神界から見ていたのだけれど、貴女がとても面白い存在で、応援したくなっちゃったの」
「私…ですか…?」
「そうよ。魔族の王の子として産まれながらも、とても真っ白な心をしている。
純粋で穢れを知らない存在…そんな貴女が旅をして人を知ろうだなんて、面白いから手を貸しちゃおうかなってね」
あまりに突然の事に、思考が追い付かない。
困惑している私に、女神は続ける。
「難しく考えないで。只私が貴女を気に入ったから、貴女は仲間を手助け出来る力を手に入れられた。
ちょっとしたラッキーイベント、てとこね」
「ラッキー…イベント…。
みんなを…助けられる力…」
「…ソフィア。貴女を此処に、私の神子とします。
私が貴女に与えられる祈りの力は勝利へ導く事。よく覚えていて」
「はい…ありがとうございます…!」
女神は満足そうに微笑むと、神界へ戻ると消えていった。
あっという間の出来事だった。
夢みたいな出来事を体験し、ぼーっとする。
嘘みたい。私が神子だなんて。
そんなこんなで夢現から抜け出せずにいると、背中をバン、と叩かれた。
「痛い…!ちょっと何するの…っ」
「お前がいつまでもぼーっとしてっからだろアホ。
日没まで時間がねーんだ、早く森抜けんぞ」
あんな事があった後だと言うのに、ラルクはもういつもの調子に戻っていた。
さっさと歩き出すラルクの後ろを、ユリアさんとヨアンさんも着いて行く。
余韻に浸っていたのはどうやら私だけらしい。
当事者じゃないからってみんなどうしてそんなに切り替えが早いのか…。
置いて行かれないよう、慌ててみんなの背中を追う。
「あ。そういえば」
小走りをしていた私の真っ直ぐ少し先を歩いていたラルクが急に立ち止まる。
すぐに止まれずラルクの背中に思い切りぶつかってしまった。
「ぶっ…な、何…」
「さっきはありがとな。お前が居なきゃ危なかった。
これからも頼りにさせてもらうぜ」
「………!」
振り返ったラルクは良い笑顔でそう言った。
私も役に立てたんだ。これからも頼りにしてもらえるんだ。
もう、お荷物なんかじゃないんだ。
そんな感情が次から次へと湧き上がる。
嬉しくて、只嬉しくて。
私もとびきりの笑顔を返す。
「こちらこそよろしくね。これからは守られるだけの存在じゃないけど、でも」
「でも?」
「貴方が危ない時は私が守る…だから、これからも、私の事を守ってね」
私の言葉にラルクは、少し目を丸くして黙り込む。
やがてすぐにいつものように自信に満ち溢れた笑みを浮かべた。
「…はっ。上等じゃねぇか。
この旅が終わるまで、お姫様の専属騎士としてやらせてもらおうじゃねぇか」
「ふふ…うん、頼りにしてます」
その後私達は森を抜ける為歩き続け、日が丁度落ち切る頃に森を抜けた。
森を抜けるとすぐに、少し先に街の灯りが見えた。
「あそこが目的地ーーマーコットだ。あと少し歩くだけだ、お前らへばんなよ」
ラルクの後に、私、ユリアさん、ヨアンさんが続いて行く。
森での戦闘中に乱れたフードを深く被り直し、角を隠す。
これから行く場所は初めての人間達の暮らす街。
私が魔族であると、ましてや魔王だなんて、絶対にバレてはいけない。
もしバレてしまったら、魔族を仲間として連れているラルク達も罪に問われる。
ラルクとラルクのお母様の夢も、きっと叶わない。
気を引き締めて、いざ街の中へと、足を踏み出した。




