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28 恥知らず【ガルフェン視点】

 フロンディア王国、王城。

 そこでは国王ガルフェンが、絶望的な状況に追いやられていた。


 どんどん数と強力さを増していく魔獣。

 勇者は現れず、聖剣すら存在しない。


 しかもダメ押しに、事情を知っている周辺諸国の者たちが、ガルフェンの指示によって勇者を異世界に追放したことをバラしたのだ。

 これによって暴動が発生した。



「陛下! 民たちが暴動を起こしております! これでは魔獣の対処どころではありません!」

「勇者を異世界に追いやったことに対して、不満がたまっているようです」

「決断を、我らが王よ! いかがなさいますか!?」



「~~~~~~~~~~!!!」


 ガルフェンは顔を真っ赤にし、歯を噛み締める。

 なぜ自分がこんな目に遭わなければならないのか。

 その顔にはそう書かれていた。


 魔獣は強力になるにつれて、より大きな獲物を求めてこの王都にやってきた。

 神聖力の使い手を王都に集めていたことが仇になったのだ。

 これによって各地の村や町の被害は軽減されたとの報告が上がっていたが、むしろそれらの場所を犠牲にしてでも生き残ろうとしていたガルフェンにとっては、悲報でしかなかった。


 特に気に食わないのは、周辺諸国の者たちだ。

 自分たちも勇者追放に加担しておきながら、被害者面をするという厚顔無恥さに怒りが沸き上がる。

 こうなったからには、もう仕方ない!



「仕方あるまい! 異世界から勇者を逆召喚せよ!」

「し、しかし追放時に大量の魔力を消費しているため、発動は困難です」

「それならば民どもから魔力をむしり取ればいいではないか!」

「だとしてもです! 今集められる魔力では、異世界に対する一方的な通話程度しか叶いません!」

「だったらもう打つ手はないということか!?」



 声を荒げるガルフェン。

 そこで一人の大臣が手を挙げる。


「陛下、勇者は確か学習強化(ラーニング)というスキルをもっています。もしやすれば、既に世界間転移魔法を発動できるようになっているかもしれません」

「それはまことか!?」

「可能性は0ではないかと。仮にそうであるならば、こちらからは通話用の魔力のみを使用し、転移用の魔力は向こうの世界で補ってもらえばいいかと」

「よし、それだ!」


 ガルフェンはほくそ笑む。

 勇者を逆召喚できれば、魔獣の危機がなくなり、その後は勇者の力を使って周辺諸国を支配できる。

 こうなった以上、外聞や体裁を気にするつもりはない。

 勇者を支配下に置く自分こそが、この世界を支配するのだ!


 するとそこで、一人の兵士が玉座の間に入ってくる。


「へ、陛下、報告です! 魔獣が集い、とうとう邪神に成長を果たしました!」

「なんだと!? 時間がない、今すぐ勇者に連絡を取れ!」

「はっ!」


 指示を出し終えたガルフェンは笑う。

 これで全ては、自分の想い通りに事が運ぶはずだと。

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