天使の杖 vs 冒険者ギルドの水晶
「さて、杖も買ったし、狩りに行っちゃう? あっ、その前に、冒険者ギルドへ登録しに行かないとね!」
あっ…。やばいかも?? 元の俺とニーナが、同一人物と認識されたら!? でも、アクセルは俺の手をガッチリと握って離さない。まずい…。不味いぞ。どうする?
「あれ? ニーナちゃん、もしかして?」
えっ!? いきなり男だとバレた???
「緊張しちゃってる? お手手に汗かいちゃってるね!」
「あっ、ご、ごめんなさい…。汚いですね。今、ハンケチで…」
「ううん? 大丈夫だよ、ほらっ!」とベロリンと自分の手を舐める。
うわっ!! そして、再度、俺の手を…握った…。こ、こいつ…。
「あの…。でも、まだ冒険者ギルドも閉まっているのでは?」
そうだ! まだ朝の6時30分だ! ナイス俺。
「うん? へいき、へーき! ほら、合鍵も持ってるし!」
うへっ!? どういうこと?
三階建ての冒険者ギルドの裏口から勝手に入り、二階の初心者登録窓口に連れて来られた。勿論、誰もいない? いや、いた…。こいつも…俺を馬鹿にしていた町民の一人で、受付嬢だ。
「おーい、リコちゃん! 起きっして?」と気持ち悪い言葉で、ソファーに一升瓶を持ちながら寝ている受付嬢を起こす。
「なんだぁ? だれだぁ? あっ…、ア、アクシルじゃん! どったの?」
「酔ってるリコちゃんは、いつみてもセクシーだね! えっとね、この子の登録お願いしたくて」
「猫? お前、猫と冒険するのか? 頭悪ぃーっと思ってたけど、本当に馬鹿だな…ヒックッ! まぁ、いいさ、おい、猫。そこの水晶にお手手乗せな!」
俺だって、二回目だ。それぐらい知っている。天使の杖 vs 冒険者ギルドの水晶だ! いざ尋常に勝負!!!
水晶に手を乗せると、ステータスが水晶に映る。
・名前:ニーナ ・職業:ヒーラー ・Lv1 などなど…。
「キャワワなニーナちゃんの職業は、猫だと思ってたのに! もぅ!」とアクセルがクネクネと近づき顔を俺の顔にピタリとくっつけ水晶を覗く。頼む…アクセル…死んでくれ…。
「じゃ、リコちゃん! またねぇ〜」とアクセルが手を振るが、リコは腹を出して床に寝ていた。
冒険者ギルドを出ると、町の通りにも人がチラホラと見かけられるようになり、その人たちは、猫のキグルミを着ている俺を奇異な感じで見ていた。
またも、俺のお腹がギュルルルッ!と鳴る。
「もう、ニーナちゃんは、いちいちキャワワだね。一度戻って、朝食にしようか?」