7日目、晴れ(1)
こっちに来てから、丁度一週間。7日目だ。
だからと言って何かが変わる訳でも無く、今日も今日とて日課にされている訓練に勤しんでいた。
「197……198……199…………200!」
「はいそこまで、それでは小休止にしましょう」
はあ、と息を吐き出しその場に勢い良く腰を下ろす。
「何が悲しくて剣道部でもないのに素振り200回をNセットしなくちゃならんのだ……」
このぼやきも日課。矢鱈と重い棒を持ち上げては振り下ろし、持ち上げては振り下ろしをするのも楽ではない。というか、しんどい。
「でも、始めの頃と比べると大分良くなったじゃない?」
事実、その通りだ。
最初は百も満足に振れなかった。だが今はどうだ?それが苦も無く振れる。無論両手持ちに限るが。
ちなみに彼女の場合は少々数が少なく設定されている。男女差別良くない。
「勇者様の成長には目覚ましいモノがありますね。この分なら片手で扱える日もそう遠くは無いでしょう」
これを片手でかぁ……と、右腕の力だけで持ち上げてみる。
まだそれなりの重量は感じるが、確かにこの分なら近いうちに扱えそうだ。
「では、そろそろ休憩は終わりにして再開しましょうか」
「うへぇ」
まあ、身体を動かすだけだから考えなくていい分楽だけど。
「我が手に集え、生命の源たる煌めく炎よ。エクスブレイズ!」
凡そ必要のない詠唱と、凡そ必要でないポージングをしつつ、凡そ尋常ではない炎をその掌から打ち出す姿は、さながら魔女の如く。
剣の鍛錬は終わって、今は魔法の練習中だ。
「どう?今の、かっこ良くなかった?」
「そうだな、その無駄セリフと決めポーズさえ無ければ良かったと思うよ」
「はうっ」
望んでいた答えと違う回答が返ってきたようで、目に見えるように落胆した彼女。ご丁寧にセルフ効果音付き。
満面の笑みで聞かれようが、ダサイものはダサイ。というか、痛々しい。この人実は中学二年生だったのでは?
「ふむ、もう少し詠唱に厳格さを出してみては?そのままでは聊か短すぎるかと」
そしてコイツも何でノリノリなの?
「なるほど!じゃあもっと長くしてみようかなあ」
うーん、と唸りながらどうでもいい事を考えだす。そんな不真面目な事をしながらも、彼女の両の掌からは絶えず炎や氷が生み出されては消えてゆく。
あれから俺も練習を重ねた結果、魔法を発現させる事は問題なく出来るようにはなった。
だが、魔法の発現にはそれなりの集中が必要である。
故に、そこの魔女の様に巫山戯た真似をしながらなんて、今の俺には到底出来そうにないのだ。
これが才能なのか、得意不得意の差なのか、それを知る術は無い。
「詠唱なんて無くても魔法出せるんだからいいだろそんなん……」
呆れたように言う俺だったが、ここでまさかの事実が聞かされる。
「ああ、でも詠唱ならうちの魔導士も唱えている者は何人かいますよ。集中出来るとか何とか」
「マジで!?」
……思わず叫んでしまった。
隣で、ほらやっぱり。と言わんばかりの得意げな顔をしてる奴がいるが、見なかった事にする。
成長を感じ取った、7日目。
大きな、勘違いだ。




