05 滅亡への道【ガルフェン視点】
フロンディア王国、王城。
そこにはガルフェンと複数の貴族が集まり、にやにやと笑いながら会話を交わしていた。
「勇者を異世界に追放するという陛下のご判断、とても素晴らしいものでございました。勇者がいなくなったおかげで、私たちの地位は侵されず、本来であれば勇者の凱旋パレードなどに使用される予定だった金も、私たちの懐に入れることができました」
「ふむ、めったなことを言うものではないぞ。勇者は邪神討伐とともに、その命が尽きた――と世間には伝えているのだからな」
「ええ、そうでしたね、大変申し訳ありません」
意地の悪い笑みを浮かべるガルフェンと、それ以外の貴族たち。
だが、彼らには大きな見落としが存在していた。
それが、邪神と魔獣の発生原因について。
魔獣は悪意の込められた魔力が集まることによって生まれ、魔獣同士が融合することによってさらなる力を得る。
その末に、邪神と呼ばれる圧倒的な存在が生まれるのである。
そのため、邪神を生み出さないためには、どれだけ弱い魔獣であったとしても早めに消滅させておく必要がある。
しかし、ガルフェンたちの頭の中にその発想はなかった。
その理由が、勇者の持つ力である。
勇者には大気から吸収した神聖力を、何十何百倍ものエネルギーに増幅させ、大地に返還するという特殊能力がある。
その能力によって世界中には強力な神聖力が満ち、勇者のいる時代には一定以下の魔力を持った魔獣が発生することはなかった。
そのためガルフェンたちは低級の魔獣の存在すら知らず、極稀に現れる強力な魔獣だけを、騎士団を派遣することによって討伐すればいいと考えていた。
それだけならば勇者がいなくても可能だと思っていたのである。
ガルフェンたちは知らない。
勇者がいなくなったことにより、世界中で既に大量の魔獣が出現しているということを。
魔獣たちは恐るべき速度で融合を繰り返し、成長し続けていることを。
そして邪神に対抗するための唯一の手段である聖剣が、宝物庫から消えてしまっていることを。
彼らの愚かな選択によって、世界は滅亡への道を歩み始めた。
その前兆として、地方に派遣した騎士団が魔獣によって全滅したという知らせが届くのは、それから3日後のことだった。
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今回の話でプロローグはおしまいになります。
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