血盟の屋敷においでよ
いつもの俺ならば、嫌がらせのように…と言うか、嫌がらせなんだろうけど。町への入出管理を担当する衛兵にネチネチと意味のない持ち物検査などをされるのだが、「お疲れ〜」とアクセルは、片手を上げ入出チェックをパスする。
ぐぬぬ…。
「あの…アクセル様は、町の衛兵様にも信頼されているのですね」とヨイショしてみる。
「いやぁ〜。わかっちゃった!? ほ、本当は駄目なんだけどね! それより、ニーナちゃん! アクセル様は、やめてよ! 様って、何か、他人行儀じゃない? 俺達の仲じゃないか。さんで、良いよ!」
そんな下らない会話で盛り上がっていると、ギルド・ファイブスターが所有する血盟の屋敷が見えてきた。相変わらず、センスを疑うような意味のない豪華な装飾と派手な色の屋敷だ。大きさもNo.2ギルドのくせに、No.1ギルドよりも大きいのだ。そして血盟の屋敷に入る。
「「「「「お疲れ様です。おかえりなさいませ、アクセルさん」」」」」
どうやって、アクセルが町に帰ってきたのを知ったのか? それとも、いつも待っているのか? グルドのメンバーが、ずらりと並びアクセルの帰りを出迎えていた。
「おうっ! 今日、急ぎの用事がある奴はいるか?」アクセルがギルド内を見回す。そして誰も用事がないことを確認すると「先程、森の狩場で、大ピンチだったところを助け、保護するために、うちのギルドに連れて来たニーナちゃんだ。うちの血盟で面倒見るから、お前ら全員でサポートしてやってくれよな!」
「「「「「勿論です!! おまかせ下さい。アクセルさん」」」」」
「あ、あの…わ、私みたいな…、下っ端が…こんな大きなギルドに…ば、場違い過ぎて…」と目をうるうるさせる。
「ニーナちゃん、大きいから良いんだよ。しっかりとサポートしてもらいながら、ゆっくりと経験を積めるのは、このファイブスターだけだよな! みんな?」
「「「「「おっしゃる通りです。自分の家のように寛いで下さい。ニーナちゃん!」」」」」
「はっ!? ニーナちゃん? ニーナさんだろうがっ!? 殺されたいのか?」
「「「「「失礼しました。ニーナさん。これからもよろしくお願いします!」」」」」
「よ、よろしく…おねがいします」とペコリとお辞儀をすると、お腹が”ぎゅ〜っ”と鳴ってしまう。
「はっ、恥ずかしい…」と顔を赤らめる。
「「「「「ニーナさん。お食事のご用意をいたします。しばらくお待ち下さい」」」」」とギルドの下っ端たちが慌ただしく、厨房へ駆け出す。
「ニーナちゃん。みんな良い奴らばかりだからね。緊張しなくてもOKさ。俺は、ちょいとギルマスに、ニーナちゃんのこととか報告に行かねばならないので、先に美味い夕食でも食べててね」ウィンクすると踵を返し、奥の廊下に消え去った。
「ニーナさん、食堂はこちらです」と血盟専属のメイドに案内される。食堂も驚くほど無駄にお金をかけていた。完全に成金な悪趣味だ。ピカピカ光るテーブルに座っても、落ち着かない。
なんと驚くことにコース料理が振る舞われた。ち、畜生っ!! 俺、ずっと水ばかり飲んでいたのに…。う、美味いっす! まじ美味いっす!! と涙を流して食べていたら、周囲のメイドも冒険者たちも、そんなに苦労していたのかと、同情して泣き出す始末であった。
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言ってみるものですね!