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姜伯約の北伐政策  作者: はくりなのい
第三章 曹子桓の知謀
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幻影の焔~狡猾なる罠~

■■■■


 建業、山道――。曹丕は一人山道を登っていた。護衛も何もつけずに。あるのは二対一本の剣と、元姫に持たされた姜維の槍だ。これだけで身を守り、姜維を助けなければならない。まあ、不可能ではないが。しかし槍が重い。捨て去りたいくらいだ。

 元姫が何故、姜維の居場所を突き止める事が出来たのか。彼女曰く「姜維殿には私の力が入っているのです」と言っていた。成都で別の核と戦っていた時に、力を彼の中へ入れたそうだ。詳しくはわからないが、そのお陰で探知が機能するのは便利な事である。そしてそんな姜維が入れられているのは牢獄。土の中に穴を掘り、その中に人を入れるというものだ。

「だが、まあ……敷地内に牢獄を作るというのも悪趣味なものだ」

 しかし便利ではある。身内を処罰するときには。今度魏でも試してみるかと曹丕は考えながら山道を抜けて目的地へ辿り着く。手に入れる事すら困難な紙に記されたバツ印の場所。それがこの場所だ。そして当たりだったようで、少し話し声が聞こえる。

 だがどうやって侵入するか、だ。上からは不可能。牢獄は三メートル以上である。では別の入口――はあるだろうが、塞がれているだろう。となればやはり下だ。地中を掘り進み、侵入する。それしか方法はない。

 曹丕は掘り進める位置を決めると、姜維の槍を突き立てた。瞬間、槍は姿を変え反り立った剣のように変貌する。まるで蛇のようにうねり、曹丕を包み込むように巻いた。

「な……」

 曹丕は一人驚きを見せるが、すぐに理解した。元姫の力がこもっているのだと。ならば容易い。そのまま地を斬り裂き、亀裂を生み出せば、亀裂の間を入り込みそのまま下へ進んでいく。壁に辿り着けば再び槍を振るい、壁を壊した。槍は姿を戻し、曹丕はそのまま進んでいく。瓦礫を押し退け、顔を出せば姜維と、そして陸遜が居た。

 何故陸遜が居るのかとか、自分が知っている陸遜とは違う気がするとか、色々な疑問はあるが今は時間が惜しい。策だって完璧ではないのだ。

「な……、曹丕、何故此処に」

「見ればわかるだろう」

「ああ、穴掘りの刑でも受けているのか。随分と身分相応になったな」

「貴様……まあよい」

 今は言い合いをしている場合ではない。曹丕は胸まで身体を出せば一息吐いては槍を姜維に渡す。そして今の状況を彼らに伝えた。

「なるほど、劉備様が……」

「一先ず抜け出して、我らも蔡琰達と合流するぞ」

 皇族の私にこんな汚れ仕事をやらせるとは、後できっちり支払ってもらうぞ。曹丕はそう二人に伝えれば、来た道を戻ろうとした。

「曹丕、核は練師殿かもしれない」

「何だと?」

 曹丕は止まり、姜維から全てを聞く。今まで会った陸遜が贋物で、練師は自ら胸を貫き姜維を嵌めた。そういえば趙雲が姜維に貸した槍には血一滴ついていなかった。だから趙雲はずっと部屋で槍を見つめていたのかと曹丕は納得する。

「陸遜が目の前で消えたとな。と、なると呉の人間はもう誰も信用出来ぬな。誰が本物かわからん。……こっちの陸遜は信じてもいいようだが」

 元姫が居ればそれも何とかなるだろうが、この状況ではわからない。とにかく今は合流するしかないか――と抜け出そうとした時だった。

「やっぱり此処にいたのね」

「れっ、練師殿――!?」

 いや、あれは核だ。陸遜の驚いたような叫びに姜維は否定した。

 練師は地上に立ち、窓から曹丕達を見下ろしている。そして恐らく、彼女が取る方法は一つ。

「上手く策を展開したようだけど、無駄よ。核同士は惹かれ合うものだから」

「何だと?」

「さあ、このまま消えて頂戴」

 練師は腕を振り上げる。と、同時に曹丕は姜維に首根っこを掴まれ、地中から引っ張り出されると脇に抱えられる。槍を持たされ、彼の槍を握り締めた。陸遜も同様に抱えられていた。そして姜維はそのまま地面を蹴り飛び上がると、身体で窓に激突し突き破れば曹丕達ごと練師へ体当たりする。窓の木片が、練師の右肩に突き刺さり、彼女はそのまま体勢を崩すように尻餅をついた。姜維に陸遜と共に下ろされ、曹丕は彼の後ろに立つ。

 姜維は曹丕から槍を奪うように取れば、自らの右腕に刺さった木片を引き抜き、放り捨てる。

「戦う、つもりなんてないわよ。私はあなたという未来を改変する存在を消したいだけ」

「私にそんな力あるとでも?」

「ええ、あるわ」

 練師は人差し指を姜維へ向ける。曹丕はそれをじっと見つめていた。

「姜維、あなたはジエジンを破った。その仮定で我らが主、元姫から力を授かり、そしてその力で再び己の身体を脈動させた。――あなたには未来を変える力がある。自分の死すら変える、力が! それを我らは欲している」


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