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姜伯約の北伐政策  作者: はくりなのい
第二章 蔡文姫の知略
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幻影の焔~堕ちた皇帝~

こういう時どういう返答をすればいいのかわからない。頭を抱えれば隣で趙雲が笑っていたのでからかわれたのだとすぐに理解する。

「まあ、とにかく、元姫殿のような女性はお断りですね。慎ましくて、賢女で、頭も良くて、優しくて、あと少し欠点があるような女性がいいです」

「それ、元姫殿にも当てはまっているな。欠点はわからぬが」

 違う、断じて違う。元姫を好いている訳ではない。彼女の力は信頼しているが、信用はしていない。そもそも彼女が姜維を嵌めなければ姜維は核と関わる事などなかったのだ。悪魔のような女、それが元姫である。というか、彼女は既に婚約して正室もいる。こんな話は無意味だ。

「――そう、その時まで姜維はそう思っていた。しかし、姜維は己の心にある感情に気付く。激しい動悸、元姫殿を見ると高鳴る胸、染まる頬、熱を持ち始める身体――これは風邪か。睦言に疎い彼はわからなかった。だが彼は知らない、自分が後々元姫殿に恋という感情を抱く事を――」

「蔡琰殿、私で遊ばないでください。殴りますよ」

 姜維は突然後ろから現れ、変なナレーションをつけた蔡琰の頭を拳で殴りつけた。問答無用である。彼女は頭を摩り、少し涙目になりながら姜維を見上げる。

「で、何故此処に?」

「元姫殿に託して来ました。陛下には鍾会もついておりますし」

 そう言って蔡琰は曹叡を見る。彼の後ろには生意気そうな顔を持つ男、鍾会。北伐で彼の軍と戦った事があったがあれが鍾会かと脳に彼の顔を入れる。

「ああ、そういえば、姜維。少しお時間いいですか?」

 今か。これでも陛下をお守りしているのだが――と思ったが、趙雲に許可を貰い、彼に己の槍を預け、仕方なく蔡琰と共に部屋を出ては、城の外を歩く。こうやって昔はよく散歩したなと思い出したが、蔡琰が話しに来た事はそういう事ではない。

「姜維、孫権殿はこの政争を終わらせるつもりがありません。ただ、呉の国力低下に危機は感じているようです。止めたいとは思っているようですが、孫権殿自身が狙われているのでそっちに手が回らないようです。皇帝としての力が彼にあるとは……最早思えません」

 蔡琰は軽く俯いて憂い顔を見せた。彼女の憂い顔は絵になる。表情を変えるだけで食べていけそうな、そんな儚さがある。

「それなら孫権は殺された方がいいのではないのですか」

「こら、滅多な事を言うもんじゃありませんよ。……確かにそうかもしれませんが、私達は伯言殿に頼まれています。姜維も、彼に叶えて頂きたい願いがあるのでは?」

 ああ、そうだった。此処まで低下した呉の力が頼りになるとは思えないが、少しでも力はあった方が良い。姜維は深く溜め息を吐く。

「あと、孫尚香殿――昭烈帝の奥方様だった方ですが、劉禅殿の周りの兵を籠絡し始めているので気をつけた方がいいですよ。賄賂を渡しているところを、夕方目撃しました」

「尚香殿が? 何故?」

 劉備と孫尚香。随分前に離縁したらしい。彼女が呉へ戻る際に劉禅を連れて帰ろうとし、趙雲と張飛が取り返したらしいが。話にしか聞いていないため深くは知らない。

「考えられる可能性としては劉備殿への当てつけ、でしょうね」

「何故?」

「そうですね。私の主観でしかないのですが、劉備殿と尚香殿、かなり仲が悪かったんですよ。何せ劉備殿や諸葛亮殿から危険人物扱いされるほどですから」

 その理由はわかりませんが、と注釈をつけて蔡琰は話を続ける。


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