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姜伯約の北伐政策  作者: はくりなのい
第二章 蔡文姫の知略
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幻影の焔~荒れ狂う縁~

「でも頭には留めておくわ」

「やはり、姜維。成都の騒ぎは貴様だったか」

 曹丕はゆっくりと目を開き、蔡琰に支えられながら身体を起こす。成都の騒ぎ、つまりこの間のジエジンとの戦闘の事を言っている。

「曹丕、貴様も核を知っているのか」

「司馬家に元姫を追わせているのは父様だからな。仲達が元姫を捕らえるために動いている。核の力を欲すために」

 そういえばそんな事を言っていたな。だが曹丕は元姫を捕らえようとはしない。何故なのかはわからないが、それなりの理由はあるのだろう。そもそも演技という事も有り得そうだが。姜維は曹丕の見透かしたような漆黒の瞳から視線を逸らした。

「……まあ、それは今関係ない。いずれ話そう。それより、面白い事がわかったぞ」

「面白い事?」

「ああ、私も身体を張った意味があったというものだ」

 曹丕は趙雲に視線を送り、彼に話すよう促す。曹丕が傷ついているところを最初に発見したのは趙雲だと曹丕は言う。姜維の槍を置きに戻っていた帰り、城の裏で、血塗れになって倒れていたと。

「曹丕殿は宴に目が向けられている間、孫権の周りを調査していた。そもそも、孫権が死んで喜ぶ連中が居るのかどうか、とかもだ」

 皇帝という立場、命は狙われる事もある。劉備や劉禅も狙われたりするため、護衛が居るのだ。だが今回の、孫権は異常だ。何度も何度も狙われている。どんな防衛をしても、である。

「孫権が死んで喜ぶ連中は誰かと曹丕殿は考えたそうだ。今、行っている廃立争いと暗殺は無関係ではない。それは確証済みだ」

 孫権が死んで喜ぶのは――孫和派か孫覇派か。曹丕は宴の裏で様々な女官、侍女、官吏から話を聞き情報を集めていたらしい。呉の人々も魏の初代皇帝である曹丕には逆らえなかったのだろう。そして曹丕はその情報を整理した。

 孫覇派だとしたら、殺す理由は何処にあるのか。孫覇は孫権から寵愛を受けている。魯班が孫和を蹴落とすための諫言があったとはいえ、それを足しても、お釣りが来るくらいの寵愛を受けている。だから、兄である孫和と同じような扱いを受けているのだ。

対して孫和派。孫和は太子として立てられるも、孫覇派からの妨害もあり孫権からの寵愛は衰えている。廃太子を恐れる孫和派なら、孫権を殺せば――と思うのも無理はないかもしれない――と趙雲は曹丕の考えを述べた。

「孫和って確か伯言殿が……」

「これは推測でしかないが、陸遜は……我らに何かを隠している。私が調べたのは趙雲が言った事で全てだ」

 推測だから確証ではない。だが少し調べれば出てくるような事を陸遜は隠していた。陸遜も一枚噛んでいるのではないかと曹丕は告げた。

「今、孫権殿を殺せば、孫覇はまだ太子ではないから帝位に就くのは孫和となる。喜ぶのは孫和派――それ以外となると、この争いを憎んでいる者……いや、この争いを混沌とさせようとしている者、か」


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