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姜伯約の北伐政策  作者: はくりなのい
第一章 劉玄徳の防衛戦線
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結晶の囚人~氷結の禍~

「捕まえるとなると作戦を立てねばならんな。姜維、元姫殿、私も協力しよう。人手は多い方がいいだろう?」

「そんな、劉備様を危険な目に遭わせる訳には……! 私が趙雲殿に叱られます」

「安心するがよい。私はこれでも若い頃は地元で悪漢達をシメ……纏めていたやんちゃな子供だったのだぞ。現役のおぬしに負ける気はせん。鍛錬も怠ってはいないぞ?」

 趙雲の事は放っておけばよい。私に仕えていた連中は皆過保護なのだ、と劉備は少し呆れ気味に笑みを漂わせた。

「姜維殿、劉備殿に手伝って頂きましょう。核との戦いは未知よ。こうやって悩んでいる暇はないわ」

 それだけで哀姫の命の灯火は刻一刻と時を刻み続ける。時は一刻を争う。元姫の意見に了承し姜維は劉備の協力を受け入れた。

「劉備殿、敵は炎が弱点です。そして核は私以外に姿は見えません。別の入れ物に取り憑いていればまた別ですが――」

「ッ、伏せろっ!!」

 劉備が叫び、感じた殺気。姜維はすぐに劉禅と元姫の頭を掴み地面に伏せさせた。哀姫の身体から噴出した氷の刃が頭上僅か一センチもない距離を通り過ぎる。敵の猛攻を劉備は所持している短刀の匕首でいなし、姜維は二人を守りつつ刃を回避した。壁や地面、天井は氷の刃によって蜂の巣となり、哀姫の身体からは氷の触手のようなものが噴出していた。そらは哀姫の身体を持ち上げ、触手で繭を形成し彼女の身体を包み込んでいく。姜維は頬から滴る血液を姜維は拭い去り、立ち上がった。

「姜維殿、劉備殿、急ぎましょう。陛下はこの部屋から退避し誰も入れないように、近づけないようにしてください」

「あ、哀姫は……」

「核に飲み込まれました。現時点で此処から助ける事は不可能です。私達が誘き出し、核から引きずり出します。……ただ、無傷でとはいきません。皇后陛下に傷を負わせてしまう可能性はあります」

「生きていればいい、助けてくれ!」

 御意。元姫はそれだけ告げ部屋を出て行き、姜維と劉備もその後に着いていく。城を出て、入口で元姫は足を止め、各々準備をしなければという事で十分後に集まる事にした。姜維は再び城に戻り、城に滞在する時にあてがわれている部屋に向かっては着替え直し、研ぎ澄まされた槍を持っては城の前へ戻った。すれば既に二人は準備を整え、待っていた。劉備も武官のような服装になっており、腰には二対の剣が携えられている。

「で、誘き出すとはどうするのだ?」

 姜維と劉備は歩き出す元姫に着いていく。この戦いは元姫なしでは勝てない。彼女の知恵は何よりも代えがたい。

「はい、戦同様囮作戦で行こうかと。ただ町中で戦う事になるかと思いますので、被害を最小限に留めたいところです」

「おお、それなら北西の方に開拓途中の空いた土地がある。禅があの辺りにも兵の詰所を作る予定なのだ」

「ではそちらに囮役が誘き出します。それを……劉備殿、お願い出来ますか? 姜維殿は背後から奇襲して欲しいの。私はお二方の後ろから核を力で弱らせる」

 二人は了承し、姜維と元姫は劉備と別れ、劉備は目的の場所へ向かう。兵の詰所に向かい、目的の場所を封鎖するように頼み、姜維達も奇襲のため、迂回するように目的の場所を目指し向かう。

「本当に劉備様の元へ核は行くのか」

「大丈夫、小細工しなくても行くわ。――あの時防戦したのは劉備殿。なら、核は劉備殿を脅威に感じたでしょうね。私達を襲ったのは皇后を奪われると思っての行為。核は大体好戦的だけれど、あまり攻撃を仕掛けてこない。つまり、焦っているの」

「焦り?」

「ええ。そして姜維殿に問題。あなたは戦で敵を排除する目的って何?」

 唐突な質問に姜維は間を空けず答えた。

「それは攻め込まれるからだ。放っておけば我が国は―――」

 そこまで言って気付いた。はっとした。そうか、攻撃をしてきたのは。

「……己が滅ぶと知っているのか」

 元姫は静かに頷いた。

「核は外へ出れば自我を持つ。回収されれば自我も消え、消滅しただの力となる。けれど、私は彼らが自我を持つ事は許さない。自我を持つだけで、世界に悪さをするから」

「無駄な足掻きだな。問題ない、私が核を必ず討ち果たす」

 核を存続させる選択肢はない。もし、物語なら核を生かすという方法を取っただろう。だがこれは国の存亡がかかっている戦いだ。それに、姜維も元姫も、そこまで優しくはない。核を生かすなどと思うのは菩薩か聖人くらいだろう。

「――来た。核が劉備殿のところへ」

「よし、私達も策を準備するぞ」

 姜維は元姫と共に成都を防衛している西にある兵の詰所へ向かい、将兵に伝える。仲が悪いためか最初は信じてくれなかったものの劉備の名を使い、元姫が伝えればすんなりと信じ兵を動かす事に了承してくれた。実行する策は火計。火で目的の場所ごと燃やす。そしてそこで討ち取るという訳だ。それが出来るかは姜維と劉備にかかっているだろう。足を引っ張らないようにしなくてはと考え、姜維は元姫に火計を託し、奇襲するために目的地へと向かっていく。


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